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花が繋ぐ
自分だけが、彼女をよく知っていると思っていた。
傲慢だった。
生き物は、他人が持つ視点より深い存在である。
昼下がりの暖かな日の光に優しく照らされ眠る彼女は、もう二度とその瞼を開けることはないという。
すやすやという寝息がぴったりな、やわらかな寝顔。
しかしその鼻口は人工呼吸器に繋がれ、機械的な音が部屋中に響いている。
少しふくよかだった身体も今はもう痩せ細り、どこに繋がっているのか全身から機械に向かって何かの管が伸び、見るに耐えない。
「秋桜」
春になったよ。
君が眠ってから、二度目の春が来た。
窓の外の桜の木は、風にゆられてたくさんの花びらを散らしていた。