神様は存在していた!
建物の中から魔物が現れ、戦闘が始まった。
野盗達は襲って来るも魔物の姿を見ると逃げ出して行く。
丁度良いからと測量を初め、相手の能力を測り出す。
色々調べるが、この魔物は相当に強かった。
何のダメージも与えられず戦いが続くが、少しの切っ掛けで魔物の力が判明した。
僕はその能力を奪い、大きな魔物を吹き飛ばした。
ミトラの町に戻った僕達は、担当受付になってしまったデルメオに話しかけようとしていた。
まあ報告するだけだし特に問題はないだろう。
「仕事を終わらせてきました。これ資料です」
僕は作っていた資料をデルメオに手渡した。
「お~つかれっした~! んじゃ拝見いたしま~す!」
しかしデルメオはその資料をパッと見て、パシッと受付のカウンターに叩きつけた。
「あ~あ~、こっりゃあダメで~す。これが適当に書いたって俺っちでも分かるっすよ~。もう一回行ってきてくださ~い!」
デルメオの顔は、今にも吹き出しそうになっている。
「ええ? これの何処が駄目だっていうんですか? ちゃんと書いてあるでしょ?」
「あのさあ、私達はちゃんと仕事をして来たのよ? 何がいけないっていうのよ!」
「おい兄ちゃん、流石の俺でも笑えなことはあるんだぜ。ちゃんと説明してもらおうか」
「……やりましょうか?」
若干一名怖い事を言ってるけど、僕達は普通に抗議した。
「はっはっは~、皆して騙そうとしたって無駄っすよ~、なんすかレベル五十五って、そんなん遭遇したら死んでますって~。俺っちを笑かそうとしてるっすか~? 何っすかピッピちゃんって、うっは~、うけるわ~!」
デルメオは大袈裟に手をブンブン回して笑い転げている。
何というか、一切信じて貰えなかった。
まあ確かに名前はちょっと変だけど、ボードにはその姿も写し込まれている。
姿を見ればどれ程のものだったか分かるはずだが。
「もうちょっとちゃんと見てくださいよ。ボードに写された姿も一致しているでしょう」
「な~に言ってんすか~、こ~のぐらい、いくらでも不正できちゃうでしょう? 騙そうったって無駄っすよ~、無駄無駄!」
駄目だ、この男の説得は不可能だろう。
あんまり話していると他の人達が殴り掛かってもおかしくない。
主にツキコさんが。
「坊主、こいつは駄目だ。自分が納得するまで延々とやらされることになるぞ」
「そうね、時間が掛かってもディーラさんの所に並びましょう」
デッドロックさんとファラさんも、その雰囲気を感じ取ったようだ。
「はい、それが良さそうですね」
「がるるるるるる!」
ツキコさんが襲い掛かる前に、僕はカウンターに置かれた書類を手に取った。
「何処に並んだって同じっすよ~、時間の無駄ですって~、うっは~!」
デルメオからそう言われたので、僕達は今現在も少しの行列が出来ているディーラさんの受付へ並んだのだった。
待ち時間はほんの十五分。
もう一度行かされるよりは百万倍はマシである。
僕達の順番が来ると、デッドロックさんがカウンターに身を乗り出した。
「おうディーラ、仕事の報告を見てくんな。奴じゃどうにも信用できねぇからな」
「お帰りなさい皆さん、デッドロックも無事でなによりです。では書類をお願いします」
デッドロックさんのことは事務的な雰囲気で躱され、僕の方に顔が向けられる。
「あ、はい、これです」
僕はディーラさんに資料を手渡すと、その資料にサッと目を通してくれている。
ディーラさんはデルメオのように侮ることはなく、ボードの姿と資料を見比べていた。
「ボードと見比べても大きさの差異はなさそうですね。力の値は三百以上で間違いはないですか?」
「はい、一撃でキューブの破壊を確認しました。それ以上の値はあるでしょう」
「なるほど、出来ればキューブを二つ並べたりと試してほしかったのですけど」
「あ、ごめんなさい。ちょっと気が回らなくって。でもあの大きさの生物に踏まれたら普通に死ねると思います」
「そうですか、では名前の項目だけ変更してください。流石にピッピちゃんでは緊張感に欠けますから」
やっぱり名前はダメだったようだ。
「あ、はい、ごめんなさい。じゃあウール・デッドサウルスってことでどうでしょう?」
「ではそれで採用します。他には……大丈夫みたいです。ではまた次の仕事が有る時にはよろしくお願いします」
「おっと待った。その前にアイツの話をしようぜ」
デッドロックさんがデルメオに親指を向けている。
「彼の話ですか……彼も可哀想な人なのですよ。ご両親が他界されて奴隷として売られたり、売られた屋敷が襲撃されて燃やされて、着の身着のままの生活を送らざるを得なかったと聞いています。生き延びる為に虫や雑草を食べていたらしいのですよ。それから旅をしながら流れて、ギルドに拾われて今現在の姿になってしまったと本人が言っていました」
ディーラさんがデルメオの過去を話してくれた。
「意外と想像を絶する人生送ってるんだなアイツ。多少同情してやってもいいが、それと仕事の話は別だぜ。もうちょっと頑張れって言ってやれ」
「はぁ、それを聞かされたらあまり攻められないじゃないの。たまにだったら仕事を受けてやってもいいかもね」
二人共同情している。
あの男は見た目以上に壮絶な人生を送っているらしい。
しかし僕は気付いてしまった。
「あの、それ本人が言ってるだけなんですよね? ただ家出して適当に嘘言ってるだけなんじゃないですか?」
普通に考えればそんな疑惑も沸いて来るものだ。
「坊主、確かに自称でしかないが言ってやるなよ? こんな世界じゃあり得る話だからな。本当だったら目も当てられなくなるぜ」
「クーはもう少し人の気持ちを考えなさい」
何故僕が攻められているんだろうか?
