ミノタウロスゾンビ、略してミノゾン
地下通路を再び調べ始めた僕とミアさん。
魔物を確認しながら入り込んだ魔物を倒している。
カギが壊れた場所に行き、なんとかカギ穴からカギを取り出す。
そしてまたミノタウロスが倒れていた場所に向かう。
しかしそこには誰かが居る気配がした。
僕はそれを確認すると、戦いの準備を進め、何者かを発見する。
それは、護送されたはずのフェイさんで、ミノタウロスをゾンビにして襲わせてきた。
「ワタシ、キた!」
ミアさんは僕の横を超速で走り抜け、地面に足を滑らせながらミノタウロスゾンビの前に立ちはだかった。
「ありがとうございます。ミアさん、あれの相手をお願いしますね」
僕はミノタウロスゾンビを指さした。
というか名前が長いな。
ミノタウロスゾンビを縮めてミノゾンにしよう。
「ギギ!」
ミアさんは返事をして、早速走って行く。
まだ動かないミノゾンに先制攻撃を与えている。
全身に攻撃を続けるが、死んでいるために痛がったりしてはくれない。
そして重要なことに、自動治癒は消えている。
だから僕の魔法は意味がない。
……あ、そういえば魔法を一つ覚えたんだった。
あれを使えば……?
二十増えた所で、僕が立ち向かえる未来が見えない。
更に二回重ねれば六十にまでは増やせるけど、ミアさんがその分弱体化してしまう。
それは吉と出るか、それとも凶と出るか……。
答えは出ない。
「やってしまうのだミノタウロスゾンビよ。二度と使えないように、奴の大事なところを叩き潰してやるのだ!」
フェイさんの命令を受け、ミノゾンが動き始めた。
攻撃は前と変わらずメイスを使っているが、威力としては上がっているようだ。
地面をえぐる量や、壁を破壊する量が相当増えている。
しかしその分動きが鈍い。
ミアさんから能力値を奪えば確実に避けられそうだけど、僕が早さを増しても勝てるわけでもない。
それよりは僕の力を増やして攻撃に回る方が……。
「ぬおおおおおおお!?」
僕の頬に大きなメイスの風圧が当たっている。
あまり考えているとやられてしまいそうだ。
「ギャギャギャギャギャ!」
その間にもミアさんの攻撃は続く。
普通なら致命傷になりそうな首への攻撃とか、元々あった傷を抉るような一撃とか。
しかしどれほどの攻撃をしても、ミノゾンは動きを止めてはくれない。
ゾンビだから痛みがないんだろう。
フェイさんを倒したら止まるか?
いや、例えフェイさんが気を失っても、止まれという命令がなければ動き続けるだろう。
いちいち動きの命令をしていないし。
やはり倒すしか手がなさそうだ。
「ミアさん! 肉や健を完全に断ってしまえば動けなくなるでしょう。狙ってみてください!」
「ヨメ、ワタシ、ヤルぞ! ギギギギギ!」
ミアさんは僕の指示を理解し、ミノゾンの脇を重点的に狙っている。
しかし相手の肉は分厚く、そう簡単には断ち切れないようだ。
「うはははは、何時まで逃げきれるかな? ミノタウロスゾンビ、そこだ、やれええええ!」
ミノゾンは、ミアさんのことなんてまるで無視して僕だけ狙いを定めている。
その攻撃には緻密さなんてまるでないが、大胆に振りかぶられる攻撃を避け続ける内に、僕は壁際へと追いつめられてしまった。
「クッ、逃げ場が……」
「さあ、クー・ライズ・ライトオオオオ、終わりの時間だああああああ!」
それをニヤニヤした顔で喜んでいるフェイさん。
「ヨメ、タスケる!」
ミノゾンの肩に乗って、その肩口を攻撃し続けるミアさん。
しかし相手は止まらない。
逃げ場はなく、僕の速さでは避けきれないだろう。
「さあ、振り下ろせえええええ!」
ミノゾンはフェイさんの命令を受け、両腕で大きなメイスを横へ構えた。
壁ごと削り取る気だろうか?
これを避ける為には、もう魔法を使うしかないだろう。
急がなければ。
「結界の内にいる……」
僕は意を決して魔法を使おうとするのだけど、見上げたミノゾンより上にある天井の穴から、何者かが落下して来ていた。
あれは……?
「お父さん、調子に乗り過ぎよ! 退いてミア、私がやるわ!」
「ウン!」
ファラさんが助けに来てくれた!
たぶんフェイさんを追って来たのだろう。
肩に乗っていたミアさんが飛び退き、傷がある場所へとファラさんの剣が振り下ろされる。
「はあああああああああ!」
ザンっと食らわせた重力を味方につけた一撃は、ミノゾンの肉を大きく斬り裂いた。
動きを司る肉を断絶され、ミノゾンのメイスはあらぬ方向へ向かっている。
「ぬあああああああ!?」
僕の頭の上を通り過ぎ、壁を削った破片を浴びてしまう。
ダメージを食らってしまったけど、どうやら助かったようだ。
「ファラアアア、そんなゴミクズを庇うとは、お父さん許しませんよ!」
フェイさんは両手を広げ、大声で叫んでいる。
そんなに僕が嫌いなのか?
