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Episode.16 一星高校大奮闘


 「姫ヶ丘ッ!?」


 恵が驚いて声を上げる。


 「姫ヶ丘が向こうから来てるってことは、恐らく向こうにはもう弱いチームは残ってないだろうねー。全部狩り尽くされちゃってるよ」


 これは困ったといった風に、遥奈が頭を掻きながら皆に言う。


 「取り敢えず別の場所へ向かいましょう。先生が言っていた戦術に則れば、強敵は避けるべきです」


 瑞希がそう言って辺りを見渡す。少なくとも視認できる範囲には敵チームはいない。そうなれば強豪校より早く探し出して、先に狩らないと一星高校の勝機が失われてしまう。


 「そ、そうね……ならさっき来た道の交差点を曲がりましょ?」


 恵がそう言って後ろに歩きだそうとする。しかし、それを遥奈が止める。


 「さっきの交差点を曲がったところの先には、聖帝学院のチームがいたよ」


 「え……」


 恵が絶望の眼差しを向ける。


 つまり、今の状況は前方に姫ヶ丘学園、後方に聖帝学院と強豪校に挟まれている状態だ。別の道を行っても良いが、その先にターゲットとなるチームがいるかどうかわからない上に、もしかするとそっちにも強豪校チームがいるかもしれない。


 「姫ヶ丘を……奇襲しましょう」


 瑞希がゴクリと喉を鳴らしながら提案する。その提案に、恵が再び驚く。


 「ちょ、瑞希ッ!?」


 「狙う姫ヶ丘は一チーム。こちらは二チームの合同……個々の能力で劣っていても、勝てる見込みはあると思います」


 瑞希はいたって真剣だ。


 皆しばらく沈黙しながら思考を巡らせていたが、どうせぶつかるなら、桜花爛漫祭三連覇を成し遂げている聖帝学院より、まだ姫ヶ丘の方がましといったものだ。


 それに、この先逃げ続けていても一星高校が点数を重ねるためには、いずれかならず強豪と当たることになるのだ。


 その思考に至った皆は、瑞希に同意する。


 そうして意見がまとまったところで、遥奈の索敵特化の特殊能力をフル活用し、姫ヶ丘のチームの進行方向に先回りし、隠れて待ち伏せすることになった。


 「でもこれ、相手のチームにも遥奈先輩みたいな感知系の異能者がいたらすぐにバレる……」


 渚がボソッと、あえて誰も口にしていなかったことを呟くので、皆苦笑い。


 「ま、まあ、運も実力の内です……」


 瑞希が小声で答える。


 そんなとき、姫ヶ丘のチームが茂みに隠れている六人の前を通過しようとする。


 …………。


 どうやら感知系の異能者はいなかったらしく、息を殺して潜んでいた六人の前を素通りしていく。


 六人はホッとしたところで、すぐに顔を見合わせて頷きあった後、瑞希と渚、紅葉が一斉に飛び出す。


 「いっけぇえええッ!」


 瑞希が氷の(つぶて)を周囲に生成し、発射。渚は腰に吊るしてある水筒に溜めている水を使い、小粒の水の弾丸を射出。紅葉も何か技名を叫びながら炎を放射。


 氷、水、炎が容赦なく姫ヶ丘のチームに襲い掛かる。


 「──ッ!?」


 一瞬不意を突かれて驚いた姫ヶ丘の生徒だったが、すぐに平静を取り戻すと、向かってくる攻撃に対抗する。


 姫ヶ丘の一人が、特殊能力で地面の形を変形させ、自分達を守る壁を作る。それによって瑞希、渚、紅葉が繰り出した攻撃は難なく防がれる。


 続いてその壁の両端から二人の姫ヶ丘生徒が顔を出し、特殊能力を振るう。念動力(サイコキネシス)で操作された小石が、大気操作系の特殊能力で生み出された空気の弾丸が、三人に襲い掛かる。


 しかし、茂みに隠れていた菫が三人の前に【断絶結界(シャットウォール)】の能力で運動エネルギーに作用する結界を展開。


 小石も空気の弾丸もどちらも運動エネルギーに従属するもののため、結界に阻まれる。


 その隙に恵が茂みから姫ヶ丘チームの背後に空間移動(テレポート)。完全に三人の方へ注意を向けている姫ヶ丘の生徒は恵の存在に気が付かず、リーダーの風船を割られる。


 「え? いつの間に……」


 姫ヶ丘チームのリーダーは間抜けな声出して反応する。恵は満足そうな笑みを浮かべて、皆の方へと戻っていく。


 「やったわよ!」


 「恵ナイス」


 恵のガッツポーズに、渚がグッと右手親指を立てて答える。


 「この調子で次も行きましょう!」


 菫が元気良くそう言ったとき────


 「ゴメン皆、全然気が付かなかったよ」


 遥奈が申し訳なさそうに皆に言う。皆がその言葉に疑問符を浮かべたとき、その答えはすぐに現れた。


 「ふふ、次なんてございませんよ?」


 「「「──ッ!?」」」


 そこに現れたのは新たな姫ヶ丘の一チーム。そして、その真ん中に圧倒的な存在感を放つ少女。


 艶やかな麦穂のような長い髪の毛。大きな瞳は透明度の高い栗色で、肌は雪のように白い。すらりと伸びた四肢は細く婉美(えんび)。まるでどこかのお姫様といったような貞淑さと上品を兼ね備えている。


