表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/433

生きて行く食料をください

街道で襲って来た冒険者を返り討ちにして、放置された馬車を片付けた僕達はローザリアに戻った。

スラーさんにナンバーズであるミアさんの報告をし、何やかんやで拾った僕が面倒を見ることになるのだが、そのために相当な金銭が僕の手から逃げて行く。

 ミアさんにある程度生活のことを教え込み、ようやく手がかからなくなってきた頃。

 もうそろそろギルドからの通達が有っても良いはずだが、今の所何の連絡も来てはいない。

 そのことも気になる所だけど、僕はそれ以上に心配していることがある。

 今、僕は、とんでもない金欠状態に陥っているからだ。


 自室の床に座り込み手持ちのお金を数えているのだけど、しかし何度数えた所でその金額は変わらない。


「お、お金がない。明日の食費もピンチだ……いや、今日も不味いかもしれない。塩と小麦粉でパンっぽいものを作ってしのぐしか?」


 それもいずれ無くなってしまいそうだが。

 給料日まではあと十日。

 僕だけなら我慢できるのだけど、もう一人居るミアさんの分の食糧も確保しなければならない。


「そうだ、野草を取ってしのげば! それならタダだ!」


 思いついたはいいのだけど、僕には毒と野草の見分け方が分からない。

 ミアさんなら知ってるかもしれないが、今、外に連れ出すのは不味いだろう。

 もうたぶん一人でも大丈夫だと思うけど、一応ファラさんにでも頼んでみるとしよう。

 断られるかもしれないが。


 で、食料のことは一体誰に頼むかが問題だ。

 アーリアさんは今日も出勤していて仕事しているはず。

 ギルド職員がこんなことでギルドに依頼を出す訳にはいかないし、そもそも依頼料がない。


 今日休みで、なおかつ僕に手を貸してくれる野草に詳しそうな人は……?


「それで俺のとこに来たのか。確かに俺は冒険者だったが、草がどうかなんて分かったもんじゃねぇぜ。まあそれでも一つ二つぐらいなら知っているけどな」


 洒落たインテリアが飾られているデッドロックさんの部屋。

 寮の外壁と中との差が違い過ぎて微妙に違和感を感じてしまう。

 しかし、どうやらハズレだったらしい。

 冒険者だから案外知っているかとも思ったんだけど、そうでもないようだ。


「それより坊主、何かしら俺に言う事はないのか?」


 部屋の中で優雅にブランデーをたしなむデッドロックさんは、軽く手を向けて僕に言い返している。


「えっ、もしかしてアーリアさんのことですか? 良いじゃないですか別に、綺麗な人でしょ」


「そいつは認めてやってもいい。しかしだ、俺はディーラ一筋だって決めてんだよ。あのお姉ちゃんにはお前から断わってくんなよ」


「もうこっちに引っ越して来たんですから、昔の恋人は忘れて今の恋に燃えたらいいでしょうに」


「そんなダセェマネが出来るかよ。俺の愛は永遠にたった一人の物なんだぜ。邪魔して貰っちゃあ困る訳だ。今回は許してやるが二度目はねぇぜ。まああのお姉ちゃんが俺に惚れちまうってのは分からない話じゃねぇんだけどな」


 デッドロックさんは自分の容姿に自信があるらしい。

 まあ僕から見ても、それなりにはカッコいいとは思う。


「え~っと、好意を向けてくれる人をふるのに、他人を使うのはダサいんじゃないですか? その辺は自分でお願いします」


「ハッ、言うじゃねぇか。確かにそうかもしれねぇ。じゃあ自分のケツは自分で拭くとするぜ。話はそれだけか?」


「いえ、じつは他に頼れる人が居なくて、誰か手伝ってくれる人を知りませんか?! 出来ればタダで手伝ってくれる人だと嬉しいんですけど!」


「こっちに越して来たばかりなんだぜ? 知り合いなんてもんはお前等意外には……。ああ待て、一応相棒の奴になら話を通してやってもいいぜ。奴が聞いてくれるのかは知らねぇけどな」


