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Episode.8 初授業は模擬戦!


 午前中、生徒六人は真面目にオンライン授業で基本科目を勉強した。その後、昼食を取って、午後の授業に入る────


 「先生、授業って……何で体育館なんですか?」


 「うむ、良い質問だ瑞希君!」


 「は、はあ……」


 俺は若干テンション高めで瑞希の質問を拾うが、思ったより疲れるので、いつもの調子に戻す。


 「えー、これからお前ら全員対俺で模擬戦をしまーす」


 「え、えぇッ!?」


 瑞希は良い反応をしてくれる。


 学園都市オウカに存在する学校のほとんどは、異能者育成機関としての役割を持つ。そのため、授業の一貫で特殊能力を使用する場合が多くあるため、体育館などといったような施設は、特殊能力に耐えられる設計になっていることが多い。


 見た感じ、この一星高校の体育館もそうだ。


 「はぁッ!? 何でそんなことしなくちゃいけないのよ!?」


 恵は、俺の言うことすること全てに突っ掛かってくる。


 「お前らが勝ったら、俺に何でも一つ言うことを聞かせられる……と言ったら?」


 俺はニヤリと笑って提案する。


 「へぇ、つまりこの学校から出ていけって言うのもアリなんでしょうね?」


 「もちろんだ。その代わり、俺が勝ったらお前らには一つ言うことを聞いてもらう」


 その言葉に、六人は一瞬気圧される。


 『うわー、ミナト君……こんな幼気(いたいけ)な少女達に、あんなことやこんなことを要求するんだ……』


 瑠衣が引き気味で、犯罪者を見るかのような目を向けてくる。


 俺は思わず「馬鹿ッ!」と叫びそうになるが、ギリギリでこらえる。


 「んなこと要求するわけないだろ! 黙ってろ変態!」


 潜めた声で瑠衣に怒る。瑠衣は「冗談」と言ってクスクス笑っていた。


 「い、良いわよ? で、勝ち負けはどうやって決めるわけ?」


 恵はもう勝った気でいるのか、「早くやりましょ」と言わんばかりの顔で聞いてくる。


 「そうだな、俺に防がれることなく攻撃を当てられたらお前らの勝ち。んで──」


 俺は、後ろ腰のベルトに挿して隠してあったオモチャのナイフを取り出して見せる。


 「コイツで攻撃を当てたら俺の勝ち。どうだ?」


 「は、はあ? 近接武器……って、舐めてんの!?」


 「ん、不服か? ならこっちのつま楊枝でも良いが、当たったら掠り傷が付くぞ? お前らまだ完全に怪我治ってないだろ?」


 「ば、馬鹿にしてっ……良いわ、ボッコボコにしてあげる!」


 そう言って恵はプイッと俺から視線を外すと、少し距離を取るため歩いていった。他の五人もそれに続く。


 「あ、自分の特殊能力を俺に教えてくれる必要はないからなー?」


 俺は六人の背中に向けてそう告げるのだった────



 ────生徒六人作戦会議。


 「アイツ、子供だからって私達のこと舐めてる!」


 恵が他の五人に愚痴を溢す。


 「先生と私達、実はそんなに歳変わらないんですよ?」


 「え、じゃあ何で教師? 教職免許──」


 「持ってないそうです」


 「どゆことッ!?」


 瑞希の口から告げられた衝撃の事実に、恵だけでなく、他の皆も驚く。それを見て、瑞希は苦笑いを浮かべる。


 「えっと、本題に入りますが……取り敢えず、本気で戦った方が良いです……」


 気持ちを切り換えた瑞希が、離れたところで暇そうに立っているミナトに真剣な眼差しを向けながら言う。


 「はぁ、瑞希警戒しすぎよ。ほとんど歳変わらないんでしょ? もう勝てる未来しか見えないわ……」


 恵はため息混じりに言う。


