僕が冒険者になった訳
ギルド職員として活躍した僕は、何故か借金を背負わされてしまった。
そんな僕は、取って来ていた野草や干し肉の生活を続けるが、もうそろそろ飽きが来ている。
同じ物ばかり食べる生活に苦痛を感じ、ファラさんに食事を恵んでもらおうと走ったのだ。
生きる為にも何とか了承して欲しいところだった。
あのよく分からない決定が下されて七日。
僕はまだ死んではいなかった。
とって来た野草を食べ、干してある猪肉に噛り付き、自分の命をつないでいる。
しかし、それも限界は近い。
もう大分飽きが来ているからだ。
だから相棒であるファラさんに食事をたかりに行く。
「ファラさん、僕に、僕に食料を分けてください」
ちゃんと頭を下げお願いしたのだが。
「昨日食事をご馳走したでしょう。もうそれで我慢しなさいよ」
泣き落としはもう効かないのかもしれない。
確かに昨日の夜に御馳走になったのだ。
ただし、その栄養は使い果たされている。
「昨日は昨日で今日は今日なんです! お腹は毎日毎時間減るんだから仕方ないでしょう!」
「もう庭の草でも食べてなさいよ。ほら、草むらに居る虫とかいっぱい跳ねてるでしょ」
ファラさんの目が、虫でも見ている感じになっているのは気のせいだろう。
「虫は嫌です! ……それに、草はもう食べ飽きました。雑草ってあんまり美味しくないんですよ」
「いや知らないし。というかクーは実家に住んでるんでしょ。食料分けてもらえばいいじゃないの」
「残念ながらお父さんは旅に出ています。家賃は要らないですけど食費は掛かるんですよ食費は! だから僕にファラさんの手料理を食べさせてください! 出来れば美味しいものがいいです!」
僕は必死に頼み込んだのだけど。
「嫌よ!」
そう言われて部屋の扉が閉められようとしていた。
しかし僕も簡単には諦めきれない。
扉の隙間に両腕を入れて踏ん張るのだけど、ファラさんの力はゴリラのようだ。
僕のひ弱な力では太刀打ちできないらしい。
「放しな、さい!」
「ぎゃっ!」
強烈に引っ張られ、指を潰される前に扉を放すしかなかった。
初めて会った時にはもう少し可愛らしかった気がするのだけど、一体なぜこうなってしまったんだろう。
ちょっと思い出を整理してみようかな。
そう、確かあれは五年前の話だ。
魔王という存在が現れ、魔物が活発化して数年経った頃。
ローザリアから西にあるラザリアンク国の王都から、全世界のギルドに御触れが出された。
魔物の生態を調査し、誰でも分かるように数値化を行なえと。
何故ギルドという組織が選ばれたのかというと、世界中に広く支店を持っていたからだろう。
元々は仕事を受けて、やりたい人に仕事を流す役割をしていた場所である。
国が人類の戦力をアップさせようと、冒険者システムの確立と、戦闘職業の導入するのにギルドという場所は丁度良かった。
そしてその二年後の戦闘職業が導入される日。
十三歳になっていた僕は、ギルドに呼ばれた父さんについて来ていた。
「ようし着いたぞクー。ここが世界を変える……かもしれないギルドという組織だ。よく覚えておけよ」
冒険者システムなんてものがなくても、旅をしている冒険者という連中は昔から存在している。
その一人が僕の父であるランズ・ライズ・ライトなのだ。
まあほとんど家に帰って来なかった父だけど、最近死んでしまった母の代わりに僕の面倒をみてくれていた。
「うん。で、結局何しに来たの?」
「ヌッハッハー、それはもうちょっと先のお楽しみだ。楽しみにしておけよ?」
「?」
ちなみに父は大柄で髭面の男で、ぱっと見、悪者に見えなくもない人物だ。
そんな父に連れられてギルドの中へ入って行く。
そこで会ったのが、現在の上司であるスラーさんである。
「よく来てくれましたねライズ・ライトさん。今回の話を聞いてくれてありがとうございます」
「いやいや、俺としても良い話だとは思っている。その冒険者システムってのが上手く機能をすれば俺の旅にも役立ちそうだからな」
「そうですか、それはよかった。では早速登録をお願いしますね。どうぞこちらです」
この時の僕は知りもしなかったけど、父はスラーさんに呼び出されて、今回初めて使われる冒険者システムの最初の一人として選ばれていたらしい。
「まあ待ってくれ。それは人体に害がないのだろう? だったら俺の息子にも受けさせてやってくれ。第一号なんてこいつも喜ぶはずだ。そうだろうクー?」
「一号! うん、やる!」
その時あんまり考えてなかった僕は、カッコいいのかなと思って軽く引き受けてしまった。
今思えば適当に測量士を選んでしまったのが運の尽きだったのだろう。
気付いた時にはドップリ測量士という職業に浸かってしまっていたのだ。
こうしてギルドに管理される冒険者の一人目と二人目になってしまった。
まあ、今と同じギルド職員だ。
「よし、これで俺も魔戦士としての職業に就いたわけだ。強くなるにはどうしたらいい?」
父さんが選んだ職業は魔戦士。
剣を得意として、ある程度の魔法を扱えるものだけど、いきなり魔法が使えるようになるわけではない。
「魔物を倒すと経験値が溜まりレベルが上がります。その際に冒険者カードに内包した魔力により能力の成長値が誘導されるのです。職業によっては当然上がらないものもありますが、その分必要な能力はドンドン上がる訳ですよ」
「ほう? まだよくわからないが、とにかく魔物を倒せばいい訳だな? んじゃ、早速行ってみるか」
「うん、行こう父さん!」
「ああ、レベルが上がってない今は今までの能力と変わりませんから気を付けてくださいね」
「おう、分かってる。分かってるよ」
ということで、僕は父さんと一緒にレベルを上げていた。
僕が居るからか、危険性の一切ない単体のスライムとか、稀にゴブリンなんかも相手にしている。
「クー、そっちへ行ったぞ! 止めを刺してやれ!」
「うん、わかった! たあああ!」
と、そんな感じの戦いをしていて一月を過ぎた頃だろうか?
僕達親子はレベル七になっていた。
そんな日が続き、今日もレベルを上げようかと起きた朝、家にやって来たスラーさんに頼み事をされた。
「という訳なんですけど、冒険者として初めての依頼を受けてみませんか?」
聞かされた話では、王都より更に西にある村に、危険な魔物が出現したと。
毎晩現れる魔物に恐怖し、フェイ・ステラ・ラビスによりギルドに依頼が出されたらしい。
それはつまり、ファラさんのお父さんである。
「ヌッハッハー、今の俺達に勝てるやつなんて居ないよなぁ。任せろ任せろ、やってやろうじゃないか。なぁ」
「そうだね、僕は誰にも負けないんだから大丈夫だよ! だってもういじめっ子も返り討ちにできるはずだし!」
力が上がっていて調子に乗っている父さんと、自信が付いていた僕は、頼み事を二つ返事で引き受けたのだった。
クー・ライズ・ライト (僕)
ランズ・ライズライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)
デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)




