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ピッピちゃん大暴れ

 魔物を倒しながら廃村に到着した僕達は、鉄棒にて村の外に結界を造り始めた。

 結界は巨大すぎて発動はしないが、無事に造り終えると、軽く腹ごしらえをして村の中へ入って行く。

 村の中には潰れていない建物が三か所あり、中を調査し始める。

 その一つ目の建物の中を覗くと、強烈な臭いが鼻を直撃した。

 思わず声をあげてしまった僕の声に、野盗の四人が気付いてしまったらしい。

 その対応を三人に任せ、魔物の調査をしようとするが、中に居た魔物に気付かれてしまったらしい。

「うあああ、デカい!」


 そのデカさは建物の上にも突き抜けるほどで、そんな魔物が家を壊しながら現れた。

 踏まれても首で叩かれても不味いことになりそうだ。

 咬まれるなんてこともあるかもしれない。

 鉄棒が突き刺さったままなのは幸いだろうか?


 これ程の巨大な魔物を飼っていて、絶対的な戦力が有るはずの野盗達は、襲い掛かって来る動きを止めた。


「ピッピちゃん、ピッピ、ピッピちゃんが興奮しているぞ! 不味いぞ全員逃げろ!」


「ぎゃあああああああ!」


「うをおおおおおお!」


「ひいいいいいいああああああ!」


 さっきまで息巻いて向かって来ていた野盗達だが、このぴっぴちゃんという魔物を見て一目散に逃げて行く。

 完全に飼いならされているという訳ではないらしい。

 この破壊力を見る限り、このピッピちゃんがこの村を破壊したんではないだろうか?


「オイオイオイオイ、随分ヤベェのが出て来やがったじゃねぇの。坊主、ちゃんとやれるんだろうな?」


 あまりの巨体にデッドロックさんも怯んでいる。


「もうなんかターゲットにされてしまったみたいですよ。逃げてもこの巨体を振り切れるとは思えません。逃げれるタイミングまで踏ん張るしかないでしょう」


「どの道戦うしかないんだけどね!」


 ファラさんは愛剣を引き抜いた。


「えものおおおおおおおおおおおおお!」


「ツキコさん、いきなり突っ込んだら不味いですって!」


 ツキコさんはやっぱり暴走している。

 僕は止めようとするけど、引き止める手は空を切る。

 腰にある刀という武器で、ピッピちゃんの足元を狙うようだ。

 連続で三回の白刃が煌くも、ピッピちゃんの体には傷もついていない。


「ピッピイイイイイイイイイ!」


 名前っぽい鳴き声をあげたピッピちゃんは、その攻撃に怒こり、前足を大きく上げてツキコさんを狙っている。

 ズドドドドドドドっと、前足を何度も踏み落とす。

 こんな攻撃を食らえばミンチ確定だけど、ツキコさんの動きは更に速い。


「ぬああああああああ!」


 落とされた足を避けて斬り、また落とされる足を避けて斬りと繰り返す。

 あの鋭かった刃でも、ピッピちゃんの鋼のような体毛を切り裂くことができないらしい。


「斬撃耐性ありってとこね。手持ちの剣じゃ効かないかしら? 私も試したいけどあれに近づくのはツキコさんじゃないと無理ね」


「俺も正面に立つのは無理だな。後に……いや横からなら、いけるか?」


「どちらにしろ動かない訳にはいかないわね。ツキコさんが引き付けてくれている間にやってみましょう」


 二人がピッピちゃんに向かい、横方向から後ろ足に攻撃を加えている。

 だが、デッドロックさんやファラさんの力でも傷を与えることが出来ない。

 体毛にも傷はつかず、本体にはダメージを与えられない。


 兎に角僕も映し鏡の魔法を使うとしよう。

 僕は白いボードを取り出し、ピッピちゃんの姿を写し込む。


 ……大きすぎて入らない。

 これはもっと後ろかな。

 たぶんこの辺りで。


「映し鏡よ、彼の姿を写したまえ」


 何時も通り白いボードに、ピッピちゃんの姿が写しこまれた。


「あとは攻撃速度とか力とかかな」


 ピッピちゃんはまだあの場から動かず、前足を上下させているだけだ。

 攻撃速度は速いが、移動速度は見ていない。

 速度的にはツキコさんがいいのだけど。


「デッドロックさん、ちょっと敵の速さが見たいんで、囮になって追い駆けられてください」


 僕は攻撃をしているデッドロックさんに頼み込んだ。


「坊主、今冗談を聞いてる暇はねぇんだ。後にしてくれ」


「いや冗談じゃなくて、本当に真面目にですけど」


「あのなぁ坊主、言われても出来ることと出来ねぇ事があるんだぜ? 速さならツキコの方があるんだ、そっちに回せ!」


 だけど乗り気ではないらしい。


「いやぁ、でもですよ。ツキコさんはデッドロックさんに振られて暴走してるじゃないですか。これ以上なにかあったら可哀想かな~と思って。ほら、一回ぐらい踏まれてあげればツキコさんも納得するかもしれないですよ?」