 「姫ヶ丘学園生徒会──姫君の茶会プリンセス・ティーパーティー会長、日柳(くさなぎ) 憐香(れんか)……」


 遥奈が複雑な心境を抱いたような目で、姫ヶ丘学園生徒会長──憐香を見る。


 すると憐香はにこやかに笑って、遥奈に視線を向ける。


 「ふふ、桃山さん、お久し振りですわ」


 まさかの遥奈と憐香が知り合いという衝撃の事実に、他の五人が驚く。しかし、今そんなことを突っ込んでいる余裕はない。


 新たな災難がやってくる。


 「これはこれは……一星高校の皆さんと茶会(ティーパーティー)の方々ではないですか」


 一星高校の後ろから、聖帝学院の一チームがやってくる。それも、聖帝学院生徒会長──王子(おうじ) 智之(ともゆき)率いる生徒会メンバー三人。


 (((さ、最悪だ……)))


 一星高校六人の心境は見事に一致していた。


 「あら、王子さん……奇遇ですね?」


 憐香が王子に視線を向ける。すると王子は、男性にしては少し長めの金髪を手で掻き上げながら答える。


 「いや、これは運命だよ。貴女と僕との、ね」


 「運命……? (わたくし)と貴方にそんな繋がりがあった覚えはないのですけれど?」


 「はは、手厳しいな。前にした告白……あれに嘘偽りはないよ」


 (((こ、コイツこんな場所で超プライベートな話し始めたッ!?)))


 一星高校生徒だけでなく、憐香以外の姫ヶ丘の二人も目を見開く。


 「お断りしたはずですが?」


 憐香は少し困ったように頬を手を当てて言う。


 「いつか必ず、君を振り向かせて見せる」


 (((痛い、痛過ぎる……ッ!?)))


 これには、あの紅葉までもが引いてしまっている。


 しかし、そんな会話はすぐに終わり、緊張感が流れる。


 「さて、そろそろ始めようか?」


 王子がそう言って仲間に指示する。


 「そうですね」


 憐香も答えて仲間に指示する。


 「出来る限り、やってみましょう!」


 瑞希も五人にそう言って、三つ巴の戦いに挑む。



 ────。



 決着が着くのに、そう時間は掛からなかった。


 飛び交う電撃と炎。巻き起こる爆煙。響き轟く轟音。その光景を一言で言い表すなら混沌(カオス)


 結果は一星高校惨敗。姫ヶ丘と聖帝学院の生徒会同士の戦いは、激闘、白熱戦になった後、聖帝学院の勝利。


 その後も聖帝学院は他のチームを狩りまくり、大差を付けて勝利。そして、二位が姫ヶ丘。


 しかし、学園都市オウカ中が一番驚いたのはそこではない。


 二位の姫ヶ丘の点数とは大きく開いているものの、三位に滑り込んだ────


 “三位:一星高等学校”



 ────中継映像が映し出されている大型スクリーンの前。


 「ま、優勝はキツかったな。だが──」


 俺はスクリーンを腕を組んで見詰め、結果発表を見る。


 「良く頑張ったな」


 優勝するという目標は達成できなかったものの、廃校寸前の無名校が三位に入ったというのは、充分過ぎるくらいの結果だ。


 俺は心の中で、六人の生徒達に向けて、本心からの称賛を送った。


 『凄いね、あの子達ッ!』


 瑠衣もかなり興奮していて、クルクルと回りながら浮遊している。


 「ま、俺の生徒だからな」


 俺はどや顔を浮かべながら言う。


 『でも、ミナト君はこれで満足してないでしょ?』


 「お?」


 瑠衣は何かを察しているような顔をして、尋ねてくる。


 『私にはわかっちゃうのー、ミナト君が何か企んでるのが』


 「長い付き合いのことだけはあるな」


 『えっへへー』


 俺はスラックスのポケットにいれていた桜花爛漫祭のパンフレットを取り出して、最終日の競技予定に視線を向ける。


 「ま、アイツらも頑張ったんだ……俺も少し頑張るか」

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