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 レストランから逃げ出し、時間を置いてもう一度中を覗いた。

 随分時間が経っているのに、まだ説教は続いていた。

 もうすでに嫌な顔をしているファラさんが、顔をそらしてこちらを見た。

 僕はそっと扉を閉めて見なかったことにしたけど、ファラさんが追い駆けて来ていた。

 お詫びと言ってキスをされ、その代わりといって利用されてしまう。

 僕の子供がいると嘯くファラさんに、あまりのことに気を失ってしまうファラさんのお父さん。

 僕達は気絶したお父さんをレストランに運び入れ、冒険者に成りたいというファラさんの頼みを聞くだけは聞いてみた。

 ファラさんは父さんに気に入られ、魔物が出るまでの間に特訓を受けていた。

 僕はレストランの中で父さんが持っていた職業の説明書を読み漁る。

 今まで全く気にしていなかったのだけど、やっと測量士が後衛に位置するものだと気づいてしまった。

 しかも、レベルが上がってもあんまり強くなれないらしい。


 まあそれでもなんとなく使い方を覚え、持っていた鉄棒の使い道を知ったのだった。

 そして、説明書を読み終えたぐらいにファラさんのお父さんが目を覚ましたのだけど。


「…………」


 目の前で手をパタパタさせても反応がない。

 口を開けて放心状態になっている。

 ちょっと考えれば分かるのに、それほどファラさんのことに執心しているのだろう。


「あの、さっきのは嘘ですからね。僕は今日村に来たのに子供なんて出来るわけがないでしょう。聞いてますか? お~い」


 気が付いてからだと話を聞いてくれ無さそうだし、僕は今の内に言い訳しとこうとフェイさんに声を掛けた。

 それを切っ掛けにフェイさんの目に力が宿った。


「……今のは本当だろうな? そうか、そうだよな、ファラちゃんがこんな冴えない……。さっきのキスはどういうつもりだ!?」


「あれはただそう見えただけで、ただの演技ですから!」


 そうしておいた方が都合がいい。


「だったらあれは何だ、この店で裸になって何をしていたああああああああ!?」


「あの、落ち着いてください。あれはファラさんが脱げと……」


「ファラちゃんがそんな事を言うはずがなああああああああああい!」


 やっぱり声を掛けなかった方が良かったかもしれない。


「違うんです。濡れている服を乾かしてくれるって言って、優しいファラさんが言ってくれたんです! それからちょっと足がもつれただけで、特になんにもないですから! ファラさんはそんな子じゃないんでしょ?」


 とっさについたウソに、フェイさんは少し考えこんでいる。

 たぶんあの時の光景を思い出しているのだろう。


「……確かにファラはそんな子じゃない。私の思い違い……なのか?」


「そうです、キッパリ思い違いですから。ファラさんは冒険者になりたくて嘘をついてるだけですから!」


「ぼ、冒険者だと!? そうか、ファラはファリアの影を追って……止めても無駄かもしれないな……」


 ファリアって、たぶん家族かなにかだろう。

 突っ込んで聞いても僕には話してくれないから聞かないでおこう。


「あの、そんなことより……」


「そんなことだとおおおおお!? お前はファラちゃんの大事さを分かっていない! いいか、ファラちゃんはとてもかわいいんだぞ! 貴様は分かっているのか?!」


「いや、そうじゃなくて魔物のことを……」


「魔物だとお?! 魔物なんてものはファラちゃんの二の次……ん、魔物? そうだ、ギルドに依頼を出したんだった。だがそれが貴様となんの関係がある! 今はファラちゃんの可愛さの事を話すのが先決だ!」


「だからその依頼を受けて来たのが僕と父さんなんですよ。魔物の特徴とか教えてくれませんか!」


 このままでは全然話が進まないから思いっきり怒鳴り返してしまった。

 フェイさんは少し面食らい、まじまじと僕の全身を見回している。


「……ハズレか。もう一回依頼を出さないと」


「ハズレじゃないですよ。ちゃんと実力もありますからね! 僕は兎も角、父さんの実力は折り紙付きですから! ランズ・ライズ・ライトの名前なら知ってるでしょ?」


 父さんは元々冒険者だし、その名前も結構知れ渡っているはずだ。


「ランズ……だと? 聞いたことがある……ような気もする? まあいい、来てくれたのなら本人と話しをさせてもらおう。で、どこにいるのだ? 私のファラちゃんは!?」


 父さん、長くやってるわりにあんまり知名度ないんですね。


「ファラさんは外で僕の父さんと訓練していますよ」


「ファラアアアアアアアアアアアア!」


 返事すらくれず、フェイさんは外に行ってしまった。

 もうここで待っていても意味がないし、僕も行ってみるとしようかな。

 そして移動した外。

 大きな一本木の近くで真剣を持って打ち合っている二人。

 と、到着したフェイさんがオロオロとしている。


「ファラ、そんな危ない物は置いてお父さんと一緒に店に戻ろう。魔物はその人に任せておけばいいんだよ?」


「何言ってるのお父さん。この村の問題なんだから自分の手でやらなくてどうするのよ。今の私一人じゃ無理でもランズさんが居るから平気よ! あとついでにオマケも居るし」


 おまけって僕のことだろうか?

