ええ、魔王だって!?
僕はボーナスが貰えないことに泣き崩れるが、二人は慰めてくれている。
まだ保護者様に会うことが出来ればと、僕は涙を拭いて立ち上がった。
町に戻り報奨金を貰った僕達は、保護者様の下へ向かう。
しかしそこは金が無さそうな孤児院で、肩を落とした僕。
だが鎧を買ったのは別の人物らしく、風邪をひいたというその人物の下へ行くことに。
何とか家に入り込んだ僕達は、料理にありつくことに成功した。
「おい起きろ」
そう言われてかなりの強烈なビンタを食らった僕は。
「ふぐぁっ!」
あの青年に思いっきり叩き起こされた。
まだ寝ぼけていたから辺りを見回して、ここが眠っていたアパートだと思い出す。
しかし、子供二人の姿は見えない。
先に帰されたのだろう。
「何するんです、すごい痛いじゃないですか」
僕は怒るのだけど。
「俺の懐の方が痛いんだよ! 見ず知らずのお前に何しにメシをご馳走しなきゃいかんのだ!」
どうやら風邪も治ったようで元気に怒っている。
あの二人の薬が効いたのだろう。
しかし、僕にも言いたいことはあるのだ。
「そこはほら、同行した二人を護ってあげたお礼ですよ。僕が居なきゃ危なかったんですからね。レベル三でレベル二十二のキャンドルリザードとか無謀でしょう! あなたチームメイトなんでしょう? もうちょっとちゃんと教育してください!」
僕は相手の言葉に逆切れして、説教を始めた。
くどくどと続けた僕の言葉に。
「……お、おう、それは悪かったな。……でもそいつら、俺のチームという訳じゃ……」
僕の反論に、この人も怖じ気づいたようだ。
「チームメイトじゃなくても、知り合いであるなら魔物の危険度を教えるべきです! ギルドに行けば魔物の能力値とか見れますから、ちゃんと勉強させてください!」
勝手に上がり込んでメシまで食って説教するとは、我ながら無茶苦茶である。
しかし、二人の今後の為にも言わなければならないのだ。
「で、でも俺、ギルドには行けないし……」
この人は何故か目をそらしている。
まさか賞金首だったり?
そういえば見たことがある顔をしているんだった。
何処で見たんだったか……?
「ああ、思い出した。フデの人だ。あなたフデの魔王ですね!?」
「誰がフデだ! 俺はインフェニティ―・ダーク・ロード……って違ああああああう! 今のは冗談だ、俺は魔王でもなんでもない!」
この青年は否定しているが間違いなく本人だろう。
名前が長いので、やはりフデの人と呼ぼう。
「まあまあまあ、本人かどうかはどうでもいいじゃないですか。僕の為に魔王として捕まってください」
そう言って部屋の中の四隅に鉄棒を立てかけて行く。
「絶対嫌だわ! というか何だその棒は!?」
「ああ、これは気にしないでください。ただの棒なんで」
僕は適当に流して小さく呪文を唱えた。
この部屋の中ならば、なんとなく属性を絞ることもできるのだ。
「じゃっ、フデさん、炎の魔法でも使ってみてください。部屋が焼けるかもしれませんけど。あっ、雷でもいいですよ、部屋が焼けるかもしれませんけど。水浸しになっていいなら水の魔法を使ってください。それとも土でグチャグチャにしますか?」
僕は魔法を使うことを進めると共に、その危険性を指摘した。
「誰がやるか、それに俺はフデじゃない! 魔王じゃないって言っているじゃないですか。もう勘弁してくださいよ、お願いします、もう二度としませんから!」
よく分からないが凄く効き目があったらしい。
口調がマイルドになって頭を下げ始めた。
もう認めているようなものだ。
「まあ落ち着いてくださいよ。ギルドだって反省する人に酷いことはしませんって」
そう、魔王であってもギルドの扱いは変わらない。
酷いことにはならないだろう。
ギルドとしては。
「そうかな!?」
フデの顔が明るく変わる。
「はい、苦しみも与えず一瞬で殺してもらえますよ」
しかし僕は、その先のことを伝えた。
残念ながら国に喧嘩を売ってしまったフデに慈悲はない。
引き渡されて処刑されるだろう。
「ぎゃああああああ、いやだあああああああああ! 若気の至りだったんや。堪忍して。堪忍してええええ!」
若気の至りで国を滅ぼそうとしないでほしい。
だがこれ以上追い詰めるのは危ないだろう。
あんまり追い詰めて僕の口封じとか考え出すと危ないし、そろそろフォローをいれるとしよう。
「まあ安心してください。僕はギルドに顔がきくので色々と助けてあげられることもあるでしょう」
僕はそれっぽいことを言って丸め込んだ。
「本当に大丈夫かな!? 俺もう逃げ回るのは嫌なんだよ!」
フデも随分精神をやられているようでビクビクしている。
本来はもう少し魔王っぽかったのかもしれない。
「はい、大丈夫ですきっと」
たぶん一割ぐらいの確立はあるんじゃないだろうか?
