Episode.15 開幕!桜花爛漫祭!
学園都市オウカの賑わいは最高潮に達している────
学園都市オウカの大規模競技場では、前回の桜花爛漫祭高校生の部の総合得点上位三校の生徒──一位:第一学区聖帝学院 二位:第七学区姫ヶ丘学園 三位:第三学区雲上高等学校がズラリと並んでいる。
そして、ここ三年連続優勝を成し遂げている聖帝学院の代表生徒から、桜花爛漫祭の運営委員長に優勝旗が返納される。
そして、桜花爛漫祭高校生の部の開会宣言がなされた────
「さぁ、お前らッ! どの競技でも良いから優勝もぎ取ってこいッ!」
俺は、自分の前に体操服姿で並ぶ六人の生徒を、元気良く鼓舞する。
「って、生徒の数が少なすぎて出場出来る競技一つしかないじゃないッ!?」
と、今更ながらに恵が突っ込んでくる。
────桜花爛漫祭には、中学生の部(七日間の前半三日間)と高校生の部(七日間の後半四日間)があり、それぞれ数多くの種目が存在する。
四日目の今日から三日間は学校別対抗競技が行われ、主な競技としては障害物競走、二人三脚、玉入れ、騎馬戦、バルーンハント等々……あるが、そのほとんどがルール上多人数を必要とするため出場できない。
よって、一星高校が出場する競技は────
「良いじゃんか別に。どうせ元々勝てるかもしれない競技と言ったら『バルーンハント』くらいしかなかったんだから」
バルーンハントとは、本来一つの高校につき三人×五チームで競う種目で、チームの代表一人の頭には風船が付けられており、最終的に敵チームの風船を割った数で勝敗が決定される。
また、風船が割られたチームはその時点で失格となってしまう。
「でも先生、他の学校は五チームもあります。それに比べて一星は二チーム……」
瑞希が肩を落としながら、自信なさげに言ってくる。
「大丈夫だって、前に俺が教えた戦法を使えば。それに、今のお前らは一ヶ月前のお前らよりかなり強くなってるはずだ、安心しろ」
俺は瑞希の頭に手をポンと乗せながら言う。
「ふっ、安心するが良いさ貴様ら。この我が付いているのだ……敗北などあり得まい」
紅葉はやはりいつもの調子である。
「競技まで時間あるから、他の競技見に行こう?」
「あ、賛成です!」
渚の提案に、菫が笑顔で答える。皆も首を縦に振る。
そういうわけで、俺達は第一競技『障害物競走』を見に行く。場所は歩行者天国となった道路で、距離は一キロ程あり、百メートルごとに次の人へタスキが繋がれるのだ。
「お、ちょうど始まるところだったな……」
どうやら我らが第七学区の代表校、姫ヶ丘学園の生徒も走るらしい。他の高校はまあ、中規模小規模の高校だ。
パァンッ!
ピストルの空砲が鳴り響くと同時、一斉に生徒達が走り出す。
最初の障害は五メートル程の壁。てっぺんからロープが下ろされており、それを登れということなのだろう。
壁に来るタイミングはどの生徒もほぼ同じ。皆がロープに手を掛けて登り始めようとしたとき────
ズドォオオオンッ!
