ローザリアギルドの受付嬢
オークを退治した僕達は、フェイさんを探す為にもう一度オークの巣へ入って行く。
色々と見て回るのだけど、フェイさんの姿は見当たらなかった。
カギが壊れたあの場所を開けて逃げてしまったようだ。
あの人はシーフか何かのスキルでも持っているのか?
他の場所も探すがやはり見つからず、僕達は町へ帰って行く。
「……ってことでよろしくお願しま~す」
町に帰った僕達は、夜のギルドへ報告をしている。
僕達が働いている戦力調査部は早めに業務を終えるが、ギルド自体は深夜まで営業しているのだ。
冒険者限定で料理や酒も提供しているから、夜も相当な人数がここにたむろしている。
むしろ今からが本番だろう。
「はいは~い、まっかせて~!」
返事をしたのはギルドの看板娘的な存在のリセル・ラヴ・キリュウだ。
エメラルドのような長い髪が特徴的で、そのスタイルも男なら目を引くものがある。
客をおびき寄せるように薄い衣装を身にまとい、笑顔を振りまいている。
ミトラの町に居るディーラさんとは、また違った魅力があるのだろう。
本来なら長い行列が出来るほどの人気者だけど、僕は丁度よく出て来たところを呼び止めた。
その性格も評判がいいようで、このギルドに来る冒険者は、独り身なら大体彼女の所に行く。
僕とは部が違うからあまり話したこともないんだけど、戦力調査部にも噂だけは流れて来ている。
まあどれも取るに足らないようなもので、可愛いだの、ステキだのと、うちの相棒も見習ってほしいとかだ。
「ライズ・ライトさん、またね~!」
そのリセルが手をふるから、僕も手をふり返すのだけど、ギルド内に居た冒険者達から物凄い目で睨まれてしまった。
あまり長居をするとからまれそうだ。
もう用事も済んだし帰るとしよう。
「じゃあ行きましょうか二人共」
僕はファラさんとミアさんに声をかけるのだけど。
「ワタシ、ニク、タベタい! ジュル……」
ミアさんは、このギルド内の匂いにやられてしまったらしい。
口から垂れるヨダレを手でぬぐっている。
「しょうがないわね、じゃあ何か食べましょうか。リセル、注文もついでにお願い。え~っと、ミアにお肉と、私は……」
ファラさんは料理を注文しようとしている。
「えっ、ここで食べるんですか!? 僕としてはお勧めできないんですけど。ほら、ミアさんって食事も管理されてるじゃないですか」
じつは結構やぶったりしているのだけど、別にルールがどうだからと止めた訳ではない。
更に女連れだと知って、冒険者の皆さんから殺気がダダ洩れているのだ。
「はぁ、今更何言ってるの? そんなのしょっちゅう破ってるじゃない? 良いから持ってきちゃって。あ、クーの分もお願いね」
ファラさんは、僕の分まで注文してくれた。
だったら多少の居心地の悪さぐらいは我慢しなければ。
まあでも後で払えとか言われたらかなわないし、ちゃんと確認しとこう!
「ファラさん、それはもちろんオゴリなんでしょうか!?」
「まあちょっと迷惑かけちゃったし、今回はオゴッてあげるわよ! 今回だけね! じゃあ頼むはねリセル」
僕はファラさんの答えに、グッと拳を握り込み喜んだ。
「は~い、りょうか~い! じゃあ適当に席に座っててくださいね。すぐ持って行きますから~!」
リセルさんは、奥に居る料理人に注文を届けている。
僕達は空いている席に座り注文した料理を待つのだけど。
「おい兄ちゃん、リセルとどういう関係だ? あんな風に手をふられやがって! まさか二人も女をはべらせていてリセルまで狙う気なのか!?」
でっかい坊主の人と。
「ちょっと話があるんだ。外に出てもらえないか?」
モヒカンの男が僕の左右に陣取り、ドンとテーブルを叩いた。
ここに来ないまでも、他にも僕のことを睨んでいる男は多いようだ。
しかしこんな人達を相手にしているカロリーはない。
今僕に必要なのは、これから運ばれてくる料理なのである。
「そんなものは知りません! 僕の食事を邪魔しないでください!」
僕は獣のようにシャーっと叫び、二人の男を威嚇した。
でも向うは怯んだりはしてくれない。
「嫌だというなら力づくだ」
坊主が僕の右腕を。
「お話しようじゃないか」
そしてモヒカンが左腕を掴み立ち上がらせようとして来る。
「嫌ですううううううううう!」
そうはさせまいと、僕は固定されたテーブル裏に膝を当てて耐え続けた。
これも全ては食事の為である。
ちなみに、向かいに座っている二人は助けてくれない。
「ヨメ、ガンバれ!」
「ふう、私達の邪魔をしないでね」
ミアさんはなぜかワクワクしているようだし、ファラさんは我関せずと言った感じだ。
「ぬおおおおおおお!」
「このおおおおおおおお!」
この二人の力に。
「め、めしいいいいいいい!」
生命力を全開にして頑張って耐え続けているのだけど、僕が動かないと知ると相手側に加勢が入った。
「俺も手を貸すぞ!」
「お前にリセルちゃんは渡さああああああん!」
三人四人と増え続ける男達に力負けして、僕は椅子から引き離された。
全員リセルさんのファンなのだろう……。
「は~い、受付はこちらで~す! ちゃんと並んでくださいね~!」
その本人は、ギルド受付で関わっていない冒険者を相手に仕事をしている。
出来れば助けてほしいのだけど。
そして外に引きづられて行く僕の目に。
「おまたせしました。お料理で~す!」
とギルドのウェイトレスさんが料理を運んで来ていた。
あれはファラさんが僕の為に頼んでくれたご飯である。
「ニク、キター!」
それを見て喜んでいるミアさん。
「じゃあ食べましょうか。クー、早く帰って来ないとミアに食べられるわよ」
僕のことよりご飯が先だと、食事に手を突けるファラさん。
「にゃあああああああ、僕の食事がああああ!」
段々遠ざかって行く食料を見つめ、僕の目が涙にぬれた。
そしてギルドの外に運ばれた僕は、人通りのないギルドの裏手へと連れて行かれたのだ。
周りには十人ぐらいはいるだろうか?