「折角更生するチャンスをあげたのに逃げるなんて、もう一度お仕置きしてあげようかしらお父さん!」
ファラさんは僕の前に立って、ミノゾンと対峙している。
「ありがとうございますファラさん。ちょっとピンチだったんですよ」
「クー、挨拶はいいから、ちゃんと手を貸しなさいよ。結界は作ってあるんでしょうね?」
ミノゾンを見据えながら、僕に聞き返してきた。
「はい、結界は作ってあります。それと新しい魔法覚えたんで使ってみてもいいですか?」
僕は一応魔法のことを教え、許可をもらおうとするのだけど、ファラさんの返事が来る前にミノゾンの攻撃が来た。
それはまた大きく外れるが、強引に腕をねじ繰り回し、軌道を変えて向かって来る。
「うわわわわ!」
ミノゾンのメイスが轟音を立てて、後方の壁を突き破る。
身をかがめてやり過ごしたけど、先ほどまで居た場所にファラさんの姿が見えない。
まさか潰れて?
「この程度、私には効かないわよ!」
僕が心配するまでもなかったようだ。
メイスが埋まってしまって動けないミノゾンの腕に、ファラさんは腕に飛び移っていた。
その剣は下段構え、振り上げたのは今までダメージを与えていた肩の部分だ。
「アイアン・スラッシュ!」
そしてミノゾンの繋がっていた腕を完全に断ち切った。
「…………」
やはりゾンビだし何の反応も見られないが、メイスを持つ手がなくなってしまえば攻撃範囲が激減だ。
しかし、そう上手いことにはならないらしい。
ミノゾンは斬られた腕を逆の腕で掴みあげ、強引に引っ張り抜こうとしている。
もしそうなれば、攻撃範囲はさらに増え、躱し続けるのは難しくなるだろう。
「ファラ、邪魔をするんじゃあない。そいつを殺せないじゃないか!」
フェイさんは僕を睨みつけている。
「誰が殺させるものですか。クーは大事な相棒よ! ……お金はないけどね」
ファラさんが失礼なことを言って来る。
「ヨメ、カネなイ。イツモどオリ!」
ミアさん、何時も通りとか嫌なんですけど。
「お二人共、それは言わなくても良いんじゃないですか? それに僕は後たった二ヶ月で借金を返せるんです。そしたら通常の暮らしに戻れるんですよ!」
僕は二人に今後の展開を打ち明けた。
「ふう、それは無いわね」
「ナイな!」
ミノゾンに攻撃を続けながらも、二人が僕の計画を否定している。
ファラさんはともかく、ミアさんは絶対分かっていないだろう。
そんなことを気にしているよりは、動けるようになる前にミノゾンを倒さなければ。
「お二人共、魔力を使わせてもらいますよ。結界の内にいる仲間の値を集めよ。アディション・フィールド!」
僕は二人の答えを聞くことなく魔法を発動させた。
二人の魔力値が集まり、結界の内側に四十という数字が落ちる。
「うっ、なんか微妙な感覚がするわね」
「ウゥ、ワタシ、ヨメにクワレる……ウゥゥ」
二人共なれない感覚に戸惑っているようだ。
「もう少し我慢してください。まだ続けてもう一つ行きますよ! 体力値を頂きます!」
僕がパンと手を叩くと、二人の体から体力値を吸い上げる。
「……うくッ!」
「ウゥゥゥゥ」
またも苦しがるファラさんとミアさん。
しかし、落ちていた四十という値は、八十へと変化した。
僕がミノゾンにダメージを与えるには、相当力をあげなければならない。
七十を力の値へ、残りの十で素早さを上げる。
「私を吸うだなんて、クー、後で殴らせてもらうわ」
「ワタシ、クワレた。ワタシもタベる!」
ファラさんとミアさんに後で反撃されそうだ。
「どっちも嫌ですからね! それより早く倒しちゃいましょう!」
僕はお断りして、ミノゾンに向かって行く。
「……ッ貴様ああああああ、ファラを吸ったな!? 吸ったなあああああああ!? 許さあああああああん!」
フェイさんは吸ったことに怒っている。
「いや、別に魔力と体力だけですし。変な風に言わないでください!」
当然僕も反論する。
しかしそもそもフェイさんが襲って来なければ僕だってファラさんを吸わなかった。
自分が悪いことを自覚してほしい。
いや待て、こんな言い合いに付き合っていたらミノゾンが自由になってしまう。
これはフェイさんの時間稼ぎだと僕は考え、急ぎ攻撃を開始した。
「行くぞおおおおおおお!」
拳を握り走る。
「はあああああ!」
もう剣を振り続けているファラさん。
「ウィーアー・グリーアー!」
魔法を使って更に速度を上げるミアさん。
既にボロボロのミノゾンは、僕達の攻撃により爆散したのだった。
だが、フェイさんはまだ諦めてはいないらしい。
「ミノタウロスゾンビが倒されるとはな。しかああああし、この場所にはいくらでも素材があるのだあああああ! オークゾンビ達よおおおおお、動きだせええええ!」
フェイさんの言葉により動き出したのは、オークの一体ではないようだ。
種族単位で命令を聞かせられるようで、ここに倒れていたオークの全てが立ち上がる。
十、二十、三十……四十位は居るかもしれない。
ミノゾンよりは弱いと思うけど、この数は相当大変だ。
「これは無理です! 二人共、出口に退避しますよ。そこにアーリアさんとグリアさんが居ますから!」
僕は撤退を指示する。
外の二人と合流したなら勝ち目があると思ったから。
「ギギ!」
ミアさんは返事をし。
「お父さんを自由にさせるのは口惜しいけど……分かったわよ! 出ればいいんでしょ!」
ファラさんも状況を理解した。
そして僕達は出口に向かって走りだす。
クー・ライズ・ライト (僕)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)
デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)
ファラさんが使ったアイアン・スラッシュは、ウェポンテイマーの技の一つです。




