ギルドとしての対応(二章終了)
ディザリアさんの攻撃から目を覚ました僕。
ナオという少年に介抱された。
彼はリセルの弟で、ディザリアさんのチームの人である。
僕を襲ったあの男達は連行されているのだが、そこにまたフェイさんが現れたのだった。
魔物を使いギルドを襲うが、どうやら連行した男達を狙っていたらしい。
同じ類の人間同士気が合ったのだろうか?
しかしそれも冒険者達に倒され、僕はご飯を食べる為にギルドへ入った。
今僕は、ファラさんに餌付けされるように、運ばれてくる料理を必死で食べ続けている。
来たのはビーフサイコロサラダと野菜たっぷりのスープ、こんがり焼けた骨付き肉に、こだわりの手ごねパンだ。
ちなみにこれが二週目である。
しかし僕も人間だし、いずれ限界が来ることは分かっているのだ。
だからこそ吐き出す一歩手前でキッチリ留めなければと、肉の欠片ろチョビチョビ口にふくんだり、合間合間にスープを飲み込み、ほんの少しの隙間も埋めていく。
そして一時間が経過した。
冒険者や、僕達戦力調査部に努める人間にとって、食事というものはゆっくりと取ることはない。
なので。
「あのさ、何度も言うけどもう帰りたいんだけど」
奢ると言った手前、待ち続けていたファラさんも、もう限界が近いようだ。
そして隣に座るミアさんは、椅子に座りながら眠っている。
だからと言って、手を緩めるわけにはいかない。
「あと一皿、あと一皿だけお願いします!」
僕は今後の生活のために、ファラさんに必死に頼み込んだのだが。
「じゃあそれで終わりだから。もしそれ以上ごねる様なら、全部あんた持ちにさせるわよ」
最後だと告げられてしまった。
だが僕の腹も充分だろう。
終わりにするには丁度良い。
「はい、それで終わりにします!」
ということでお腹いっぱいに満たされた僕は、最後の一皿を注文し、来るのを待ている。
「じゃあ私はミアを連れてくから、代金はここに置いておくわよ」
ファラさんはもう帰るらしく、テーブルに代金を置いて、ミアさんを担いで帰って行った。
「ごちそうさまでした!」
僕は後ろ姿に挨拶をすると、ファラさんも背中を向けながら手をふっていた。
一人になった僕は、ウェイトレスが持って来た肉と引き換えに代金を支払い、安心して肉にかぶりつく。
しかしその一口目で、遂に腹の限界がおとずれてしまったのだ。
例え限界だとしても、金を払った料理を置き去りにする訳にはいかない。
僕は汚れるのなんて慣れたものだといわんばかりに、口で噛り付いたまま家路に帰って行く。
町行く人は確実に僕に振り替えるが、気にしてはいられない。
「ふぐぅ、ふぐぅ!」
もう少しで家に着く。
帰ったら切り分けて五日分にしよう。
腹ははち切れんばかりにいっぱいで、明日の食糧も確保できた。
でも。
「うぷッ」
動くと少し気持ち悪い。
しかしそれも、食事を腹いっぱい食べられた幸せに比べれば、全然大したことはないのである。
僕はこの幸せをかみしめて、大満足でこの日を終えた。
次の日、あれほど膨れていたお腹もすっかり落ち着き、体調も万全だ。
しかし朝がくればお腹は減ってくる。
でも大丈夫、僕は昨日の残りの肉と余っていた野草をモシャモシャ食べ、元気に出社して行くのだった。
で、そんな僕一人がスラーさんに呼び出されている。
昨日の一連の騒動のことだろう。
この頃こんなのばっかりだ。
「大体の話は聞いていますが、一応報告をお願いしますね、ライズ・ライト君」
スラーさんは何時もの場所に座って僕を見上げている。
「はい、昨日あれから……」
僕は昨日のことを詳細に話し、作ってあった資料を渡した。
ミノタウロスゾンビとオークゾンビの物、そしてこれがグリーンデビルの物である。
名前 :グリーンデビル
レベル:14
HP :90
MP :40
力 :54
速 :43
大 :130~200程
危険度:3
技 :ツルの振り回し。自動治癒。養分吸い取り。
考察 :緑色の植物の魔物。
植物のツルが絡まって人の形状をしている。
振り回されるツルの攻撃は、範囲も長く当たるとムチのように痛い。
ツルの先からは人の体液を吸い取り、栄養を得る。
植物の回復力は相当に高いものだ。
しかし体の中央にある核を叩けば、その力も失われる。
注意 :核の存在を知らなければ苦戦は必至。
冒険者同士で情報を広めよう。
スラーさんはその資料を受け取るが。
「それで、君はなぜそんなに嬉しそうに話すのでしょうか? まさか町が襲われたのがそんなに嬉しいと? 君、まさか魔王軍と繋がって……?」
その目が鋭く光る。
自分でも今気づいたのだけど、僕の顔はそうとう喜んでいるらしい。
「ち、違いますよ! 僕が喜んでいるのは、お腹いっぱいご飯が食べられて嬉しいということだけで、他のことは一切ないです!」
変な勘違いをされても困るから、僕は必死で言い訳をしている。
「食事やお金で懐柔されたということも?」
再び輝くスラーさんの眼光。
「いやいや、そこはないです! ギルドの怖さは知ってますから!」
しかし僕は知っている。
三年勤めたこのギルドが、魔王辺りに結構冷酷だということを。
「ふむ、確かにそんな人が戦力調査部に居たとなれば大事です。徹底的に拷問して情報を引き出したあげくに餓死でもさせられるでしょうね」
スラーさんは僕に揺さぶりをかけるように、口撃を仕掛けて来る。
「だから違いますって。変な冗談はやめてくださいハハハ」
当然僕には魔王と親交はない。
「冗談を言ったつもりはないのですけど。まあ、一応私の部下ですし、信用はしておきましょうか」
一応信用されたのだろうか?
