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5.

 結局その日は、つばめがいつもの調子に戻ることはなかった。


 それでも、わたしは極力いつも通りに接しよう。それがつばめにとっても一番だろうと思って、わたしは帰り際に声を掛ける。


「つばめちゃん、帰ろう?」


 しかし、朝からずっと元気のない彼女は……。


「ごめん。今日は帰りに寄るところがあるから。……じゃあ」


 そう言い残すと、さっさとわたしを置いて、その重い足取りで教室を出て行ってしまった。


「……絶対なにかあるよね……。でも、あんなつばめちゃん、初めて見た……」


 立ち去ったつばめ、そのドアの先を見て、そう独り言を呟くと……朝からずっとあの調子のつばめに、一体何があったのかが気になり。


 ついに我慢の限界を迎えてしまったわたしは、彼女に見つからないように少し時間を置いてから、彼女を追いかけるように教室を出た。



 ***



『あまり関心しないなぁ……友だちの尾行の為に魔法少女の力を使うなんて』


「確かによくないとは思うけど……だって、あんなに元気がないつばめちゃんを見たのは初めてだし。気になるよ……」


 わたしは変身した魔法少女の力ですばやく動き、空を飛び、屋根の上に降り立ち、バレないように。器用に二つの姿を切り替えながら、普段とは違う道をひたすらまっすぐ歩く風見つばめを追いかけ続けていた。


 一体どこへ向かっているのか、全く見当もつかないが……重い足取りで歩く彼女に合わせて、わたしも魔法少女に変身。隣の屋根へと乗り移っては、変身を解除する。それを繰り返していたわたしに、隣で見ていたサポポンが口を開く。


『もしかしてなんだけど……あの子はネガエネミーの元に向かっているんじゃないかな』


「……どういうこと?」


 まさか――関係があるとは思いもしなかった、彼女の不調とネガエネミー。


 交わるはずのなかった、二つの事柄が――今、目の前で交わろうとしている。……そんな気がした。


『あの子がまっすぐ歩く先にちょうど、ネガエネミーの反応があるんだ。

 もしかすると……元気がなかったのも、ネガエネミーに操られていたせいなのかもしれない。彼女を操るネガエネミーがどんな相手かは、実際にこの目で見てみないことには分からないけどね』


 小学生以来、ずっと仲良しだった彼女が見せる、初めてのあの様子。彼女が向かう先には、無関係の人々によってその悪意、感情を満たそうとする、ネガエネミー。


 サポポンにそう言われてから……この二つが、決して無関係だとは思えなくなってしまった。


「わかったよ、サポポン」


 今までは、ネガエネミーが実際に動き始める前に倒していたわけで、わたしはネガエネミーが実際に被害を生みだすところを目撃したことはなかった。


 しかし、今、ついに目の前で。ネガエネミーが人に取り憑き、何かを企んでいるのかもしれない。……それも、わたしの親友である風見つばめに対して。


 でも、わたしにはこの魔法少女としての力がある。目の前の彼女を助けることができるんだ。


 もし、これが早とちりだったしても、それで良い。手遅れになって、つばめともう前みたいに笑い合うことが出来なくなるよりは、絶対に良い。


「サポポン、ネガエネミーのところに行こう。このまま真っ直ぐでいいんだよね?」


『うん。大体、ここから五キロ先くらいだね。急ごう!』


 わたしは、ネガエネミーに操られているかもしれないつばめを置いて、その元凶かもしれないネガエネミーを倒すべく。……そして同時に、魔法少女としての仕事を果たすべく。立っていた屋根から、真っ直ぐに飛び立った。

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