「その一回で俺の人生終わっちまうじゃねぇか。無理だ、諦めろ!」


「仕方ない、じゃあファラさんに……」


「嫌よ! 絶対嫌よ!」


 ファラさんには瞬時に断られてしまった。


「え~っと、じゃあデッドロックさんお願いします」


 僕は再びデッドロックさんに頼むのだけど。


「おい坊主、人にやらせるんじゃなくて自分で行動したほうがいいんだぞ」


「無茶なこと言わないでください。踏まれたら死んじゃうじゃないですか!」


「坊主は、自分が無茶な事を言ってるのに気付いた方がいいぞ」


 どうやら調べるのは難しいようだ。

 しかし僕が二人を説得に失敗している間にもツキコさんが頑張ってくれていた。

 先ほどと同じく、降り注ぐ攻撃を避け続けている。


「はあああ! ッ……やあ! ふっ、この!」


 変わった事といえば、ツキコさんとピッピちゃんの体力が落ちていることだろう。

 全力で動き続けていたから、どちらも少し速度が落ち始めている。

 ダメージが与えられない以上は、何方かが力尽きるのが勝負の分かれ目だろう。


 とりあえず、デッドロックさんが手伝いを拒否してしまったからこれ以上は調べようがない。

 一応速さの暫定値でも書いておこうかな。


「え~っと、ツキコさんが百二十位だとすると……追いつけないから、たぶん百ぐらいかな?」


 僕は資料に数値を書き込み、次の能力を測ることにした。

 体力値と魔力値は測れないけど、力の値なら測れるだろう。


「デッドロックさん、これで敵の攻撃を防いでください!」


 僕はリュックから力を測るキューブを取り出し、デッドロックさんに投げ渡した。


「おう! ……ってこれキューブじゃねえか。こんなもんじゃ防げねぇよ」


「え~っと、敵の攻撃が来そうな所にコロっとしてください」


「まあそのぐらいなら、やってやらない事もないけどな。自分でできるだろう」


「嫌です。僕に攻撃が来たらどうにもならないですから!」


 戦力調査で大事なことは死なないことなのだ。

 これは自分の能力を考慮して考えた結果で、出来るだけ安全に、やれそうな人がやればいいのである。


「ああそうかい、まあ仕事だからな。やってやるさ。じゃあ……いよっと」


 デッドロックさんは敵の攻撃に合わせ、手に持つキューブ投げ置く。

 そこに丁度良くピッピちゃんの足が踏み落とされ、キューブはバラバラに砕けてしまった。


「おお……キューブが砕けるのを初めて見ました。これはもう三百以上ありますね」


 このキューブは、攻撃力三百までは耐えられるように作られている。

 砕けた時点で三百以上確定だ。


「知りたくなかった情報ね。まあ、当たらなければ良さそうだけど」


 ファラさんはツキコさんの方を見ている。

 旅の途中でデッドロックさんから聞かされた話では、ツキコさんはニンジャという職業についているらしい。

 ニンジャとは、速度を生かした手数と、特殊な術を使う職業だという。


 ご両親がギルドに相談して、ツキコさんの為に特別に作った物だというから驚きだ。

 要はツキコさん専用の職業なのである。

 まあ、本人が暴走状態で話を聞けないから、どんな術があるとまでは聞けないのだが。


 しかしこのピッピちゃん、攻撃力も激高で、動きもそうとう早い。

 それにこの体毛は、斬撃だけでなく打撃や刺突も防ぎそうで、とてつもなく厄介な代物だ。

 まあその分隙もあるし、戦うことは出来るけど。


「あの体毛さえ何とか出来れば……火でもつけたら燃えないかな?」


 ついてしまえば大炎上しそうだ。

 僕は壊れた民家の部品から木材を抜き取り、火種を使って火をつけた。


「そ~れ!」


 松明となったそれをポイっとピッピちゃんに投げ付けるのだけど、それは大きな体を転がって地面に転がり落ちて行く。

 だが僕はハッとした。


「ファラさん、上から松明が落ちて来ます。避けてください!」


 何故かファラさんの頭上に行ってしまったからだ。


「うわ! クーの馬鹿。私に当たる所だったじゃないの!」


 僕の声で、ファラさんはサッと身を躱し事なきを得た。


「ごめんなさいファラさん、ワザとじゃないんです!」


 体毛は焼ける気配もないし、炎は利かないのかと思った。

 しかし松明は偶然にもピッピちゃんの後足の下に落ちて、炎は体毛を焼き続けている。

 ただし、体毛は燃えてはいない。


 いや違う。

 僕は気付いてしまった。

 炎は体毛の表面をなぞるように焼いているだけである。

 焼き続けている炎は、体毛の中にまで進入していないのだ。

