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第14話 聖女様とおこ

 セイさんと歪な関係になり、はや数週間が過ぎた。

 平日はカメラマンとしての仕事。週末はセイさんとの撮影。忙しくとも楽しい毎日だし、セイさんがアシスタントとして働いてくれるから本当に助かっている。


 毎日のようにスタジオに来て、毎日のように俺の手伝いをし、毎日のように飯を作る。

 セイさんには直接言っていないが、ほぼ通い妻と化していた。


 もちろんそんな関係じゃないし、セイさんも意識はしてないと思うけど。

 それでも、俺にはこの関係がすごく心地よかった。

 セイさんも同じことを感じていると思う。嫌そうじゃないし、いつもニコニコ嬉しそうにしているから。


 が、この数週間、俺の方に構っていたせいで。



「えー。十和田さん、今日もダメなの?」

「え、えっと、その……」



 いつもの取り巻き達から、ちょっと反感を買っていた。

 いや、反感って呼ぶほどのことではないが、人気者のセイさんと遊びたいのに遊べなくて、ちょっと不満が積もっているみたいだ。


 セイさんの腕に抱き着く初島も、むっすーとした顔をしていた。



「十和田さん、最近忙しそうだけど、放課後何してるの? あ、もしかして勉強とか?」

「は、はい。そうなんです。最近勉強に凝っていまして」

「勉強に凝るって何!?」



 でもセイさんならそれもあり得そう。他の取り巻き達も、なんとなく苦笑いを浮かべていた。


 そんな様子を横目で見て、俺はスマホを操作した。

 直後、セイさんがチラッとスマホを見てから、目を見開いてこっちをチラ見してきた。



「十和田さん?」

「あ、すみません。少し時間が出来ましたので、今日は皆さんと遊べそうです」

「本当!? いえーい! カラオケ、カラオケー!」



 初島が嬉しそうにセイさんと腕を組み、カラオケに行く人を募っていた。

 流石セイさん。あっという間に十人ものクラスメイトが集まった。どんだけ人望厚いんだ。


 と、今度は俺のスマホが震えた。



 真日:今日は休みにするから、クラスメイトと遊びに行って来ていいぞ。

 聖:すみません、気を使っていただいて。

 真日:気にするな。



 それだけ送信してスマホをしまうと、「真日ー」と咲也が近付いて来た。



「今日暇?」

「まあ、今の所はな。準備も前倒しで進んでるから」

「なら、今日遊びに行かない?」

「遊びって……今日コスプレ写真集の発売日だからだろ」

「バレたか。付き合ってよ」



 俺もコスプレモデルの写真集は全部網羅してるし、新作の写真集もいずれは買おうと思っていた。

 それに今日発売されるのは、複数人もレイヤーさん達がコラボしていて、ファンの間でもかなり期待値が高い。確か、俺の専属モデルになる前のセイさんも載っているはずだ。

 丁度今日は休みにしたし……。



「ああ、いいぞ」

「よし。じゃあまた放課後にね」

「おう」



 自分の席に戻っていく咲也。

 この辺でコスプレ写真集の売っている本屋は、カラオケ店の隣にある小さな本屋くらいだ。

 そういや、セイさん達もカラオケに行くって言ってたな……まあ小さな本屋だから、奴らが来ることもないだろう。



   ◆



「あー、久堂と夜野だー」

「……よう」

「やあ、初島さん。それに十和田さん達も」



 無事コスプレ写真集を手に入れた俺と咲也。

 会計を済ませようとレジに向かおうとしたところに、セイさん達トップカースト御一行が本屋に入って来た。

 面倒なところに出くわしたなぁ。



「なになに? 2人して何買うのん? え、うわ、何それ写真集?」

「まあな」

「コスプレの写真集だよ」



 セイさんは俺が写真集を持っているのを見て、嬉しそうな顔をした。

 まあ、これにあなたも載ってますからね。


 でも、初島は興味なさそうな目で写真集を見た。



「へー。こういうのも売ってるんだ。久堂はイメージ通りだけど、夜野がこういうの買うって意外だなー。ちょっとオタッキーっぽくね?」



 その言葉に、トップカーストの連中のほとんどが嘲笑した。

 笑ってないのは、セイさんともう1人の男ぐらい。


 こういう反応されるから、あんまり見られたくないんだよな。あとイメージ通りは余計なお世話だ。

 それと、お前らの崇拝する聖女様が載ってる写真集だから、あんまりそういう反応しない方がいいぞ。






「何がそんなにおかしいのですか?」






 笑顔のセイさんが、いつもよりワントーン下がった声を発した。

 その声に、さっきまで嘲笑していた奴らが固まった。

 あー……ほら、怒ってらっしゃる。



「何故皆さんは、そんなに笑っているのですか?」

「え、えーっと……と、十和田さん……? 何を怒って……」

「怒ってはいないですよ。私は聞いているのです。何故他の方の趣味を笑っているのですか?」



 いや怒ってんじゃん。

 セイさんの言葉に、笑っていた奴らはみんな押し黙った。


 そんな奴らを見ていた男も、そっとため息をついた。



「まあまあ、聖さん。そんなに言わないでくれよ」

「剣持君」



 ああ、そうだ。名前が思い出せなかったけど、剣持飛鳥(けんもちあすか)だ。

 確か剣道部のエースで、次期部長だったか。流石、人間性が出来てる。


 剣持は全員にチョップを入れ、最後に初島にも軽くチョップした。



「悪い、2人とも。みんなには俺から言っておくからさ」

「僕は気にしてないよ。この趣味に誇りを持ってるから」

「俺もだ。何を言われようとどうも思わん」



 好きなことで飯を食ってるんだ。誰が何を言ったところで、その事実は揺るがない。



「もういいか? じゃ、俺らは行くから」

「またね、剣持君。十和田さんも」

「ああ、また」

「はい。また学校で」



 トップカーストの連中の横を通り、無事に会計を済ませて店を出る。

 なんとなく遊ぶ気分じゃなくなり、俺らは店の前で解散したのだった。

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[気になる点] 剣持と言う名の噛ませ犬の登場でしょうか……w
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