突如強烈な電撃が迸り、壁に穴が開く。どうやら木製だったようで、壁に開いた穴の回りは黒く焼け焦げていた。
「「「……」」」
俺達は無言。
穴を空け、誰よりも早く障害を乗り越えた(?)姫ヶ丘のお嬢様は、何事もなかったかのように走り出すと、次の走者へタスキを繋ぐ。
すると、その走者は摩擦を操作できる異能者なのか、まるでスケートリンクを滑るかのようにコースを進んでいき、平均台の上も難なく滑りきった。
その後も爆音が轟いたりしながら────
「まあ、そりゃ姫ヶ丘が勝つわな」
俺は腕を組んでうんうんと頷きながら呟く。
その後も場所を移したり、ときには中継を見たりして他校の競技を観戦する俺達。
二人三脚は、別チームを特殊能力で妨害したり。玉入れは主に『念動力』の異能者が玉を入れ、他校が入れようとする玉を風やら水やら炎やらで撃墜させていく。
騎馬戦に限っては、相手の帽子を取ることよりも落馬させて失格にする気しかないのか、特殊能力が飛び交っていた。異能者が数多くいる高校同士の戦いはもはや戦争で、競技場の地面が所々抉れていたり、焦土と化していた部分もある。
そんな中迎えたバルーンハンティング。競技場所は抽選で決められた第十二学区全域だ。
第十二学区には強豪校はないので、その学区の生徒達が断然有利ということはないだろう。特に多くの異能者を抱えている学校にとったら「良いハンデだ」くらいに思っているだろう。
「よーし、頑張ってこーい! 俺はお前らの無事を祈ってるぞー」
先程までの競技──否、地獄のような異能バトルを見てしまった一星高校六人の生徒達は、微妙な返事をしてスタート地点へ向かっていった。
『ミナト君ミナト君、あの子達勝てるかなー?』
瑠衣が少し高めに浮遊して、生徒達の背中を見送りながら聞いてくる。
「まあ、厳しいだろうが、全く勝機がないワケではないんじゃないか?」
俺は中継映像が映し出される場所へ向かった────
────。
「そこの道を左折した先に三人いるよー」
頭にバルーンを付けた遥奈が、【感情感知】の能力で一チーム発見する。
それに頷いた五人。少し様子を窺った後、奇襲を掛ける。
瑞希が放った氷の結晶が、紅葉が放った炎が、敵チームに襲い掛かる。
「に、逃げろッ!」
敵チームのバルーンを付けた男がそう叫んで、一目散に逃げるが、いつのまにかその背後には空間移動してきていた恵が立っており──
「逃がさないわよッ!」
軽捷に突き出した左パンチが、男の頭上のバルーンを割る。
「次に向かいましょう!」
瑞希はそう言うとすぐに別の場所へと動き出す。
一星高校は戦闘向きではない特殊能力を持つ遥奈と菫をリーダーにした三人チームを作り、二チーム一緒に行動している。
そして、遥奈の特殊能力で、あまり余裕のなさそうな感情を抱いている(強敵じゃない)チームを探し出し、瑞希や渚、紅葉が派手な攻撃をして注意を引き付け、その隙に恵が背後からバルーンを割るという作戦で、これまで多くのバルーンを割ってポイントを稼いできている。
「うー、ショックガンが使えたらなぁ……」
遥奈が辺りを索敵しながら、少し残念そうに言う。
桜花爛漫祭の競技では、競技に関係のないもの、自分の特殊能力と関係を持たないものは所持できない決まりになってあるため、遥奈のショックガンによる正確な狙撃は使えないのだ。
「しょうがないですよ先輩。というか、普通ショックガンなんて持ってませんからね?」
菫がやや苦笑気味に答える。
「競技開始からどれくらい経った?」
「二十分と言ったところでしょうか」
渚の質問に、瑞希が答える。すると、渚がうーんと唸りながら考えて言う。
「なら、そろそろ強いチームだけが残ってるはず……ここからはそう簡単にバルーンが取れない」
その言葉に皆が深刻な表情になる。
「アイツ、優勝してこいなんて簡単に言ってくれちゃって……ッ! たった二チームでここまでやったんだから、これで誉められなかったら殴ってやるわ!」
恵がプリプリと怒りながら言う。それを聞き取った紅葉が、不思議そうに尋ねる。
「何だ? 恵は師匠に誉めて貰いたいのか?」
「な……ッ!?」
紅葉の純粋な質問と、それに対する恵の反応に、皆が顔をニヤつかせる。それを見た恵が、顔を真っ赤にして反抗する。
「ち、違うからッ!? 何で私がアイツに誉められなきゃ……いや、別に誉めないでって言ってるワケじゃないけど、誉めてくれても良いというか……」
「ふふ、恵ちゃんは素直じゃないですねー」
菫がやや悪戯っぽい笑みを浮かべて恵に言う。
そんなとき────
「皆、止まって」
少し真剣な声色になった遥奈が今進んでいる道の先に目を凝らす。遥奈は【千里眼】の能力も持っているので、五人には見えない先まで見えている。
「どうしたんですか、先輩?」
瑞希が遥奈の隣に並んで尋ねる。
「あれは……姫ヶ丘学園のチームだよ」




