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噂をすれば影が差した!

 夜となり、僕と父さんは魔物が出て来るのを待っていた。

 そこに現れたのは、何の因果かファラさんのお父さんに化けた魔物だったのだ。

 僕は陣地に引き入れようと話しかけるのだけど、そこにファラさんと本物が現れた。

 ひょんなことで何方が本物か分からなくなり、一方を父さんに任せ、もう一方を僕とファラさんで追い駆けた。

 追い掛けて来たのが僕達だけだと知ったお父さんは、その正体を現す。

 大きなカメレオンとなり、僕をあざ笑っている。

 しかしそんな油断した奴に負けるわけがなく、戦いは僕達の勝利で終わったのだ。

「あんた、本当は強かったのね。いいところばかり持って行って、一度私と勝負しなさい!」


「いや違います。魔法を使って能力値を変化させたんですよ。僕が普通に戦ったって勝てる訳がないでしょう。無駄な争いなんてしてないで父さんの方へ行きましょうよ」


「もう魔物は倒したんだから別に心配なんて要らないでしょう。じゃあ、行くわよ!」


「ちょおおおおおおおおおお?!」


 ファラさんは剣を構えて襲い掛かって来た。

 さっきの力を見たから僕の言葉なんて信用していないのだろう。

 もう力を使い切り弱々になっている僕は、ファラさんにより簡単に叩きのめされてしまった。


「……あのさぁ、なんで本気を出さないのよ。まさか私が女だからって手加減してるの!?」


「だから違うって言ってるじゃないですか! 僕の力は測量士って戦闘職業のもので、少し前に見せた石の数値で能力値アップを使うんですよ! だから今の僕はすんごく弱いんです!」


 僕は立ち上がりながらファラさんに抗議する。


「はぁ? 戦闘職業……ってなにそれ?」


 ファラさんは首をかしげている。

 そう言えば最近作られたものだし、知らなくても無理はないかもしれない。

 冒険者を目指すファラさんには覚えてもらった方がいいだろう。


「え~っとですね、戦闘職業っていうのは……」


 僕はファラさんに、新に作られたギルドの職業について詳しく説明した。


「ってことで、一つの職業を選ぶとそれに応じた能力がドーンと増えるわけなんですよ」


「へ~、そんなのがあるのね? クーを見ると後衛は面倒そうだし、私は前衛職を選ぶとするわ」


「ああそうですか、頑張ってください。じゃあ僕は父さんの所に行って来るんで、ファラさんは自宅に帰って休んでてくださいね」


「何言ってるの、私も行くわよ。もう魔物も倒したし、私が居ない間に帰られたら困るからね」


「ああ、そうですか。じゃあ行きますね」


 そう言って父さんが居そうな方向へ歩き出すのだけど。


『…………』


 きっとファラさんは気にもしていないのだろうけど、二人っきりだと凄く気まずい。

 あのキスのことが頭を過ってしまうのだ。

 僕だって男の子なので仕方がないのである。


「ねぇクー、もうちょっと冒険者のことを教えてちょうだい」


 そんな沈黙が嫌になったのか、ファラさんから話しかけてくれた。


「あ、はい、いいですよ。どんなことが知りたいんですか?」


「クー、あんたがどんな冒険をして来たのか知りたいわ」


「いや、そう言われても、殆ど今日が初めてのようなものだし、まあファラさんとそんなに変わらないですよ」


「つまり私が頑張れば軽く追い越せるってことよね? そう、分かったわ。がぜんやる気が出て来たわよ!」


 ファラさんからは謎のやる気が感じられる。

 そんなに僕をボコりたいんだろうか?

