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第9話 聖女様のご機嫌

「なになに? 久堂も買いモン?」

「あ、ああ。ちょっと食材を切らしてて」



 確かこいつは、初島瑛(はつしまえい)

 ちょっと派手目な女子だけど、十和田聖のことを慕っている取り巻きの一人だ。


 ハーフパンツにダボダボパーカー、頭にはキャップを被っている。

 手に持っているカゴには大量のお菓子が。まるでこれが主食ですと言わんばかりだ。



「ふーん。……ん? 後ろの子誰? 外国の人?」



 初島が俺の後ろに目を向ける。

 セイさんは目を合わせないように、俺を壁にして隠れていた。

 いいぞセイさん。人見知りを演出するんだ。



「あ、ああ。母親の知り合いでな。一緒に買い物に来てたんだよ」

「へぇ」



 うわ、興味なさそう。

 と、セイさんがひょこっと顔だけ覗かせた。



「あ、あー……は、はろー?」

「Hi」

「わ、本当に外国人だ……!」



 おい、今挨拶しかしてないぞ。それなら俺だってできる。

 手を振るセイさんに、初島も手を振った。

 その間に挟まれる俺。何これ、どういう状況?



「……なんか、十和田さんに似てるような……」



 んぇ!? こ、こいつ勘が鋭すぎないか!?

 髪も目の色も違うし、メイクだって十和田聖だってバレないくらいよう念入りにやったのに!



「そ、そんな訳ないだろ?」

「……ま、そうね。十和田さんは金髪じゃないし、目の色も違うから。そして何より、あの人が朝から久堂と一緒にいるなんてありえないわよね」



 言ってくれるじゃねーか。

 まあその通りなんだけどね。専属モデルって契約がなければ、俺と十和田さんには全く接点はないし。



「てか、アンタの家ってこの近くなんだ。私も近くに住んでるのよ」

「そ、そうか。今まで会ったことなかったけどな」

「そうね。ま、何かあったらご近所のよしみとしてよろしくね」



 初島はニカッと笑い、手を振ってレジに向かっていった。



「……はぁ……助かった」



 まさか怪しんで来るとは思わなかったけど、学校で俺と十和田さんが親しくないことが幸いだったな。

 もし俺らが取り巻きみたいに親しい間柄だったら、ちょっと危なかった。



「さあ、セイさん。さっさと会計をすませて、帰ろう」

「…………」

「……あれ、セイさん?」



 さっきから黙ってどうしたの?



「……む……」



 む?



   ◆



「む~~~~~~~!!」



 スタジオに帰ってくると、語彙力をなくしたセイさんが腕をぶんぶん振っていた。

 さっきから何を怒っているのか、頬を膨らませて地団駄まで踏んでいる。


 この様子を動画にとって聖女様ファンに売ったら、かなりの額で買ってくれそうだ。



「どうしたんだよ、さっきから」

「瑛ちゃんです! 瑛ちゃんのあの言葉に、私ぷんぷんです!」



 ぷんぷんとか初めて聞いた。

 でも、初島が何を言ったんだっけ? そんな怒ること言ってたかな?



「言ってました! 私とマナさんが一緒にいるのがありえないって!」

「事実だろ。実際、こうしてお互いの秘密がばれるまで、学校ではほとんど絡んでないだし」

「う……そ、それはそうですけど……」



 今度はしょぼんとしてしまった。

 何をそんなに情緒不安定になることがあるのか。


 食材を冷蔵庫に入れ、調味料を棚にしまう。

 あらかたをしまい終えると、しゅんとしていたセイさんが首を横に振った。



「瑛ちゃんのことを考えてもしかたありませんっ。今はマナさんの健康第一! 朝ご飯を作っちゃいますよ!」

「よろしくお願いしまーす」



 シュシュで髪をまとめ、エプロンを付けたセイさん。

 冷蔵庫からキャベツやベーコン、卵を取り出し、まな板に向かった。

 いやあ……本当、こんなエプロンの似合う女子高生いないって。可愛すぎる。


 そう思うと同時に、俺の手は無意識のうちにシャッターを切っていた。



「ちょ、マナさん!?」

「あ、ごめん。あまりにも綺麗で、つい」

「きれ……! も、もうっ。からかわないでくださいっ」



 別にからかっているつもりはないけど。本心だし。

 でもセイさんも満更でもないみたいで、ご機嫌にキャベツを千切りにしていく。


 髪をふりふり、お尻をふりふり。鼻歌を口ずさむ姿は、絶対学校じゃ見れないだろう。

 こう言っちゃなんだけど、俺だけの特権だよな、これ。


 ご機嫌なセイさんを見て、またシャッターを切った。

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