後衛の僕には勝ち目はない。
しかし食事の為には戻らなくてはならない!
僕はそう決意して、拳を構えながら一目散にギルドへ駆けこんで行くのだが。
「待てコラ!」
坊主の人に首根っこを押さえられてしまった。
「何故僕の食事の邪魔をするんです!」
僕は必死に抵抗するも。
「お前がこのギルドの掟を破ったからに決まってるだろうが! 二度と出来ないようにギルドの教えを叩きこんでやるよ!」
モヒカンの人がおかしなことを言っている。
ギルド員の僕が、なぜギルドの掟を冒険者に教えられるのだろうか?
「殴ったりしないでくださいね。僕はそんなに強くないですから。もし殴りたいというのなら、僕にその分のご飯をくれると嬉しいです! それならむしろ喜んで殴られてあげますよ!」
僕は真実の気持ちを打ち明ける。
「はぁ、何で俺達が飯をおごらなきゃならんのだ!」
坊主人が疑問を言うが。
「それは僕のご飯を邪魔したからです!」
これは正当な要求である。
もう今頃はなくなっていてもおかしくない。
いけない、また涙が出て来た。
「お前の飯の問題なんてどうでもいいわ。それより、リセルちゃんのことだよ! このギルドの冒険者に登録している以上は、勝手に喋りかけることは許されていない! いいか、二度目はないぞ。もし次勝手にしゃべったりしたら、五百人からなる男冒険者が黙っちゃいないぞ!」
坊主の男が怒鳴り散らしている。
その後ろからも、そうだそうだと仲間の男達が大合唱していた。
「ではこれにサインをしてもらうぞ。嫌がっても無駄だ、無理やり押させてやるからな」
モヒカンの男が取り出したのは、何か色々書かれた薄っぺらい紙だった。
「えっ、なんですそれ!? 変な契約とかしたくないんですけど!」
僕は嫌がって手足をバタバタするのだけど、大勢に押さえられて動かない。
「ふっ、これが何かって? よく聞け、これはリセルちゃんのファンクラブに入るための大切な契約書だ!」
「これにサインを書けば、お前も立派な会員として、いずれリセルちゃんと話せる機会を得られるのだ!」
「どうだ、嬉しいだろう! もちろん拒否権はないぞ、これはこのギルドの掟だからな!」
次々と、男達から決められたようなセリフが発せられる。
何かしらのレッスンでもしているのだろうか?
これに入ってこの騒ぎが終わるのなら構わないのだけど、一応は中身を確認しておきたい。
「あの、もう暴れないからその契約書を読ませてください」
僕がそう申し出ると。
「ふっ、いいだろう」
モヒカンの男は僕に契約書を渡した。
僕はそれを見るのだけど。
「えっ、なんですかこれ?」
第一条と書かれた場所からおかしかった。
週に一度ある集会には必ず参加しろと書かれ、リセルちゃんに気付かれないようにのぞくことと続けられている。
お風呂を見れるのは上位数名だけだとか、靴下を持ち変えるのは禁止とかだ
ずらっとそんな言葉が並べられ、最後の一文に、『もし抜けたら何をされても良い』なんて物が書かれている。
これは決してファンクラブじゃない。
そう名乗っただけの別の何かだろう。
こんなものに関わったらギルドから敵認定されかねない。
というか何故放っておかれているのか。
「こんなものにサインなんて出来ません!」
僕は契約書を地面に叩きつけた。
「なんだとおおおおおおおおおお!」
「ゆるさあああああああああん!」
その行動に怒る十人もの男達。
この状態からどうやって脱出しようかと悩む僕に、助けの手が現れる。
「アーッハッハッハ! ついに尻尾を掴んだわ。さあリセルのストーカー集団め、全員全部全滅よおおおおおおお!」
きっと僕は助かるだろう、ボコられた方がマシなダメージと共に。
「ぎゃああああああ、ディザリアさんが出たああああああ!」
逃げようとするけど、僕は押さえられたままである。
何が起こっているのか分からない男達だが、相手は説明なんてしてくれない。
敵と判断されれば魔法を撃って来るのだ。
「僕は敵じゃないですよおおおおおおおおお!?」
「スクウェア・シグマ・ライトニング!」
ディザリアさんは、僕の声なんて聞いてはくれないのだ。
バチバチと広がる雷の魔法が。
「のおおおおおおおおあああああああああああ!」
「わぎゃああああああああああああ!」
「しょびあああああああああああああああ!」
っと僕達全員を巻き込んだ。
「アーッハッハッハ! 全滅ううううううううううう!」
そんな声を聞きながら、ここに居た全員が昏倒したのだった。
クー・ライズ・ライト (僕)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)
デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)