 嫌な予感を感じつつ、そのまま村の中を歩き続けると父さん達を見つけ出した。


「おい暴れるなよ。お前が魔物じゃないと分かったら直ぐ離してやるからよ」


 父さんはフェイさんを縛りあげて、地面に押さえつけている。


「私は無実だああああああああ! 信じてくれファラアアアアアアアアアアア!」


 まあそれでも体をバタバタと揺らして抵抗を見せているけど、ベテラン冒険者の父さんには無駄な抵抗だろう。


「あ、見つけた。フェイさんが縛りあげられてますよ」


「はぁ、うるさいお父さんだわ。でもこれは丁度良いわね。お父さんにはこのまま縛られたままで居てもらいましょう。村長さんにでも言っとけば問題ないわね」


 どうせ冒険者になりたいから家にでも放置するのだろう。


「ってことみたいだけど、どうする父さん」


 僕は父さんに聞いてみた。


「止めやしないけどな、あとあと誘拐されただのなんだの言われたくはない。その村長とやらとにキッチリ話をつけて書面にでも自分の意思を残しとくんだな」


「ん、分かったわ。じゃあそうする」


 ファラさんは当初の予定通り、この村を出る準備をするようだ。


「ファラアアアアアアアアア、父さんを捨てないでくれえええええええええ!」


「ごめんなさいお父さん、私どうしても冒険者になりたいの。だからお父さん、ちょっと黙ってて」


 ファラさんは、フェイさんに容赦なく猿ぐつわを咬ませ、黙らせてしまった。

 自分の育て方が悪かったと諦めてくださいフェイさん。

 こうして僕とファラさんとの初めての冒険っぽいものが終わった。

 僕と父さんは、ファラさんが村長の家に行ってる間に町を出ようとするのだけど。


「待ちなさい! 私も連れて行ってもらうから!」


 と、ファラさんに気付かれて同行することなってしまったのだ。

 どうせ止めても聞かないんだろうと、村長さんに事情を話し、そしてこの村を後にする。

 それからファラさんはローゼリアの町で冒険者登録して、今現在のウェポンテイマーという職業についたのだ。


 でもそれだけでは終わらなかった。

 僕の方がレベルが高いからと、ファラさんは父さんと一緒に冒険をしに行って、なぜか僕だけがローザリアへ残されてしまったのだ。

 そんな僕を助けてくれたのがスラーさんである。


 まあ父さんに頼まれたという話かもしれないが、僕はギルド職員として働くことになった。

 そして戦力調査部の始まりでもある。


 僕はアーリアさんや、他の人達とチームを組みながら活動をし続け、二年もの時間が経つ。

 たまに送られてくる父さんの手紙や、更に稀にファラさんの日記帳が送られてきたりしている。

 中にはびっしりと文字が書き連ねられて、訓練内容や何を倒したかが詳細に書かれていた。

 どうやら二人共元気でやっているようである。


 その四冊目の日記が届き、何時ものように読んで行くのだが、最後の一文には明日帰るからと書かれていた。

 書いてある通りローゼリアに戻って来た父さんとファラさん。

 父さんはそのまま冒険者として旅に出てしまい、住む所がないファラさんに、スラ―さんがギルド職員になれば無料で寮に住めるよと説得され、僕とチームを組んだのだ。


 これで昔話は終了なのだけど……。


「んんん? 今まで思い返してみたけど、ファラさんの優しさが見当たらない。いや、きっと何かあるはずだ。ファラさんだって優しい心の一つぐらい持っているはずだ!」


 僕はファラさんの部屋の前で、力を込めてそう叫んだ。


「あんたまだ居たの!? 部屋の前で私が鬼みたいに叫ばないでちょうだい! ああもう、そんなに食糧が欲しいならくれてやるわよ! だからもう来ないでよね!」


 ほんの少し開いたファラさんの部屋の扉から、ちゃんと処理されて焼かれた牛肉が放り投げられた。

 肉につけられたソースが空中にキラキラ舞う。

 このままキャッチしたら服に飛び散るのだろう。

 だが僕は気にしない!


「はあああああああああ! はぐっ……」


 その場で口を開け、飛んで来る肉を受け止めた。

 手がベタベタになるのも覚悟し、手づかみで肉を引き千切り咀嚼する。


「久しぶりの牛肉だ。猪には飽きてたから美味いです! ファラさん、ありがとうございました!」


「煩い! もういいから帰りなさい!」


 やはりファラさんは優しいようだ。

 僕は牛肉に満足して家に帰って行った。

 そして、僕の貧乏生活は続いて行く。


 それから一週間ぐらい経ったある日の朝。

 僕は何時も通りにギルドに向かい、朝の挨拶をしていたのだけど。


「ファラは、どこだあああああああああああああ!」


 っと、ギルド内に聞いたことがあるような声が聞こえて来ていた。

 それはこの間思い出したファラさんのお父さんの声である。

 どうやら昔話は、現在でも続いているらしい。


「見つけたぞ貴様あああああああ! 私のファラちゃんをどこへやったあああああああ!?」


 僕が振り向くと、おかしな格好をしたフェイさんがこちらに詰め寄って来た。

 どうおかしいのかと言えば、おどろおどろしい胸から肩へ伸びた鎧を着て、その下に真っ黒なマントを羽織っているのだ。

 そして頭には、チリチリになった髪の毛が、風もないのにうねっている。


 一体この人の身に何があったんだろう?

 そんな騒ぎが起こる中、当のファラさんが出社して来た。

 クー・ライズ・ライト (僕)

 ランズ・ライズ・ライト (父)

 ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)

 フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)

 スラー・ミスト・レイン(僕の上司)

ミア・ミスト・レイン(元賞金首)

 デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)

 アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)

 ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)

 ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)

 デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)

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