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野盗より心配なことがあるんです

 食料を確保した僕達は、町に戻って来た。

 二人と別れてミアさんに食料を渡しに行くが、部屋の中ではファラさんとミアさんが楽し気に食事をしている。

 僕は食料を置いて帰り、明日貰えるボーナスの為に早めに就寝したのだ。

 そして朝。

 早めに出社した僕は、先に来ていたスラーさんに頼み事をされた。

 どうやらまた北の町で騒ぎがあったらしい。

 僕はそれを引き受け、四人で町へ向かうことになった。

 僕は、出社して来たファラさんに事情を説明した。


「あっそ、じゃあ準備して向かいましょうか」


 特にボーナスのことを気にする事もなく、移動する準備を続けている。

 きっと帰って来てから貰う積もりなのだろう。

 僕も旅の準備を始めてしまおう。


 倉庫に行って必要な物を借り出すと、道具を丁重にリュックに詰める。

 木のキューブや資料、結界を作る棒、それと念の為に回復薬も。

 あとは使えそうな物を幾つか。


「よし出来た」


 順当に準備を終え、ギルドの入り口で待っている三人と合流した。

 どうやら僕が最後のようだ。


「クー、忘れ物はないわよね」


 先に準備を終えたファラさんが、僕に確認してきている。


「はい、持つべきものは持ちました」


「俺達も何時でも行けるぜ。なあツキコ」


「……うん、大丈夫」


「皆大丈夫みたいね。じゃあ出発しましょうか」


 ファラさんがギルドの扉を開ける。


「では四人共、気を付けて行ってらっしゃい」


『いってきま~す!』


 スラーさんの見送りで僕達はギルドを出発した。

 町の入り口にまで向かっているのだけど。


「ここから歩くのはそこそこ大変ですからね。魔物とかも出てきますし」


 北の町は歩けば八時間ぐらいはかかるのだ。


「それだぜ。俺としちゃあディーラの顔を拝む為に急ぎたい訳だが、歩きだと時間がかかり過ぎる。馬を借りて行くってのはどうだい?」


「デッドロックさん、肝心な事を忘れています。馬を借りても経費で落ちないんですよ」


「そんなことは知っているさ。だがよ、ボーナスってのはこういう時に使うもんだろう? 時間を掛けて歩くよりサッと行って遊ぶのだってありだろうが。そうは思わねぇか坊主」


「いや、違うと思いますよ。移動時にだって魔物の調査も出来ますし。もしかしたら新種とか発見しちゃうかもしれなじゃないですか。そしたらお金が貰えるんですよ!」


「坊主、よく考えてみろ。馬に乗れば早く走れるし、馬の移動速度で見つけられる魔物は増える訳だぜ。馬なら足の速い奴にも追いつける訳だ。結局出会えるかは運しだいなんだぜ」


 まあ魔物のタイミングというのもあるし、運次第には違いないかな。

 ただし、今月も来月も金欠の僕にとって、お金が要る要らないは重大なことだ。


「それはそうかもしれませんけど、僕がお金が無いのを知っているでしょうに?」


「そいつは心配しなくても大丈夫だ。馬は二頭借りれば事足りるんだぜ。俺は目的の為に馬を借りるんだ。一頭分は俺が持とう。あと一頭は分割するなりなんなりすれば相当安くつくだろう?」


