不吉なことを言わないでください
世界には伝説の武器と呼ばれる物が存在する。
時空を切り裂くゼイリッシェルト。
煉獄を燃やし殺すアイカンノット。
魔物食いの餓鬼王剣。
愛欲の剣リレイアス。
光ありしシャインと、闇夜のシャドウ。
他にも様々な伝説級の武器あれど、伝承にある力があるとは限らない。
その全てが使い手を選ぶとされ、今の所誰一人その能力を見た者はいないからだ。
まあ大体が貴族か王族のコレクションにされて、ホコリを被ったまま飾られているだろう。
ただ、このギルドの中にも何本かの武器があると言われる。
厳重に保管されて、持ち主が現れるのを待っているらしい。
僕はこの不幸から、あと三日で解放されようとしていた。
その日が来れば給料を得て、晴れて真っ当な生活が約束されているのだ。
趣味の魔道具集めも再開しようかと、近くの野草を食べながらウキウキ気分でギルドへ向かってゆく。
「おはようございまああああああああす!」
出社すると僕はものすごく元気に挨拶をした。
「クー、おはよう」
「ヨメ、オハヨウダぞ!」
ファラさんとミアさんもギルドに来ていたようだ。
「お早うございますファラさんミアさん! いい天気ですね、アッハッハァ!」
そのまま仕事の準備を始めようとしたのだけど。
「ああ、お早うございますライズ・ライト君。……そうですねぇ、あるいは君なら?」
スラーさんに声を掛けられた。
どうも嫌な予感しかしない。
「えっと、なんですか?」
でもどうせ受けることになるのだろうと僕は聞き返す。
「実はですね、君にある物の手入れをして欲しいのです。受け入れてくれますよね?」
ほら、やっぱり頼みごとをして来た。
「手入れって倉庫の掃除とかですか? まあいいですけど」
なんだそんな感じかと、僕は簡単に受け入れてしまった。
「ワタシ、ヤるー!」
「それ私もやるのかしら?」
「まあ手があった方が早く終わるかもしれませんね。仕事の方は調整しておきますから皆さんでやって来てください。では案内しましょう」
そして案内されたのが、厳重な扉の前。
前に行った地下通路の扉よりも更に奥にある扉だ。
「では開けますよ、覚悟してください」
「うぁ……って階段じゃないですか」
「ダナー!」
一応僕は驚こうとしたけど、地下へ伸びる階段があるだけだった。
ミアさんはそれでも驚いているようだ。
「スラーさん、ボケが始まってるんじゃないですか?」
「アッハハ、ラビス君は酷いことをいいますね。私はまだボケていませんよ。ちょっとあまりに久しぶり過ぎて階段があることを忘れていただけです。では先に進みましょうか」
「あ、はーい」
拍子抜けした僕は、期待せずに地下へおりて行く。
先には人の手が入って整備された部屋があり、中心には台座が設置してある。
その上には透明なケースがあり、中には一本の剣と書物が飾られていた。
でも別に綺麗な作りをしていないし、むしろ小汚いと言った方がいいレベルの物だ。
まあ他に目ぼしい物もないし、この剣を手入れしろと言うのだろう。
「この剣は不運莫逆デスラックという剣なのですけどね、君にはこの剣を磨いてほしいのです。ラビス君達にはこの部屋の掃除をしてもらいましょうかね?」
「ああ、はい」
名前を聞いただけで物凄い不幸に見舞われそうだ。
「わかったわスラーさん、あの剣はクーに任せましょう。ミアは触っちゃダメよ?」
「ワカッたー!」
やはりファラさんも名前に危険を感じたのかもしれない。
ミアさんに注意して台座から離れていく。
「ではその前に、ライズ・ライト君には一つ注意をしておこうと思います。この剣に触ると少し不幸が増すと言われていますけど、今の君ならきっと大丈夫でしょう。それ以上落ちようがありませんからね、アッハッハ」
スラーさんがとんでもないことを言っている。
あとたった三日だというのに、そんな物に触りたいとは思わない。
「すみません、僕ちょっと用事があったのを思い出したんで、他の人に回してください!」
僕は後ずさりして階段に戻ろうとするが。
「少し脅かし過ぎたようですね。安心してください、そういう伝説があるというだけで本当になるわけではありませんから。前に磨いた人にも特に何もありませんから大丈夫ですよ」
「……だったら何で僕に頼んだんですか? 別にスラーさんがやってもいいじゃないですか」
「私は別の仕事がありますからね。君に頼んだのは……まあ念の為ですよ」
念の為とは、もしかしたらということも有るのだろう。
やっぱり止めようともう一歩下がるが。
