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魔王様大混乱

 下の状況を確認すると、気絶した魔王を取り合い、お父さん達が争っているようだ。

 魔王を回収しないとと、一応下へおりてみたが、回収できるような状況ではなくなっている。

 騒ぎが収まるまで待っていると、グリアさんがやって来た。

 上の二人も気になるからちょっと行ってみようと思ったのだけど、グリアさんが余計なことをしてしまったようだ。

 ディザリアさんが介抱され、村に黒色の雨を降らせてしまう。

 僕達四人だけはなんとか生き残り、ディザリアさんに怒りのチョップを食らわせた。

「む~、むううううう~!」


 ディザリアさんは、フェイさんよりも厳重に縛りあげられ、グリアさんに担ぎ上げられている。

 その口には猿轡(さるぐつわ)がされ、魔法は一切使えないようにしてあった。


「ディザリア、流石にあれは駄目だと思うんだ。反省した方がいいぞ?」


 っと元凶であるグリアさんが話しかけている。

 とても残念だが、二人を運ぶためにもグリアさんを失う訳には行かないのだ。


「グリアさん、フェイさんも運んであげてください」


 僕はフェイさんを指さした。


「我が君、私に任せてくれ。力仕事は私の役割だ!」


 グリアさんはドーンと自分の胸を叩き、縛られたフェイさんを肩に吊るす。

 フェイさんの足が多少引きずっているようだが、まあ問題はないだろう。

 あとは外に出るだけだ。

 幸か不幸か天井には大穴が空き、上に登れるような道がある。


「ほらさっさと行くわよ」


 ファラさんは手足を使い、その道を登って行く。


「あっ、はーい」


「ウン!」


 僕とミアさんも続き。


「わ、我が君、これではちょっと登れないんだが? 待ってくれ、置いて行かないでえええええ!」


 グリアさんを置き去りにして行った。

 まあその内登って来るだろう。

 頑張って地上に出るが、やはり壮絶な光景になっていた。

 怪我は無いようだが、屋根やら壁やらに人が突き刺さって想像を絶する光景だ。


 村の中は大騒ぎで、あとでディザリアさんには謝らせなければならない。

 それはグリアさんと共に後々やってもらうとして、今は裸の魔王を見つけださなければ。

 しかしここから見る限りは見当たらないのだけど、一体どこに?


「ヨメ、アれ!」


 何か見つけたミアさんが、僕の服をぐいぐい引っ張った。


「ん、何ですかミアさん? もしかして見つけました?」


「ウン! アレだ!」


 と、指さされた煙突に突き刺さった下半身を目撃した。

 もちろん下半身も全裸である。

 広げられた両足は三角に垂れ下がり、丁度太陽に照らされた雄大な山のようだ。


「ふぅ、汚いケツね」


 ファラさんはフデの尻にも動じていない。


「ケツケツ!」


 ミアさんはよく分からない。

 もしかしたら見慣れているのかも?


「まあ逆でなくてよかったですね」


 あれが逆向きだったら、ちょん切られていても不思議ではない。


「それじゃあクー、行ってきて」


「えっ? 僕一人でですか?」


 確かに、アレを引き抜く時には男の大事な物が見えてしまう。

 だが、僕としても見たいとは思わない。


「早く行きなさい」


 断わったとしても行かせる気だろう。

 言い合いをしても無駄である。


「あ~、分かりました。じゃあ行って来ま~す」


 渋々ながら頷いて、その家の人に許可を取った。

 そして家をよじ登り、落ちないようにロープで体を固定して、はさまっているフデの足を手に持ったのだ。


「よいしょおおおおおおおお!」


 屋根の上で多少バランスが悪いけど、一応力いっぱい引っ張ってみた。

 ガッチリ噛み合って簡単には抜けてくれないようだ。

 下の二人は動かない。

 手を貸してはくれなさそうだから、もう一度頑張ってみることにした。


「ぐにににににににににににに!」


 グッと力を込めてフデを引っ張ると、つっかえていた物が無くなったようにスポーンと空に舞い上がる。

 上半身はススに塗れて真っ黒だ。

 あまりの勢いに思わず手を放してしまったが、空中に投げ出されたフデは、太陽を背にしてピタリと静止した。

 煙突から抜けた衝撃で意識を取り戻したのか?


