魔王様、調教される
僕達は町に帰ってスラーさんに報告をしていた。
手早く報告を終えると、ツキコさんがスラーさんに頼みごとをする。
どうやらフデを彼氏にすることを決めたらしい。
スラーさんもそれを許すが、フデは乗り気では無いようだ。
しかし、自由意志などないとキッパリ否定され、ツキコさんに連れて行かれた。
僕はコーディ君を送って家に帰ったのだけど、布団の中にモゴモゴ動く物体があった。
僕は即座に布団から跳び出しフデから距離をとった。
「ま、まさかもう僕の体をもてあそんで!?」
僕は自分の体を見回し、特に問題がないことに気が付いた。
「違うわ馬鹿野郎、俺はツキコから隠れていただけだ! 俺の体が斬れないからって遠慮なくカタナで刺して来るんだぞ!? 斬れなくたって痛いもんは痛いんじゃあ!」
まあ言われなくたって、フデが逃げていた理由は知っている。
「だからといって何で僕の布団の中に!? どうやって僕の家を知ったんですか!?」
僕は疑問を聞いてみるのだが。
「俺のサーチならライバルの居る場所ぐらい簡単に判明するぞ! 布団に隠れていたのはお前の恋人に見せかけるためだ!」
フデは気持ち悪いことを言っている。
「いや、そんな恋人居ませんから。もし今度やるようだったら金を払ってでも抹殺しますからね。本当に……」
僕は更に距離をとって、近くに置いてあった鉄棒を握りしめた。
「分かった、二度としない。……だから今日だけ匿ってください!」
フデが懇願してくるので、僕はおもむろに窓を開いた。
「ツキコさああああああああああん、ここにフデが居ますよおおおおおおおおおおお! 早く来てえええええええええ!」
そして、まだ近くに居るかもしれないツキコさんに呼びかけた。
「やめろおおおおおおおおおお!」
すると、一瞬のうちに黒い影が家の中に飛び込んで来る。
「……フフ、見つけた」
これは間違いなくツキコさんだ。
本当に来るとは思わなかったけど、まあ手間が省けただろう。
「嫌あああああああ、ツキコが来たああああああああ! 助けてええええ、助けてえええええ!」
「……大丈夫、優しくしてあげるから……」
嫌がるフデに、ツキコさんはカタナを抜いて迫る。
しかし、僕の家の中で変な運動をされたら困ってしまう。
ここは外に誘導してやらないと。
「ツキコさん、ここは僕の家なので外でお願いします」
「チィッ、分かったわよ。さあ早く立ってダーリン、外に行きましょう。じっくり突き入れてあげるから」
「し、尻はやめてええええええええ!」
フデの方が強いのに反撃はしないようだ。
やっぱり相手が女性だからだろうか?
それとも意外と彼女が欲しかったり?
「じゃあお幸せにー」
っと、僕は手を振って二人を見送り、いつも通りに仕事に出掛けて行く。
だが、いつまで経ってもフデとツキコさんはギルドに現われることはなかった。
スラーさんが何も言わない所を見ると、一応許可は取ってあるのだろう。
そのまま何事もなく流れる日々は三日と続き、その日ついに二人の姿が現れた。
「ああ、ツキコは何て可愛いんだ。俺はツキコの虜だ。もう他のことなんてどうでもいい!」
「……フフ、嬉しいわダーリン」
あれだけ嫌がっていたフデは、ツキコさんと仲睦まじく腕を組んでいる。
あまりにも変わり過ぎているし、特殊な調教でもされたのだろうか?
僕には計り知れないことだ。
気にしないでおこう。
まあそれ以外は普通の日常になると思っていた。
「……じゃあ今日の夜また会いましょう」
「もちろんだよツキコ、部屋で待っていてくれ!」
二人は別れて別々の仕事をするようだ。
ツキコさんがデッドロックさんと出掛けた瞬間、フデは僕の下へとやって来た。
僕の腕を両手で掴み、周りを見渡してから。
「助けてくれえええええええええええ、ライバルよおおおおおおお!」
と泣きついて来た。
まだ完全な洗脳には至っていないようだ。
「クー、早くしなさいよ」
「ヨメ、ハヤくシろ!」
外回りに行こうと、二人が呼んでいる。
「あ、は~い、今行きまーす」
僕は気にせず仲間達と出掛けようとするのだけど、フデは僕の腕を離さない。
「手を離してくれませんか?」
「助けてくれたら離してやろう」
スラーさんに頼まないのは無駄だと分かっているからか?
「「…………」」
僕とフデの妙な沈黙が続く。
しかし。
「あんた邪魔よ! 仕事ができないでしょうが!」
「ジャマまー!」
「ぐはあああああああああ!」
ファラさんからギャラクシー・クラッシャー・パンチ(謎)を食らい、フデは天井にぶつかって落ちて来た。
僕はこの隙に逃げようと移動したのだけど、黒鉄虫のように這いずり回り、僕の足首を掴んでしまう。
「ライバルよ頼む! 俺にはお前しか頼む奴が居ないんだ!」
泣きながら必死で頼んで来るフデの本気度が垣間見える。
「あんたちょっとしつこいのよ」
ファラさんは止めを刺そうと前に出るが、なんか可哀想になってきた。
だから僕は。
「ファラさん待ってください。フデさんの話だけは聞いてあげたいので、スラーさんに同行の許可を貰って来ます」
「おおおおおお、ありがとうライバルよおおおおお!」
僕の中の魔王という概念が揺らぎそうである。
もちろんフデだけが特別なんだろうけど。
スラーさんからは、『まあいいんじゃないですか』と軽く言われてしまった。
もしかしたら、フデがどうなろうと興味がないのかもしれない。
という訳で一緒に出発した僕達は、フデの話を聞きながら移動している。
「……ライバルよ、という訳なんだ! 俺とツキコを別れさせないで暴力だけをやめさせてくれ!」
で、聞き終えた結果、暴力は嫌だけどツキコさんには恋人になって欲しいということらしい。
「なんというか、思った以上にどうでもいいですね……いいじゃないですか、暴力さえ我慢すれば全部上手くいきますよ」
「無理無理無理無理無理! お前は知らないから言えるんだ。反り返ったカタナで何度もケツを刺されるんだぞ! おかしなものに目覚めそうになるじゃないか! 気持ちよくなったらどうしてくれるんだ!?」
僕はそんなものを知りたいとは思わない。
やっぱり丁重に断るのが吉だと僕は思ったのだけど。
「いいわ、手伝ってあげる。恋愛相談なら私に任せなさい」
「マカセろー!」
どうやら話を聞いていたファラさんが、やる気を出してしまったようだ。
ファラさんが恋愛事に詳しいとは思えないのだけど、嫌な予感しかしてこない。
否定したら怖いからやめておこう。
クー・ライズ・ライト (僕)
グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
コーディ・フル・フラグメント(獣使い見習い)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)
デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)
フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)