 仕方ない僕の力を見せるとしよう。


「ファラさん、僕はオマケじゃないですからね。測量士の真の力を見せてあげますよ!」


「へぇ、やれるもんならやってみなさいよ。どこからでも良いから掛かって来なさい!」


 ファラさんは僕の方に剣を向けている。

 木刀でも嫌なのに、あんな物を持ってる人と戦いたくはない。


「いや、そういうんじゃなくて、ちょっとそこに立っていてください」


「ん、何するの?」


「まあ見ていてください」


 僕はこの場にある木の周りを大きく囲むように、手に持った鉄棒を四本突き立ててた。

 そして僕は力を発動させるキーワードを唱える。


「結界の内なる生命よ、数値となって強さを示せ。ナンバーズ・フィールド!」


 今、僕が使える魔法は何かを計ったり測ったりする魔法だ。

 ちなみに今居る人数は四人だけど、囲んだ結界の内には虫なども存在している。

 アリなんかが地上に出てきたら相当な数になるのだけど。

 上空から落ちて来る石の数値を目で追うと、二十八と出ているようだ。


「うわ、危ないわね! まさか私を殺す気?!」


 その石がファラさんの近くに落ち、少しビックリさせてしまったらしい。


「いや違うんですよファラさん、この数値は僕の力になって……」


「ファラになにすんだああああああああ!」


「いたッ!」


 ファラさんを心配したフェイさんに、後ろから殴りつけられた。

 凄く痛い。

 今後フェイさんの前ではやらないように気を付けるとしよう。


「ヌッハッハー、やられたなぁクー、油断大敵だぞ。魔物と戦う時には背後からの奇襲も気をつけないといけない。今後の為に覚えておけよ?」


 こっちの父さんは心配もしてくれない。

 まあベタベタされても気持ち悪いのだけど。


「じゃあ依頼者が来たから訓練はここまでにしておくか。それじゃあ依頼の話をしようかフェイさん。魔物の特徴とかを教えてくれると嬉しいんだけどな?」


 父さんが剣を納め、フェイさんに話しかけた。


「確かに、魔物はこの村にとっての死活問題です。しかあああああし、私にとってはファラの将来の方が最優先だ! もし貴方がファラを連れて行くというのなら、資格があるのかどうかを確かめさせてもらう! ちなみにそこの子供は失格だ!」


 その子供というのは僕のことらしい。

 でもどうしよう、魔物の話がちっともできないな。

 もうそろそろ夜が近いのだけど。


「お父さん、私の将来は私が決めるわ。邪魔をしないでほしいのだけど」


 ファラさんは実のお父さんにも剣を向けている。

 誰にでも容赦がない人だ。


「ファラ、お前が冒険者になりたいのは分かった。でも私は心配して言っているんだ。ちゃんと冒険者としてやっていけるかどうか。幸せにやって行けるのかどうかもな。それに、一日に一回は帰って来てくれないとお父さん寂しいじゃないか!」


 一日一回の帰宅は、この村を起点にして活動するなら出来なくもないけど、他の町に行くとなると難しいと思う。


「お父さんは心配しすぎなのよ。まあ私もお父さんのことは心配だし、一ヶ月に一回ぐらいなら考えてあげても良いわよ」


「確かに、一日は無茶だったかもしれないな。分かった、ファラの為に三日ぐらいに妥協しよう!」


「無理!」


「ファラアアアアアアアア!?」


 結局ファラさんのお父さんは、泣く泣く二週間で妥協したようだ。

 試験のこともサッパリ忘れたようで、へたり込んで泣き続けている。


「父さん、もう直ぐ夜になっちゃうし、これじゃあ魔物のことが聞けないよ?」


「うむ、確かにな。まあ父さんに任せておけ。いい考えがあるんだ」


 そう言って泣き崩れるフェイさんの前に座り込んだ。


「俺も親だ、お前さんの気持ちは分からんでもない。まあ酒でも飲んで落ち着けよ。まず魔物のことを教えてくれ。それから仕事を終えた後にでも話を聞こうじゃないか」


 父さんも結局後回しにしたいらしい。


「ぼんどうですがあ!?」


 しかし混乱しまくって鼻水まで垂らしているフェイさんは、父さんにしがみ付いて喜んでいる。


「だからな、一回この酒をグイッといって落ちつきなって」


 父さんは手持ちの酒瓶をフェイさんの口の中に突っ込んだ。

 瓶の中にはほんの少量しか残されていなかったのだけど、それでもフェイさんには効果があったようだ。

 少量で顔が赤くなり、泣きながら話し始めた。


「うぐううう、魔物は……人に化ける……ううう……ですよ。毎夜毎夜……ヒック、うううううううう」


 これでなんとか魔物の手に入れられそうだ。

 僕はフェイさんの発するオエツの部分を排除して、出て来る単語をつなぎ止める。

 丹念に話しを聞き続け、終わった頃にはすっかり夜になってしまった。

 ファラさんが泣き続けるフェイさんをレストランの中へ誘導し、僕と父さんは外で魔物の出現を待つことになった。

クー・ライズ・ライト (僕)

ランズ・ライズ・ライト (父)

ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)

フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)

スラー・ミスト・レイン(僕の上司)

ミア・ミスト・レイン(元賞金首)

デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)

アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)

ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)

ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)

デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)

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