魔王様、料理する
跳び起きた僕は、布団の中に入っていたフデから距離をとった。
異常がないことにホッとするが、鉄棒を持って警戒する。
やっぱりツキコさんから逃げて来たらしい。
だから僕は窓をあけて思いっきり叫んだ。
その声にツキコさんは現れて、フデを連れて行ってしまった。
僕は仕事に出掛け、何事もない日々が三日ほど続くのだが、その日仲睦まじい二人の姿が現れた。
仕事だからとツキコさんが離れると、フデは僕に泣きついて来る。
どうでもいい悩みを聞かされ、なぜかファラさんがやる気を出してしまった。
とりあえず仕事をチャチャッと終わらせた僕達は、喫茶店に集まって作戦会議をしている。
「そんなの簡単よ、ツキコさんに尻以外の魅力を教えれば良いのよ」
まあ確かにファラさんの言わんとしていることは分かる。
「ヨよー!」
そしてミアさんはマネをしているだけだろう。
今の所フデはお気に入りの道具ぐらいにしか思われていないし、ちゃんとした男として見られればチャンスはあるかもしれない。
まあ見られればの話だけど。
「なるほど、俺の格好良さをみせればいいのだな? 能力を封じられているとはいえ、戦闘は得意分野だ。分かった。ツキコに俺の格好良さを見せつけてやろう!」
フデは何かを思いついたようだ。
でもツキコさんは強いから、並の相手が出てきたとしても自分で倒すだろう。
それに例え強敵が出て来たとしても……。
「いや無理ですよそれ。戦闘中に仲間の格好良さなんて見ませんし、ツキコさんは敵にしか目がいきませんから」
僕は無駄な作戦だと指摘した。
「じゃあどうすればいいのだああああ!? 早くしないとツキコが帰って来るじゃないかあああああ!」
フデは頭を抱えて絶叫している。
「言っとくけど、格好の良さなんて見せても無駄よ。前の相手がデッドロックさんだったし。それ以外の所で戦うしかないわ」
「なるほど、確かに。フデが相手になるはずがないですね」
僕はファラさんの言うことに納得した。
「待てええええい! デッドロックっていうのはツキコの相棒のことだろう? だったら俺の方がカッコいいじゃないか!」
フデは反論してくるのだが。
「「ないない」」
「ナイなー!」
僕達三人は軽く否定した。
どう頑張ったとしても、スラっと背が高くてお洒落なデッドロックさんには敵わないのだ。
「ああああ、俺の自信が崩れ落ちるうううううううう!」
フデはガックリと崩れ落ちたが、ファラさんから助けの手が伸びる。
「別に気にする必要はないわ。顔がダメなら別の攻め方をしてみればいいだけよ。例えば……そうね……料理とかはどうかしら? 胃袋を倒せば勝てるって聞くし」
「胃袋は倒すんじゃなくて掴むじゃ……?」
僕はちょっとしたことを指摘したのだけど。
「どうでも良いからやりなさい!」
「あ、はい……」
ファラさんに睨み付けられ、フデは素直に返事をした。
ツキコさんと同じ臭いを感じたのかもしれない。
僕達はツキコさんの部屋にまでお邪魔して、フデが料理を作り始めている。
手際よく作っているように見えるが、何か香ばしいを越えて焦げ臭い香りがして来る。
鍋から黒い煙が出てきているけど、これは気のせいじゃないだろう。
「ちょっと、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ、もう完成している! さあ、皆の分も作ってあるから存分に食らえ!」
完成した物体は……たぶんシチューかなにかだろう。
しかしこれは味見をするまでもない。
肉や野菜は炭化して、水分が全く無くなっている。
スプーンを強引にねじ入れると、皿がゴトッと持ち上がった。
「ゴリゴリー、マズイぞ!」
ミアさんはスプーンで採掘するように掘り返し、じゃりじゃり固まった物体を口に入れている。
それでも飲み込むのは流石だと思う。
お腹が空いていたのだろうか?
「よく食べられますねミアさん」
「マズイはクエる! シビシビはクエナい!」
シビシビ?
痺れる物がダメってことだろうか?
それは良いとして、野暮らしをしていたフデに料理は難しいようだ。
今も弁当を貰っているから、料理をする機会もないだろうし。
「……無理ね、諦めましょう。じゃあ、頑張って」
ファラさんはそう言って僕の肩に手を置いた。
「ええ!?」
何故か僕が作る羽目になったらしい。
一人暮らしの長い僕は料理ぐらい作れるのだけど。
「……あの、それ意味無いんじゃ?」
僕は疑問を口に出した。
「別に何時も作る訳じゃないでしょう? この男には次作る時までに料理を覚えさせればいいのよ」
「フデさんもそれでいいんですか?」
ファラさんの言う言葉に僕はフデに聞いてみたのだけど。
「俺はツキコが優しくなってくれるならなんでもいい!」
「あ~、そうですか」
何にも気にしていないようだ。
仕方ないから僕は料理を作り始め、真面な料理を完成させた。
といっても肉と野菜をいためたものや、色どりを変えたサラダぐらいだ。
作り置きのパンも添えて二人分を完成した。
自慢の、というほどでもないけど、フデの物と比べればそこそこ食べられるものだろう。
「ふん、まあまあね。私はもう少し味が濃い方が好みだわ」
ファラさんはフォークで肉を突き刺し、口に運んでいく。
「ヨメ、ウマイぞ!」
続きミアさんが二口三口と食べ始め。
「たしかに、これは美味いな。ハシが止まらん!」
フデも味見とばかりに口に入れるが、全員の手が止まらない。
「って、全部食べようとしないでください! 折角作ったのにもう無いじゃないですか!」
皿には小指の先ぐらいの物体しか残されていない。
これはもう一回作り直さなければ。
「何してるの、ツキコさんが帰って来るじゃない。早く作り直しなさい」
「ヨメ、ワタシモットクう!」
「安心しろ、俺が残さず食べてやる!」
三人共何しに来たのか忘れてるのだろうか?
「ツキコさんの為に作るんでしょう。もう食べちゃダメですからね!」
僕は三人を説得しようと言葉を投げかけたのだけど。
「「「えー!」」」
ファラさんとミアさんは兎も角、フデまでも不服らしい。
「……じゃあ分かりました。今回は食事を楽しんで解散しましょう。フデさん、末永くお幸せに」
本人がどうでもいいというのなら僕が頑張る必要はない。
言い合いを諦めて適当に料理を作ることにした。
「ハッ!? 久しぶりの栄養に理性が吹き飛んでいた。そうだ、ツキコの為に作っているんだった」
フデもやっと思い出したらしい。
「材料も少ないですし、フデさんは二人の防衛をお願いします。食べられたらお終いですからね」
「ああ、任せておけ。元魔王の力を見せてやろう!」
フデはファラさんとミアさんに向き直り、ナイフとフォークを構える。
「私はもう満足したからいいんだけど。やると言うなら叩きのめしてやるわ」
「ワタシ、ハラヘリ!」
二人共同じ様にナイフとフォークを構え、作られている料理を待ちわびている。
そして。
「ふう、出来ました」
僕がテーブルに料理を置くと。
「ニャアアアア!」
「その肉は私が頂くわ!」
「させるかあああああああ!」
三人の争いが始まり、食器での打ち合いが続く。
しかし決着がつく前に。
「……ただいま……? 私の家で何してるの?」
部屋の主人が帰宅したのだった。
クー・ライズ・ライト (僕)
グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
コーディ・フル・フラグメント(獣使い見習い)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)
デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)
フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)