これ以上言い争っても得なことはなさそうだけど。
最後に僕は、もう一度あの男を見た。
「フワッフー、毎度ありっした~、ま~たどうぞ~!」
デルメオは稀に来ていた一人を帰し、両手を振っている。
あれを見る限り絶対嘘だと思うんだけど。
今後はなるべく関わらないようにしよう。
まあ色々あったけど、こうして僕達は仕事を終えて自分達の町へ戻って行く。
旅は手慣れたものだ。
出て来る魔物を主にツキコさんが斬り倒し、逃げれるものは走って逃げる。
そして僕達の町であるローザリアにまで戻って来たのだ。
ギルドに着くと、入り口でスラ―さんが出迎えてくれている。
「おかえりなさい皆さん、全員怪我もなさそうですね」
「ただ今帰りましたスラーさん。怪我はなかったですけど、今回の仕事は相当危ないものでした。今回ボーナス出ますよね?! ファラさんに巻き上げられてお金がないんです。是非ください!」
「なんか私が悪いみたいに言ってるけど、クーが自分で渡したんだからね。そこの所は忘れないでよね」
確かに渡したのは僕ですけど。
「分かっています。でもお金が無かったら生活出来ないじゃないですか! あの男じゃないですけど、僕こそ雑草を食べる日々が始まってしまうんです! ファラさん、僕が可哀想じゃないんですか?!」
「私としては特に気にしてもいないけど」
ファラさん、一応相棒なんですからもう少し気にしてください。
「ラビス君、チーム内のことを私が言うことではありませんけどね、今後の仕事に関わりますから、お金を巻き上げるのはやめてあげなさい」
やはり尊敬する上司は違う。
僕のことを庇ってくれている!
「……分かりました。今回のお金は貰うけど、まあ手料理ぐらいなら食べさせてあげます」
そしてファラさんが説得された。
食料も貰えるとなればとてもいい感じだ。
「やった、これで野草をモシャモシャ食う生活ともおさらばできる!」
これで僕の生活も安定するだろう!
「おお、やったじゃねぇか坊主、嬢ちゃんの手料理だってよ」
「はい、僕の命がつながります!」
「いやそうじゃねぇよ。何か有るだろう、こう、こみ上げるものがあるとかよ」
「はい、僕の食欲が込み上がって来ています!」
「……わかった、お前は駄目な奴だ。まあ頑張るんだな嬢ちゃん」
「デッドロックさんが何を言ってるのか理解できないわ」
「……全員死ねばいいのに」
「ツキコさん、闇落ちしたら駄目ですよ。きっとその内いい事がありますから」
「うるさい!」
ある程度の話しがひと段落したようだ。
「ふむ、一応話が纏まったということでいいですかね? ではライズ・ライト君、もう一つの話をしましょう。ミア君のことでギルド上層部からの決定が下されました。聞きますよね?」
「もちろん聞きます!」
「では報告をしましょう。ギルド上層部の決定によれば、アギアには死んでもらう事になりました。これは決定なので覆すことはできません」
「ええ、殺すんですか?!」
僕はその決定に衝撃を受けた。
何も殺すことはないのに。
「……誰?」
「俺としたらよく知らないが、人に手を出した報いというやつだな。仕方ないと言えば仕方ない」
ツキコさんとデッドロックさんは会った事がないけど。
「あの子、反省する前にやり過ぎたから、同情するのは違うかもね」
ファラさんは顔も知っているし、話したこともあるのだけど。
「一緒にご飯まで食べてたのに冷たいですねファラさん」
「それなりに悲しいわよ。でも助ける訳にもいかないじゃないの」
「まあ待ってください皆さん、まだ話は終わっていませんよ。確かに助ける訳には行きませんでした。しかし安心してください。アギアは死にましたが、ミア君としては生かすことになっています」
『えっ?』
僕とファラさんは、スラ―さんの言葉に驚いた。
「人に友好的な魔族は珍しいですからね。殺すよりも研究材料として生かすことを決めたのでしょう。その身は髪の毛の一本から爪の先、体内の臓腑までことごとく管理されます。当然性の自由も与えられません。というわけで、今後働く仲間をご紹介しましょう。出て来てくださいミアさん」
スラーさんの呼びかけに応じるように、黒っぽい影がギルド内部を駆け抜けた。
「ヨメ、ワタシ、キタ! コドモ、クレ!」
シュタっと僕達の下に着地したのは、今話していたミアさんだ。
ミアさんは僕の横をすり抜け、隣に居たファラさんに抱き付いた。
僕に来るのかと一瞬思ってしまったけど、どうも違った様だ。
「誰が嫁よ、あなたの嫁になる気はないし、あんたの子なんて作れないわよ!」
「え~、ミア君のことですけど、私の養子として預かることが決定しています。今後はミア・ミスト・レインと名乗るからよろしくお願いしますね。ちなみに同居はしません。妙な勘繰りを持たれても困りますからね」
「つまり今のままですか? ハッ、家賃は、家賃は一体どうなるんですか!」
ミアさんのことが片付き、僕の心配するもう一つのことを聞いた。
「当然今後の支払いはギルド持ちということになりますね。食費なども心配はいりません。ということで、今まで面倒を見てくれていたライズライト君には、ギルドからの報酬と経費が支払われます。良かったですね」
「……うおおおおおおおおおおおおお、神様は居たんだ! ありがとうございます神様。僕、今後気が向いたら祈ってみようと思います!」
食料やお金の問題、全てが上手くいき、僕にとっての問題がだいたい片付いたようだ。
クー・ライズ・ライト (僕)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
アーリア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)
デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)




