叫ばないでください魔王様
爆発した魔王教本部を調べると、地下におりるハシゴがあった。
またも暴走しそうなディザリアさんを村長の家に帰し、僕達はその穴の中へおりて行く。
地下におりて調べようとするが、僕達は黒色の集団に出会う。
意外と良い人かもしれないその人達だが、ファラさんを切れさせたからどうにもならない。
黒い人達は気絶させられ地面に転がった。
倒れた黒服の人達の服をはぎ取り、一応何か持っているか調べたのだけど、
「特に変わったものは持ってないみたいですね。じゃあこの服でも着て紛れ込んでみますか?」
金目の物は持っていないようだ。
僕は服を着るように提案をした。
「はぁ? 嫌よ、そんな唾液まみれのマスクなんて付けたくないわ。やりたいなら一人でやれば?」
ファラさんは気が乗らないらしい。
確かにそう言われれば嫌な気しかしない。
「我が君、私も他人の臭いが付くのはちょっと。どうしてもというのなら、マスクの裏側をペロッと舐めてから渡してくれないか?」
グリアさんは、真面な顔で真面じゃないことを言っている。
「服を着るのは諦めましょう」
もちろん僕もそんな事をしたいとは思わない。
「ワタシ、キたー!」
ミアさんだけが文句を言わずに黒い衣装を身に着けている。
しかし、一人だけ黒くなっても意味はないだろう。
変なお芝居も出来そうにないし。
「ミアさん、それは要りません。その辺に捨てといてください」
僕が指示すると、
「ワカッたー!」
ミアさんは素直に着ていた黒い服を脱ぎ捨てた。
「直ぐ見つかっちゃうでしょうけど、このまま行きますか? というかそうするしかないんですけど……」
僕はもう諦めている。
「見つかったら叩き潰して行けばいいだけよ。ほら、ボーっとしてないでついて来なさい」
と言って教えられた道を堂々と歩き始めたファラさんと。
「ギ!」
頷いてついて行くミアさん。
これだけ堂々としているなら、意外と大丈夫だったり?
僕は何度もくっ付いて来そうになるグリアさんを牽制し、ファラさんの後ろについて行く。
以外と長い道を歩き続けると、もの凄く広い空間に出た。
僕達が居るのは、広場の周りを囲むように作られた高い通路だ。
下を見下ろすと、大勢の人がひしめきあっている。
百人どころか、数千人はいるかもしれない。
どこから集まったのか知らないが、村の中に居る人間全部詰め込んでも足りないぐらいだ。
中央奥には巨大な魔王像があり、その指から吊るされた本物のフデの魔王が見える。
「こらああああ、俺をどうする気だ! 妙なことをしたらただでは済まさんぞ! おい、聞け、誰かああああああああああ!」
ここまで聞こえるような大きな声で叫んでいるが、誰も助けてはくれないようだ。
魔法とか使えるはずだが、それも封印されてたり?
ただの一般人では無理に助けに行っても戦力にはならないだろう。
それはまあ許容範囲なのだけど、問題は……。
「むー、むーむー!」
何故かその隣に吊るされているディザリアさんだ。
フェイさんには面が割れているし、帰る途中で捕まったのかも?
あれからそんなに経っていないというのになんて簡単に捕まってしまうんだ。
僕達と鉢合わせにならなかったとなると、別の入り口があるのかもしれない。
そしてその二人が吊るされた下には。
「さあ魔王様、諦めて我等に力をおおおおおおお!」
フェイさんが手を広げてフデを脅している。
「だから無理だって言ってるだろう! 俺は今封印されてるんだから! だからお願いです、下ろしてください!」
もうフデに魔王としての面影はない。
元から無かった気がしないでもないけど。
「むー、む~!」
そしてディザリアさんは足をパタパタさせている。
助けに行くためには……。
一応この場所から魔王像へ行くことも出来るようだ。
この通路には見張りも居ないが、あそこに行ったら流石に目立つだろう。
やっぱり黒い服を持ってこれば良かった。
どう動くべきか悩んでいると。
「さあ皆さん、今日も元気に魔歌を歌いましょう!」
フェイさんが変な動きをしながら。
「何が何でも娘が第一、スキンシップは欠かしません! 彼氏が出来たら脅して脅迫、それでも駄目なら実力行使、はい!」
何かしら駄目な歌を大声で歌っている。
これはもしかして聖歌の逆バージョンだったり?
