昔の夢からの手紙
温かな部屋の窓から
降りしきる雪を見ていた
幼い頃の、いつかの景色
窓についた雪の粒は
ゆっくりと溶けていく
透明な水滴の粒が
つながっていく
触れたいと思い
窓に手を重ねてみた
すると、
白くてつめたい、きれいな粒が
窓を伝って流れていった
◇
その女の人を見かけたのは
ポプラ並木の木の影だった
女の人は優しい顔をしていて
懐かしい感じがした
じっと見ていると
微笑んでくれたような気がして
どこかがほっと、温かくなった
親戚の人に似ているのかもしれない
そう思って見直してみると
いつのまにか、いなくなっていた
不思議と怖さはなかった
誰だったんだろうと思う
◇
熱っぽい日
ふとんにくるまりながら、ひとり
心細い気持ちを抱えながら
留守番をしていた
時計の音がやけに聞こえていた
冷蔵庫の音に、エアコンの音
遠くの家の誰かの声に
通り過ぎるバイクの音
水の入ったコップに手を伸ばす
ひんやりした硝子の感触が気持ちよくて
てのひらや、ひたいにつけたら
すうっと熱を吸ってくれた
うとうとしてきて、目を閉じた頃
鍵が開く音がして
「ただいま」
身内が帰ってきた時の安堵感
忘れていたけれど
風邪ぎみの日に思い出して
くすっと笑ってみる
午後の二時
ごはんでも作りますか