しかし油断させておいて、影からコッソリ調べられるだろう。
そこで変に疑いをもたれれば……。
「ハハハハ……」
僕は冷や汗を垂らしながら、愛想笑いをするしかなかった。
「まあそのことは良いとして、今日の仕事の話をしましょう。君も分かっていると思いますが、ラビス君の父親のことです」
スラーさんが言っているのは、ようはフェイさんのことである。
「あ、はい。まあそうでしょうね」
僕はうなずいた。
一度目はまだ良かったのだけど、二度目の襲撃は魔物を使ってしまった。
半信半疑だったギルドも動くし、もう言い逃れはできないだろう。
「本当に魔王の手下である可能性が高く、見つけ次第捕獲対象となりました。当然ですが、生死問わずでです」
あそこで逃げなければ、もう少し融和的にいけたのだろうけど、残念ながらもう無理だ。
今後は賞金首として、ランク付けされるかもしれない。
「しかし、今回は身内の肉親が関わっているのも事実。ギルドとしても放っておける問題ではないです。もちろんラビス君を切れという意見もありました。しかし、彼女のような優秀な人材を無くすわけにはいけません」
戦力調査部にも何かしらの動きをさせるということだろうか?
それにしても。
「あの、僕の時と物凄く対応が違うんですけど……」
僕としては少し納得できないところだ。
「それは君の気のせいでしょう」
スラーさんはお茶を口に含み、顔を少しそらしている。
そう言われてしまったらどうしようもない。
「そうですか……」
残念だが、僕の扱いとしてはそんなものだろう。
「まあその話は置いておいて、君達のチームで追い駆けてくれという話ですよ。ラビス君が捕まえてくれればギルドのメンツも立ちますからね。もしかしたら心変わりもありえるかもしれません」
「はい、わかりました!」
この機会はファラさんにとっていいものだと、僕は喜んで返事をした。
「そしてもう一つ、君には重大な任務があります。もしもラビス君が向う側に寝返るようなことがあれば……ちゃんと私に報告してくださいね」
スラーさんは笑顔を見せているが、その深層は分からない。
「はい、分かりましたスラーさん。では今日の仕事に行って来ますね」
「ええ、お気を付けて行ってらっしゃい」
僕は返事をして、この場を離れて行く。
これにより、戦力調査部にも新たな目的が出来たのだ。
こうして僕達は、魔王側近であるフェイさんの調査を行うことになるのだった。
「っていっても、簡単に見つからないんですけどね~」
という訳で僕のチームは一週間ばかり探しているのだけど、一向に見つからないのである。
まあ、そんな簡単に見つかるのなら、誰も苦労はしていないのだけど。
「お父さんどこに行ったのかしら。はぁ、面倒だわ」
ファラさんは、本当に面倒そうに肩を落としている。
「ワタし、オナカヘッた!」
ミアさんは何時も通りお腹が減っているようだ。
「僕もお腹が空きました! ご飯を食べたいです!」
だから僕もお腹が空いたことを打ち明けた。
「まったく、あんた達は食欲しかないのかしら? はぁ、もういいわ。じゃあご飯食べましょうか」
別に魔物が出ようが魔王が出ようが関係ない。
僕達の何時も通りは続いて行くのだった。
クー・ライズ・ライト (僕)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)
デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)