「是非お願いします!」


 ギルドでは相棒を組むか、またはチームを組むことが義務付けられている。

 ちなみに僕とファラさんの関係もそんなものだ。

 一応僕が先輩なんだけど、最近ではファラさんの方が立場が上になってる気がする。

 いや、考えてみれば、元からあんな感じだった気がしないでもない。


 その話はまあ置いておいて、今はデッドロックさんの相棒のことだ。

 名前はミカグラ・ツキコ。

 名前と家名が逆になってるという不思議な名前を持っている。

 ツキコが名前だけど、本人は好きではないらしい。


 彼女の両親はそれなりの有名人で、一代で巨万の富を築いたという。

 その二人は異世界から来たと吹聴しているけど、ハッキリ言って誰も信じていない。

 それは彼女自身もだ。

 両親のことでいじめられた過去もあると、噂で聞いたことがある。


 一応この部署が立ち上がった頃から居る人物で、同期と言っていい人物なのだけど、ハッキリ言って僕は彼女の力をあまり知らない。

 積極的に話しかけて来ることもないし、僕から話しかけても返事ぐらいしかしてくれないのだ。

 ちなみに同期と言っても年上で、女性陣の中でも一番年上だと思う。


 その人の部屋に、デッドロックさんと一緒に向かっている。

 まあ二部屋隣なので十秒もしない内に着くのだけど。


「おい居るんだろツキコ、ちょっと用事があるんだ、出て来てくれ」


 ツキコさんの部屋の前でデッドロックさんが声を掛けるが、返事は聞こえてこない。

 しかし、部屋の中には動く気配がある。

 たぶん居留守でも使っているのだろう。


「居るのは分かってるんだよ。相棒の俺に居留守キメこもうなんざいい度胸だ! 部屋に入るぞ!」


「ま、待って!」


 中から声が聞こえたのだけど、デッドロックさんはもう扉を開いてしまったらしい。

 不用心だから鍵を閉めておけばいいのに。

 扉は開かれ、部屋の中にツキコさんの姿が見えた。


「……あっ!」


 その中の光景に、僕は驚いてしまう。


「おっ……まあ、悪かったな」


 部屋の中にはツキコさんが下着姿で立っていたのだ。


「……キャアアアアアア!」


 年上なのに年下に見えるほどに童顔で、背も低くてそうとう子供っぽく見える。

 胸もそれに比例して小さいようだ。

 そんな小さなお姉さんは、どうも着替えをしようとしていたらしい。


「おっと済まねぇ、今のは俺が悪かった」


 デッドロックさんは直ぐに扉を閉めたのだけど、この出会い方は印象が悪そうだ。

 手を貸してくれなくなったら困ってしまう。

 変に顔を崩さないように注意しよう。


「おいツキコ、悪かった。機嫌を直してくれねぇか?」


「…………」


 しかし中の反応はまた消えている。


「坊主、ツキコが出て来ても妙な笑い顔なんてするんじゃねぇぜ。気分を悪くするからな」


「はい、わかっています。これ以上機嫌が悪くなったら頼み事なんて出来ませんからね」


 僕達は扉の前でジッとして、ツキコさんが出て来るのを待っている。

 時間にして二十分。

 流石にもう着替え終えているはずだ。

 でもさっきのでもう出て来ないのかもしれない。


「デッドロックさん、今日は無理なんじゃないでしょうか?」


「まあ待て、気弱とはいえツキコは戦士だ。こんなことでくじけたりしない……はずだ」


 あんまり自信がない感じがする。

 まだ日が浅い相棒だし、全てを知っているはずもないか。


「でもこれ戦士とは全く関係ないことですよ?」


「……ふむ、やっぱりダメか? 仕方ない帰ると……」


 そのタイミングでガチャッと扉が開き、ツキコさんは武装した姿で現れた。

 全体を覆う黒い衣服に、口には布マスク。

 少し開いた胸元には鎖帷子の軽い物を着ているようだ。

 腰にある武器は剣とは少し違う雰囲気をもつ。


「あ、あの、私に何かご用でしょうか……」


 表情は変わっていない。

 立ち直ってくれたのだろう。


「ようツキコ、さっきは悪かったな。この坊主が少し話があるってんだ。聞いてやってはくれないか?」


「た、頼み?」


 ツキコさんが僕の方に振り向いた。

 ここで言わなければ待った甲斐もない。

 言ってしまおう。


「こんにちはツキコさん。ちょっとしたことで僕は今月ピンチなんです。いやまあ来月もなんですけどね。それであの、出来れば野草とかキノコとかの見分けをして欲しいのですけど、お願いできませんか?」


「ほ、報酬は……?」


「いや、あの、できれば無料でお願いしたいんですけど……」


 ツキコさんは少し考えている。

 まあ確かに相当無礼なことを言っているのだけど、背に腹は代えられないのだ。

 僕のお腹は今にも音を立てようとしている。

 何とか聞いて貰いたいところだ。

 あ、鳴っちゃった。


「……ん、いいよ」


 お腹の音が良かったのか、ツキコさんはこの頼みを聞いてくれた。


「ありがとうございますツキコさん。これで生活ができるかもしれません!」


 僕は頭を下げてお礼を言った。


「まっ、俺も暇だから付き合ってやるぜ。美味い物が食えれば特にいいんだがな」


 デッドロックさんは取れる食材に期待しているのだろう。

 でも野草は食えるというだけで、美味いとは別の話なのだけどなぁ。


「あ、はい。多く取れた時には……まあそれなりに分けますんで。それでどうぞよろしくお願いします」


「よし決まったな。まあ俺には草の見分け方は分からねぇから、野生動物でも狩っといてやるぜ。お前も肉が食いたいだろ?」


 僕にとって素晴らしい提案です。


「は、はい! 僕、肉が食いたいです!」


「……じゃあ南の森にでも行ってみようか? あそこは安全になったって聞いたし、果物も生っているかも……」


「はい、果物美味しいです。是非行きましょう!」


 こうして僕達三人は南にある森に向かうのだけど、森には魔物が出るから注意しないとならない。

 だから僕は、大きめのリュックを背負い、鉄の棒を四本持って、出来る限り荷物を空にして南の森へ向かって行った。

クー・ライズ・ライト (僕)

ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)

スラー・ミスト・レイン(僕の上司)

デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)

アーリア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)

ミア     (絶望のアギア・賞金首・ナンバー9)

ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