④ 物語の続き
翌朝、いつもより少し早く目が覚めた少年が居間に向かうと、そこには母親がすでにいた。
今日も朝早くから、母親はキッチンの方でテキパキと少年のお弁当を作っていた。
炊き立てのご飯の匂いが香る、いつもと変わらない光景が、そこにはあった。
「おはよう。母さん。……もしかして、今作ってるの……ポテトサラダ?」
「おはよう、こう。そうよ、今日はこうの大好きなポテトサラダの日よ」
「やったぁ! でも、お弁当じゃあ、お昼までお預けかあ……。そうだ! 今食べていい?」
「まったくもう、こうは気が早いんだから……。しょうがないわねぇ、ちょっとだけよ?」
「わーい! ありがとう、母さん!!……あ、そうだ。そういえば、昨日の話の続きしてもいい?」
「もちろんよ。わたしも一晩中、あの導入からどう落ち着くのかわたしなりに考えてみたんだから。……さあ、聞かせて?」
じっと見つめる母親に、少年は温めていた話を語った。
少年が過剰なリアクションをするたびに、母親は少年をより一層愛おしそうな目で見る。
喜怒哀楽を表現する少年につられて思わず顔を少しばかり弛ませる母親は、少年の皿に乗るポテトサラダが無くなる度におかわりを入れた。
しばらく経ってようやく全てを言い終えた少年は、話を聞いてくれてありがとうごちそうさまいってきますと言い残し、学校へと向かった。
遠ざかっていく小さな背中を追いかける母親に、母親のずっと先を行く少年は振り返って大きく手を振り、それを見て母親も手を振り返した。
二人の間で進む時計からはかつてのぎこちなさが消え、堅実に時を刻む音を響かせていた。
『あの時』以来ずっと変わらない平穏な毎日が、今日も変わらずに続いていた。