「それでも僕の出費にはかわりないじゃないですか」


 僕が否定しようとした時、ガッと肩が掴まれた。


「……私、いい考えだと思います。その一頭分は私が出しますから、二組に分かれて馬を使いましょう!」


 肩を掴んでいるのはツキコさんだ。

 どうやらデッドロックさんと一緒に馬に乗りたいらしい。

 まあ、お金を出してくれるというなら僕に文句はないのだけど。


「あんた達、何してんの早く行くわよ!」


 僕達の事は気にせず、もうかなり先に進んでいたファラさんが声を掛けてきた。


「ファラさん、何か馬の代金出してくれるみたいですよ。結構遠いですから乗って行きましょうよ」


「そうなの? お金を払ってくれるなら文句はないわよ。じゃあ早速使わせてもらいましょうか」


 僕達は馬を借りて北にあるミトラの町に向かって行くことになったのだけど。


「んじゃ、俺は坊主と一緒に乗って行くから、そっちはそっちでやってくれや」


「分かったわ」


 その流れに、ギンとしたツキコさんの目が僕に向けられる。

 物凄く怒っていらっしゃる。


「ちょっと待ってくださいデッドロックさん、さっき二組で使いましょうって言いましたよね」


「だから男と女のだろ? ああそうか、悪かったな坊主。ファラの嬢ちゃんとくっ付きたかったのか。じゃあツキコ、悪いが俺の後ろにでも乗って行くかい?」


「う、うん!」


 ツキコさんからの殺気がなくなり、今は恥ずかしそうにしている。

 そちらは解決したけど、こちらの問題が発生しらたしい。


「へ~、私とくっ付きたかったんだ? へ~」


 ファラさんは蔑んだ目で僕を見てきている。


「いや、違いますよ! 僕はそんな恐ろしいことを望んでは……ハッ?!」


 否定した瞬間、ツキコさんが居る方向から、チャキっと刃が引き抜かれた音が聞こえた。

 僕に逃げ場はないらしい。


「……はい、ファラさんと乗りたいです」


「……あっそ、別にいいわよ。折角馬があるんだし、使わないのは勿体無いからね。クー、馬の操作は任せるからね」


「えっ、僕できないですよ?」


『…………』


「ああそうよね、期待した私が馬鹿だったわ。じゃあ私がやるから、あんたは後で掴まってなさい。……変な所触ったら突き落とすから」


「しません。絶対にしません! 何が有ってもしませんとも!」


「フンッ!」


 僕はファラさんに平手で叩かれてしまう。

 とても痛い。


「あいた! 何故?!」


「気にしないで、ただちょっとムカついただけだから」


 そう言うと借りた馬に飛び乗ってしまった。


「ほら、手を出しなさい。どうせ一人じゃ乗れないでしょ」


「あ、はい」


 僕は手を貸されてその後に座った。

 落ちないようにお腹に抱き付き、馬が移動を始める。

 一般に馬の常歩(なみあし)、つまり通常歩行は、人の歩く速度の半倍ほどと言われる。

 だからきっと六時間ぐらいはこの状態が続くのだろう。


 ファラさんの体温を感じながら、なんだかほっこりした気分になった。

 ガッツリと人の体温を感じるのは久しぶりだ。

 小さい頃にお母さんに抱かれていたのを思い出す。


「お母さん……」


「誰がお母さんよ。馬から蹴り落とすわよ!」


 自分の事だと思ったのか、ファラさんは怒ってしまった。

 別にファラさんに言った訳じゃないのになぁ。


「ご、ごめんなさい! ちょっと昔を思い出してただけですから!」


「おいお前達、のろけ合ってる暇はないぞ。先にはディーラが待っているからな。それにどうやら敵がおいでなすったようだ」


「「のろけ合っていません!」」


 否定して前方を見ると、前にゴブリンの集団が見えた。

 数は十五体。

 どんな環境にも適応する種族だ。

 一対一であるなら僕でも勝てるけど、今回は数が多い。


 因みにゴブリンの資料は。


 名前 :ゴブリン

 レベル:5

 HP :20

 MP :0

 力  :35

 速  :45

 大  :110

 危険度:2

 技  :ナイフによる攻撃。投げナイフ。

 考察 :緑色の体が特徴的。

     武器は体が小さい為、小さなナイフぐらいしか持てない。

     弓は扱えないが、ナイフを投げることが稀にある。

 