『何が何でも娘が第一、スキンシップは欠かしません! 彼氏が出来たら脅して脅迫、それでも駄目なら実力行使!』
しかも全員で復唱してるし。
まさかここに居る人達は、全員娘持ちのお父さんなんじゃ?
これだけ人数が居るとなると、国内外から集まって来ていたり?
これはちょっと恐ろしい。
それから長い歌が続けられ最後に。
「愛してるよファラちゃあああああああああん!」
「ラビアアアアアアアアアア!」
「マイリイイイイイイイイイ!」
っと各々の娘の名前を叫んでいる。
「さあ魔王様、これで我等、魔王様に力を頂いてクソ彼氏から娘を守ろう教の教えが伝わったかと思います! お力を我等にプリーズ!」
『プリーズ!』
フェイさんの声に合わせ、多くの声が続いている。
もしフデが賛同したらとんでもない団体が出来てしまう。
もう封印してあるから大丈夫なんだけど。
しかしフェイさんはどれ程の行動力があるのか。
三年でこんな団体をつくり出すとは恐るべしだ。
「ふぅ、ちょっと殺して来る!」
ファラさんが人数差を気にせずおりて行こうとしている。
「ちょっとファラさん、あの人数は無理です、落ち着いてください! そして殺したら駄目ですよ。それよりまずディザリアさんを助けましょう」
僕はファラさんの腕を掴んで何とか引き留めた。
「……そうね、その方が効率的かもしれないわ。いっそ全滅させてもらいましょうか」
ファラさんはディザリアさんを使う気だ。
確かに、あの人なら言われなくてもやるだろう。
本当にやられたら困るけど、とりあえず助けないことにはどうにもならない。
「え~っと、じゃあ出来る限り壁際を屈んで行きましょうか。その辺なら下から見えないと思いますし」
僕はそう指示を出す。
「ワタシ、ヤる!」
ミアさんは元気にピョンと跳んで。
「我が君、私の背中に乗せてやろう! さあ!」
グリアさんは今の話を聞いてくれなかったのだろう。
背を向けて僕が乗るのを期待している。
「ミアさん、下の人に見つかるから跳んだら駄目ですからね」
僕はグリアさんをスルーして、ミアさんに注意すると。
「ヨメ、ワカッた!」
ミアさんは手を挙げて返事をしている。
大きな声も止めた方がいい。
「大丈夫、だよね?」
僕は下の状況を覗くが、今の所は大丈夫みたいだ。
まだ娘と思われる名前の数々を叫び続けている。
胸をなでおろし、魔王像に捕まっているディザリアさんの下へ向かって行った。
僕は中腰になって歩いているのだけど。
「これ、結構疲れる」
無理して歩いていたら足がはち切れそうだった。
「我が君、やはり私に乗って行ってもいいのだぞ?」
グリアさんはあお向けになり、妙な体勢で歩いている。
確かに乗ってしまえば楽なのだけど。
ファラさんからは蔑んだ視線を感じるし乗るのは絶対に不味い。
「いや、遠慮します」
だから僕はグリアさんの提案を拒否して、四つん這いで歩くことを決めたのだった。
膝がちょっと痛いけど、今までよりはましだろう。
コソコソと移動し続け、魔王像の裏っかわ。
何千人の目がこちらの方向を見つめている。
ここで下手に動いたら、すぐに見つかってしまうだろう。
フデとディザリアさんを同時に助けるか、それとも一人ずつ助けるか……。
「私とミアでディザリアを助けるから、あんた達はあっちのを何とかしなさい」
ファラさんが言っているのは当然フデのことである。
あれを助けるのはあんまり気が乗らないんだけど、まあやるしかないだろう。
僕とグリアさんはフデを助けようとするのだが。
「我が君、私と二人っきりになってどうする気だ? そんなに私とデートしたかったのか?」
グリアさんは全然何にも理解してくれない。
何時まで頭がやられたままなんだろう?
正直僕一人の方がいい気がするが、どうせついて来てしまう。
僕は諦めて、ズリズリとほふく前進して行った。
クー・ライズ・ライト (僕)
グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)
デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)
フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)