「我は一体……? 記憶が混濁して思い出せぬ。……ああ、そうだ、我は魔王である。我こそはこの世界に君臨する魔王、インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー也!」


 フデの背後には邪悪なオーラが渦巻き、太陽がのみ込まれているように見える。

 気を失う前に、煙突の角にでも頭を打ち付けたのだろうか?

 昔の記憶がぶり返しているのかもしれない。

 それに、服とか色々はぎ取られたから封印も解けているようだ。


 このままでは魔王として覚醒してしまう。

 そう思った僕は。


「違います、あなたの名前はフデです。忘れたんですか? 自分で名乗ってたじゃないですか」


 なんとか現在の記憶をよみがえらせるワードを教えた。


「貴様、我はそんなおかしな名前では……? ……ん? 言われていた記憶が頭に……? 我はフデなのか?」


 フデは記憶が混乱している。


「そうです、あなたは魔王じゃありません。ケモネハウスというボロ小屋に住んで、草を食い漁るフデさんです!」


 忘れたくても忘れられない、今現在の生活状況を教えてあげた。


「……ち、違う、我は魔王で、そんな生活はただの夢だ! 違うもん! だって違うんだもん! 我は貧乏じゃないんだもん!」


 じつは記憶が戻っていても認めたくないだけかもしれない。


「フデさん、そんなフルチンで言ってたって威厳なんてありませんよ! もう記憶も戻っているんでしょう? 下におりて来て降伏してください!」


 確信してそう言ったんだけど。


「うるさああああああああああああああああい!」


「うわああああああああ!」


 フデは魔力弾を撃ち出した。

 避けると、家の屋根が爆散して大穴が開いてしまう。

 これが本来の魔王の力なのかと恐怖を覚えるが、今では立派な貧乏人だ。


「フデさん、落ち着いてください。もう暴れないならギルドで食べ物をくれるって約束したじゃないですか! 新しい住処も、お金も貰えるって言うのに投げ捨てちゃっていいんですか!? また草やら虫やらを食べる生活に戻っても良いんですかぁ!?」


 僕は説得を続けながら地面におりて行く。


「我は……いや俺は、フデ……いやフデじゃないし! 俺はジョージだって言ってるだろうがああああああああああああああ!」


 どうやら、フデの暴走は止まらないらしい。

 邪悪そうな魔力弾を、所かまわず村の中に撃ち放った。

 その攻撃のために、村の中は更に凄惨な光景へと変わっていく。


「あぶな!」


 僕はギリギリで回避し。


「ホワわ!」


 ミアさんは何事もなかったように首を動かすだけで躱し。


「うわ、もう攻撃した方がいいんじゃないの? 防御力も無さそうだし」


 ファラさんはもう投げナイフでも使おうとしている。

 しかし落ちぶれて草をもしゃもしゃしている魔王であっても、一応魔王は魔王なのだ。

 攻撃してターゲットが絞られたら僕達に勝ち目があるかどうか分からない。


「まだ攻撃はしない方がいいです。とりあえず逃げながら結界を作ってみましょう」


 だから先にやれることをやっとこうと提案した。


「……はぁ、一撃で倒せるか分からないし、それがいいかしらね」


「ヨメ、ワカッた!」


 二人を納得させて僕達は村の中を移動して行く。

 何とか後ろから迫る魔力弾を避け続け、出来る限り巨大なものにしようと、一本ずつ鉄棒を地面に突き立てた。

 クー・ライズ・ライト (僕)

 グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)

 リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)

 ミア・ミスト・レイン(元賞金首)

 アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)

 グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)

 ランズ・ライズ・ライト (父)

 ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)

 フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)

 スラー・ミスト・レイン(僕の上司)

 ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)

 ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)

 デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)

 ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)

 リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)

 ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)

 デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)

 フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)

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