    一対一であれば普通に勝てる存在だ。

     能力的には一般人の大人に劣るが、ナイフという凶器は人を傷つけるのには充分だ。

     初心者は注意を払ってほしい。


 捕捉 :通常のゴブリンの他にも、変異種が多く存在している。

     ホブゴブリン、レッドゴブリン、ゴブリンオーク、ゴブリンオーガ、ゴブリンバット。

     ハイゴブリン、ダークゴブリン、他にも様々な種類が確認されている。

     中にはキングと呼ばれるものも存在するらしい。


 今見えているタイプは通常のものだ。

 ゴブリンは初心者の成長を助けてくれる、意外と必要な魔物ではあるけど、繁殖力が強くて倒した所でまたわき出して来る困った性質ももっている。

 こちらの資料もそろっているし、倒すのも悪くはないだろう。


「おいおい、俺の進路を塞ぐとはいい度胸じゃねぇか。後悔させてやるから掛かって来なよ」


 敵は多く、回避することもできなくはないけど、デッドロックさんは馬を降りてしまった。

 勝手に戦闘が始まりそうだ。


「……殺!」


 そしてツキコさんは至福の時間を邪魔されてご立腹。

 その怒りが僕に向かないならば心強い仲間である。


「仕方ないわね、私も行くから、クーは馬でも護ってなさい!」


「わかりました。弱いとはいえ数が多いので、充分注意してくださいね」


 僕とファラさんも馬を降り。


「この程度に心配し過ぎね!」


 ファラさん達三人はゴブリンに向かって行く。

 僕も二頭の馬を護るためにリュックから鉄棒を取り出した。

 接近戦は得意じゃないし、出来れば来ないでほしい。


 そんな心配が必要ないぐらい三人は活躍し、武器を振るうごとに一体が倒れ、二撃目でまた一体と倒していく。

 倒しきるのも時間の問題だろう。


「でもこの行進は厄介だよなぁ。一応資料に書き込んでおこうか」


 僕は鉄棒を地面に置き、ゴブリンの資料に追記を加える。


「えっと……」


 他のゴブリンは分からないが、通常のゴブリンタイプは集団で行動することがある。

 一体が弱いからといって油断して突っ込んでしまうと中級者でもやられる可能性が高い。


「クー、そっちに行ったわよ! 何座り込んでるの?!」


「えっ、わわわ?!」


 ファラさんの注意でやっと気付く。

 慌てて置いた鉄棒を握ると、ゴブリンが来る前に立ち上がった。

 書いている僕が油断してたら話にもならない。

 接近したのは三体で、もうかなり近い。

 鉄棒を構えて一体に打ち付けた。


「ギャアアアア?!」


 流石に一撃で倒れてくれるけど、残った二体はまだ健在。

 仲間の仇とばかりに僕に襲い掛かって来ている。

 だけど後衛とはいえ僕だって冒険者の資格をも持つ者だ。

 怪我ぐらいは覚悟している!


「ぐう……」


 一方の攻撃をワザと腕で受け止め、もう一方の攻撃を鉄棒でしのいだ。

 かなり痛いけど、研いでもいないナイフは鈍い。

 僕のダメージは致命傷には至らない。


「たああああ!」


 一体を弾き飛ばし、腕に突き刺した相手に鉄棒をぶつける。


「ギャン」


 残った一体は。


「あんた……クーに何してるのよ!」


 ファラさんに背中を斬りつけられて一撃で倒されていた。

 僕が三体を相手にしている間に、全部倒してしまったらしい。


「痛い」


 傷がズキズキと痛む。

 ちゃんと回復薬を持って来てよかった。

 直ぐにリュックから取り出そうとするのだけど。


「クー手当は私がやってあげるわ。傷口を見せて!」


 ファラさんは心配して自分の持っていた回復薬を取り出し、僕の傷にたっぷり使ってくれた。

 こういう時には結構優しかったりするんだよなぁ。

クー・ライズ・ライト (僕)

ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)

スラー・ミスト・レイン(僕の上司)

デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)

アーリア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)

ミア     (絶望のアギア・賞金首・ナンバー9)

ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)


回復薬の情報。

薬草に魔法の効果を付与した物。

上級な物になるほど薬草の種類が増やされ、魔法効果も上昇する。

ギルドの物は格で言うと中級ぐらい。

最上級の物になると一瞬で傷が無くなるレベル。

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