「ふむ、やってくれるというのなら、私のポケットマネーから多少のお礼があるのですが……」
スラーさんは懐から財布を取り出し、二枚の金貨を取り出している。
そんなはした金で僕が動くと思ったら。
「やりまああああああす!」
大正解だ。
くだらない伝承なんかよりも目の前の現金だと喜んで跳びついた。
「ふぅ、現金な奴だわ」
それを見ていたファラさんはため息をつき。
「カネダなー!」
ミアさんはよく分からないままに頷いている。
「お金は物凄く大事なんですよ!」
ファラさんにはお金が無い生活を体験しろと言いたい。
まあ言わないけど。
「ああ、手入れの道具は台座の裏に置いてありますから、ご自由に使ってやってください。では任せますね」
スラーさんは手をふって去って行く。
「わかりました、やっときま~す!」
僕はスラーさんの背中を見送り、ビシッとおじぎをした。
そしてお金を大事にしまい込んだ。
「じゃあ私達は部屋の掃除をするわよ」
「ギギ!」
ファラさんの声にミアさんはうなずき、部屋の掃除をし始めた。
壁とか床を掃除して、僕の方には近づいて来ない。
やはり危険を感じているのだろう。
「うっ……」
まず台座の上にあるケースを取り外して見たのだけど、剣と書物からは鼻につくカビの臭いがしてくる。
何時から放っておかれたのだろうか?
それとも、元からこんな臭いがする剣なのだろうか?
早く終わらそうと、僕はその剣に手を伸ばした。
だが、剣に手が触れた時。
「なあああああ!?」
「ちょっと、何してるのよ!」
「マブしー!」
剣が光り輝き、僕達の目をくらませた。
目をつぶって待ち続けると、まぶたの裏にも見えていた光が収まっていく。
「いよぅ、俺っちデスラァック! 今回の主人はお前かぃ? よろしく頼むぜ相棒、ぃやっはぁぁ!」
なんか物凄く軽そうな声がしている。
僕は目を開け周りを見るが、手には剣しかないし、どうやら僕達以外には誰も居ないようだ。
「シャベッたー!」
「しっ、見ちゃダメよ。関わったら不幸になるわ」
二人はこちらを見てもくれない。
僕も幻聴だと気にせず、剣の手入れを始めることにした。
「おいおいおいおい、挨拶はないのかぃ相棒。もう一度言うが、俺っちはデスラァック! 陽気にラァックとでも呼んでくれぃ」
僕は置いてあった道具を使い、雑巾で鞘の汚れを落としていく。
「聞いてるかぃ相棒。俺っちはデスラァック! 返事をするまで続けるぜぃ」
頑固な汚れが取れないので、台座の角でガリっと削るが、しっかりこびりついている。
「俺っちはデスラァック! 聞こえてない振りをしたって無駄なんだぜぃ?」
ここで返事をしたら絶対駄目だ。
僕は無視を続け、手早く動き始めた。
「デスラァック! デスラァック! デスラァック! デスラァック! デスラァック! デスラァック! デスラァック! デスラァック! デスラァック! デスラァック! デスラァック!」
しかし、何十回何百回と繰り返される自己紹介に、ついに僕の方が折れざるを得なかった。
「あ~、もう煩いです。ちょっと黙っててください!」
僕は思わず声を出し。
「おーけぃ、相棒よく返事したぜ! そいじゃあ契約完了だぁ!」
何か良く分からないけど、勝手に契約が成立してしまった。
「はぁ!? そんな契約は……うわっ!」
そしてまたも剣が光り、形状が変化していく。
磨くまでもなくピカピカと光り、鞘までもが宝玉に彩られている
「オゥ相棒ゥ! お前サイコー、超不運マーックス!」
僕の不運に反応しているというのだろうか?
「誰が不運ですか、僕はもうすぐ幸福になるんです! もういいです、綺麗になったし帰ります! 行きましょう二人共」
しかし、僕は断じて不幸ではない。
僕は台座のケースを戻し部屋から出ようとすると、腰の辺りが何か重くなる。
何だろうと見下ろすと、台座に置いてあったはずの剣が腰にキッチリ装着されていた。
クー・ライズ・ライト (僕)
グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
コーディ・フル・フラグメント(獣使い見習い)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)
デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)
フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)