 そして炎が当たった箇所に、ほんのりと青い軌跡が見えた。


「これは、ただ防御力が高いだけじゃない?」


 何かしらの力が働いているのは確かだろう。

 三人の斬撃が利かないのもこのせいかもしれない。

 だったら僕の出番である。

 先ほど突き立てた鉄棒はそのまま突き立っていて、ここは大きく造られた結界の内だ。


「……結界の内なる防壁の力よ、数値となって強さを示せ。ナンバーズ・フィールド!」


 その呪文を唱えた一瞬、ピッピちゃんの体から不可視の力が掻き消えた。

 空からその数値を表す大岩が降って来る。

 数値は……。


「九千九百九十九?!」


 もう何もかもがやり放題な数値だ。

 この数値なら攻撃が効かなかったのもうなずける。

 そして魔法の効果で防御の力が無くなったピッピちゃんは、先ほどの松明に焼かれて体毛を焦がしている。


「ここだあああああああ!」


 更にツキコさんの攻撃が、体毛を突き抜けて本体を傷つけた。


「ピッピイイイイイイイイイイイイイイイ!」


 初めてダメージを受けたピッピちゃんが、辺り構わず大暴れし始めた。


「ぐおおお、嬢ちゃん退避だ!」


「ええ、こんな場所には居られないわ!」


 デッドロックさんとファラさんがピッピちゃんから退避し、ツキコさんは攻撃を続けている。

 僕もこの数値を使い、能力を向上させた。

 殆どの能力値が見たこともない数値に変わり、時間も三百とかなり長い。


「ツキコさん退いてください! 行くぞ、そおおれえええええええ!」


「分かった!」


 ツキコさんが退避すると、僕はタダの飛び蹴りを放った。

 圧倒的な速度と威力を持ったタダの蹴りだ。

 ピッピちゃんに直撃すると、八メートルもある巨体を軽く吹き飛ばした。


 後ろの建物を破壊し、その先にある残骸までも吹き飛ばす。

 更に進んで村の外にまで突き抜けると、ピッピちゃんはそこで止まった。

 だがまだ息はあるようで、その場で膝をついて動けないようだ。


「こりゃあ何て威力だよ。俺達が戦ってるのが馬鹿らしく感じるぜ」


「なりたいなら職業変えてみれば? その代わり大変よ。条件がそろわないと普段何にもできないんだから」


「普段なんにもできないで~す!」


「……やめとくぜ。そいつは坊主だから使える力だ。俺には向いてねぇ」


「……はぁ、スッキリした」


 そしてツキコさんは自我をとりもどしたらしい。


「じゃあピッピちゃんがやって来る前に帰りましょう。もう充分調べましたから」


 そして僕達は廃村を脱出した。


 今回の成果。


 名前 :ピッピちゃん

 レベル:55

 HP :900以上

 MP :300

 力  :300以上確定

 速  :100

 大  :800

 危険度:7

 技  :首振り。連続踏み潰し。咬み付き。

 考察 :巨大生物。

     頭の高さは八メートルあり、体長としても八メートルある。

     力や体力は相当あるもよう。

     速度もあり、防御出来ないぐらい強烈な一撃を放つ。

     受け止める事は出来ないので、速さで回避し続けるしかない。

     防御魔法か能力があり、それを消さないとダメージが与えられない。

     消してしまえば、戦う隙は充分にある。

     もし能力が消せないのであれば、逃げるしか手はない。

     パーティーの中に測量士が居れば、防御能力を奪って超強化できる。

     ただし、測量士はレアジョブと言われるぐらいやる人が少ない。

クー・ライズ・ライト (僕)

ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)

スラー・ミスト・レイン(僕の上司)

デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)

アーリア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)

ミア     (絶望のアギア・賞金首・ナンバー9)

ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)

ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員女)

デルメオ・ザック・デルタ(ミトラの町のギルド員男)

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