 瑞希はそんな恵を見て、どうしてわかってくれないんだという感じで困った顔をする。


 「まあ、歳がどうのこうのは置いといて。どんな戦いでも油断は禁物」


 渚が静かに言う。その言葉に、菫が首を縦に振って答える。


 「そうですよ! 六対一で、手加減してあげたい気持ちはわかりますが……曲がりなりにも教師ですから、油断は出来ませんね」


 「いやー、私は後輩がこんなに立派に育ってくれて嬉しいよー」


 いつも通りの呑気な調子の遥奈が、えへへと笑いながら言う。


 「遂に我の新なる力を解放せし時……先生には悪いが、我が深紅の炎に焼かれて消えてもらおう」


 紅葉は、自身の右目に付けた黒い眼帯に手を当てて、不適な笑みを浮かべて言う。


 「作戦は……なさそうですね……」


 瑞希は一人、この先どうなってしまうのかを何となく察しているのだった────



 「先生、こちらは準備出来ましたー!」


 瑞希が俺に手を挙げて伝えてくる。


 「へーい、ならもう掛かってきて良いぞー?」


 俺は手を振り返して、聞こえやすいよう大きめの声で答える。


 「えっ、そんなあっさりですかッ!?」


 「んー? 戦いなんて意外とあっさりなもんだぞー」


 「そ、そうですか……では、いきますねー?」


 瑞希はそう言うと、他の五人に目配せして頷き合う。


 俺はナイフを腰のベルトに挿し込む。


 すぐに戦いを終わらせては面白くないし、何より生徒達がどのように戦い、その中で何を学ぶかを確かめたいからだ。


 (ふっ……今の俺、何だか教師っぽい)


 俺は一人満足感に浸る。


 そして────


 「いきますッ!」


 瑞希が右手を俺に向ける。すると、その手に冷気が集束し、氷塊を作る。そして射出。


 拳サイズの氷塊が俺に迫ってくる。


 俺はヒラリと横に避ける。しかし、新たな氷塊が次々に飛んでくるので、俺は【身体能力強化(フィジカルブースト)】の能力を使い、少し身体を強くする。


 迫り来る氷塊を、片っ端から拳打で叩き割っていく。


 そして、俺はすぐに腰を落とし、頭の位置を下げる。半瞬遅れて、先程まで俺の頭があった場所を蹴りが通り抜ける。


 「ち──ッ!」


 恵が舌打ちする。


 恐らく【空間移動(テレポート)】の能力で奇襲を掛けたつもりだったのだろうが、残念。瑞希の氷塊を割っている最中に、突然恵の姿が消えたのは見えている。


 そこで考えられる可能性は二つ。


 一つは光学系の特殊能力を持っていて、自身の姿を透明にした。二つはこのように【空間移動(テレポート)】の異能者である可能性だ。


 それさえわかっていれば、空間移動(テレポート)してくるときの僅かなタイムラグを見切り、反応すれば良いだけの話だ。


 それにしても……


 「へえ……お前、格闘技やってんのか?」


 公平性と安全を考慮して、俺は【身体能力強化(フィジカルブースト)】を使わずに、恵が続けざまに繰り出してくる打撃を捌いていく。


 「っ……喋る余裕があるのかしらッ!?」


 恵が突如消える────が。


 バシィ!


 背後に空間移動(テレポート)した恵が放ってきた拳を、俺は左手の平で受け止める。そして、そこへ軽く右ストレートを突き出す。


 恵は一瞬驚いたようだが、すぐに飛び下がって俺の攻撃をかわす。


 「アンタも、格闘技経験者なわけ……?」


 少し悔しそうに聞いてくる恵。


 「ま、そんなとこ」


 厳密には格闘技ではなく、人殺しのために身に付けた暗殺術と言った方が正しいのかもしれないが、そんなことを言えるわけがない。


 「あっそ!」


 恵はそう言って、再び殴り掛かってきた────

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