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第17話 聖女様とお弁当

 時は過ぎ昼休み。

 俺はいつも通り咲也と飯を食うため、机を突き合わせていた。

 が、今日はそれだけじゃない。クラスメイト達が、嫉妬と羨望とちょっとの殺意(スパイス)の視線でこっちを見ている。


 それにセイさんも、そわそわした感じで俺の方を見ていた。

 なんだこれ。居心地が悪すぎる。消えたい。



「なあ、咲也。やっぱり食堂に移動しないか?」

「ダメダメ。聖女様からのお弁当を貰ったんだ。甘んじてこの視線に晒されなさい」



 くそが。楽しんでやがる。

 咲也はいつも通り弁当箱を。俺は俺で、セイさんから受け取った弁当を広げた。

 男の俺用に用意してくれたのか、大きめの二段弁当。

 いざ、ふたを開けると。



「おぉ……! これは凄いねっ」

「あ、ああ。本当、凄いな……」



 俺が今朝言った通り、ハンバーグが詰まっている。それに色合いを考えた卵焼きに、ブロッコリー。ゆで卵も入っている。

 ご飯の上には梅干しとごま塩が乗っている。

 それに栄養バランスも考えてか、別のタッパーにはシャインマスカットまで詰められていた。



「真日の予想、当たってたね」

「そ、そうだな」



 なんかニヤニヤした顔で見てくる。おい、なんだその深読みしてそうな顔は。変なこと考えんなよ。


 それにしても……お礼の弁当にしては豪華だ。

 明らかに過剰な力の入れように、クラスがざわついた。そりゃそうだろう。あの聖女様の手作り弁当ってだけでも凄いのに、それがこんな豪華なものなんだから。



「これが十和田聖……聖女様のお弁当か。男子なら喉から手が出るくらい欲しい代物だ」

「だろうな。でもこれは俺のだ。やらんぞ」

「大丈夫、大丈夫。十和田さんが見てる目の前でお弁当争奪戦なんてしたら、悲しむでしょう? せっかく真日に作ってきたものなのにさ」



 咲也がそういうと、クラスメイトの視線が逸らされた。

 確かに、セイさんが俺に作って来たのに、目の前で別の男が奪ったら悲しむに決まってる。

 セイさんがいる限り、俺に危害が加えられることはないだろう。


 それでも、嫉妬と羨望の視線が強まるのを感じる。なんだかんだ言っても、羨ましいものは羨ましいらしい。

 もうこうなったら、周りは気にせず食べよう。そうしよう。



「食べるか。いただきます」

「うん、いただきます」






「ふぅ……美味かった」



 じっくり時間をかけ、欠片も残さず食べきった。

 マジで最高だった。いつも作ってもらってるけど、弁当になってもその美味さは健在だ。流石セイさん。万能だ。


 弁当箱をしまって手を合わせる。と、咲也がニマニマした顔で見てきた。



「なんだよ」

「ん? いや、こんなにおいしそうに食べる真日、久々に見たと思って」

「いつもはコンビニ弁当かパンだからな。正直、母さんの飯より美味い」

「それは相当だね」



 母さんも料理は上手だ。それで育ててもらったし、感謝している。

 でも個人的な好みの話をしたら、セイさんの料理の方が俺の舌に合っている気がするんだ。

 と、丁度セイさんがこっちにやって来た。



「マ……久堂君。美味しかったですか?」

「ああ、最高だった。ありがとう、十和田さん」

「いえいえ。お口に合ったみたいでよかったです」



 弁当箱をセイさんに渡すと、嬉しそうにそれを胸に抱き寄せた。



「明日はどうします?」

「……え、明日?」

「はい。明日のお弁当です」



 ザワッ。


 クラスがまたざわついた。いやそうだろう。これはざわつくに決まってる。

 あの十和田聖が、特定の男の為に連続で弁当を作って来るんだ。そんなの、騒がない方がどうかしている。



「い、いや、今日だけで充分だから。気持ちだけ受け取っておく」

「何をおっしゃいますやら。これはいつもお世話になっているお礼です。気にしなくていいですから」

「そうは言ってもな」



 これ以上クラスのヘイトを集めるのはよくない気がする。

 クラスメイトより、トップカーストからの目がかなりきつい。セイさんはよかれと思ってやってるんだろうけど。


 でも断り続けたら、「あいつ何様だよ」的なヘイトが溜まる気がする。

 どっちに転んでもヘイトが溜まる。何これ、地獄?

 でも幸いなのが、俺が聖女様のお気に入りだってことをクラスに知らしめられた点だ。

 もしこれが本当に接点がなくてセイさんの気まぐれだった場合、マジでいじめの対象になってただろう。俺の高校生活、お先真っ暗。


 なら、ここで俺の取れる選択は一つ。



「……から揚げ……」

「! はいっ。明日、楽しみにしててくださいね!」



 満面の笑みを浮かべ、セイさんは自分の席に戻っていった。

 やれやれ。心臓に悪いって。

 ため息をつき、さっきからニヤニヤしていた咲也の頭を叩いた。


 ――そのせいで、初島瑛が俺を見ていることに気付かなかった。

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