幕間 三
闇夜の中を飛び回る、黒色に紫の線が入ったその衣装を纏う、冷たき魔法少女。
この辺りの魔法少女からは『冷黒の狩人』――などと言う二つ名で呼ばれているらしいが、彼女は特に気にも留めていない。何故なら、誰にどう呼ばれようと自分は黒咲稀癒以外の何者でもないのだから。
他の魔法少女と馴れ合うつもりも無ければ、関わる気すらない。ただ、彼女は『一つの目的』の為、戦い続ける……それだけなのだから。馴れ合う必要も、関わる必要もない。自分が強ければ、一人でも何とかなるのだから。
そして、彼女は表情一つ変えずに――魔法少女なら誰でも扱える、ただのエネルギー弾を応用して生み出したビームサーベルのような紫色の剣を――ズシャッ!――とひと振り。
目の前のネガエネミーが真っ二つに裂け、ドガガガガガガッ!! と爆散する。
そこへ現れた『コア』を拾い、彼女は呟いた。
「1000」
彼女は強い。彼女が小さく呟いた言葉通り、1000ものネガエネミーを葬ってきたのだから、当然といえば当然だ。
そんな黒色の魔法少女、黒咲稀癒に向けて、隣に浮かぶ鋼鉄の球体が、無機質な機械じみた声で――
『あなたの望みを叶える為のエネルギーは到底足りません――.
この程度のエネルギーを集め続けた所で、それを叶える事は理論上不可能です――.
無駄な事をいつまで続けるおつもりでしょうか――.』
彼女が渡したコアを飲み込みながら、その球体はそう言い聞かせる。
しかし、その魔法少女はそれを聞いても尚、ニヤリと笑っていた。
「――私の計画に必要なコアはこれで揃ったわ」
そう、一言。
しかし、機械声で無機質なサポポンには――彼女が何を言っているのか、何をしようとしているのか――その全てが理解できない。ついに、彼女の目的さえも。
そして、彼女は――その二つ名の由来通りの、冷たい、黒い声で――
「いつも言っているけれど――貴方は黙って、私のサポートだけしていれば良い。私の言う事だけを聞いていれば良いの」
サポポンは答えない。返さない。しかしそれを気にも止めずに、彼女は続けて。
「さて――とりあえず500――吐き出してくれる?」
『一体――何をお考えで――.
集めたコアで何を企んでいるのですか――.』
突き刺すような視線でサポポンをギロリと見て、彼女は不気味に笑みを浮かべながら言う。
「別に話す道理もないんだけど――ここまで黙って私の言う事を聞いてくれた訳だし、それに免じて教えてあげる」
そして、彼女は一言。
「――育てるのよ、これを」