「でもなんで魔王なんてやろうとしたんですか? 人を襲ったら駄目でしょう?」
一応理由を聞いてみるも。
「仕方なかったんだ。だって魔王って名前が格好いいし、最強って響きがいいだろ? でも魔王じゃお金が入って来ないんだよ。だって魔王って職業じゃないし! 野草や虫を食う日々とか稀に野生動物を食べられても、美味しい料理じゃないんだよ? 俺は耐えられないんだ!」
まあ失敗した魔王様はこんなものだろう。
しかし、野草や虫を食べざるを得ない気持ちには理解ができる。
「あなたの気持ちは分かります! このお弁当を見てください!」
僕はまだ手を突けていなかったお弁当の一つを取り出した。
そう、野草しか入っていないお弁当だ。
「こ、これはまさか、同士!?」
そんなお弁当を見て、フデは僕を同士と呼んだ。
「僕は現在進行形で貧乏です!」
僕としては全然嬉しくないのだが、それでも言い切って相手の心を掴む。
「うおおおおおおおおおおお、俺と友達になってくれ!」
しかし効き目があり過ぎて親近感を沸かせてしまったらしい。
「貧乏友達なんて嫌ですよ! 抜け出せなくなったらどうするんですか! それより一つ聞きたいことがあります。フェイさんという人を知っていますよね?」
まあこの人のことは今は置いとくとして、フェイさんのことを聞かなければならないのだ。
「フェイ? ああ、あの人か。三年前に行き倒れているところを助けてなぁ。悪人に攫われた娘を助けたいからって俺の装備を貸してやったんだ。今頃どうしているかなぁ……」
フデは、遠い目をして過去を懐かしんでいる。
あの人が賞金首になっているって知らないのだろうか?
「あの人、自分は魔王の手下だって言って町で暴れてましたよ。魔王の名前が広まって良かったですね。あっ、それと娘のファラさんは普通にギルドで働いてます」
僕はフェイさんがやらかしたことを告げた。
「ぎゃあああああああああ! 俺の悪行が勝手に広まっていくううううう!」
頭を抱えているこの人には、なんとなくシンパシーを感じる。
しかしいくら反省してても、この人は国を襲ったテロリストで大悪人だ。
もう聞くことも聞けたし、僕の生活費になってもらおう。
「じゃあ僕、用事を思い出したので帰りますね。大丈夫、ギルドには上手く伝えておきますよ! 僕に任せてください!」
僕は胸をドンと叩き、部屋から出ようとするが。
「待て、お前まさか、俺のことを売ろうとしてないよな?」
背後から声をかけられた。
「そんなことはないですよ。僕達は同士じゃないですか! 同士の言葉を疑うんですか!?」
同士という言葉を全面に出し、否定したのだけど。
「だからこそだ! お前は金の為になんでもする。例え俺に恨まれようと、明日の食糧が欲しいのだろう!」
流石同士と言うだけのことはある。
フデも僕のことを理解しているらしい。
気付かれてしまえば、魔王から逃げ出すのは困難かな?
「ふう、落ち着いて話し合いましょう。確かに魔王である人に慈悲はないですが、本当に可能性はあります。僕のチームにも魔族の人が居るんですが、その能力を知る為にかなりの減刑を受けていますから。魔物を操るという力を国に役立てるというなら可能性もあるでしょう。ですから大人しく僕に捕まって報奨金をください!」
僕はフデ相手に本音をぶちまけた。
「くっ、本音が出たな! しかし可能性があるならかけてみるべきか? いやいやでも、いやいやだがしかし……」
フデ本人も迷っているようだ。
そして暫くして答えが出たようだ。
「分かった、お前にかけてみよう。危なくなれば逃げればいいのだしな」
フデはそう納得して、僕と共にギルドへ向かうのだった。
クー・ライズ・ライト (僕)
グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)
デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)
フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)




