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あの……来月ピンチなんですけど

 僕達はミアさんを連れ町からの移動を始める。

 森の街道の入り口に到着するが、ファラさんは警戒していた。

 見えない馬車の裏側を狙い、持っていたナイフを投げたりしている。

 しかし敵は居ないようで、そのまま話しながら移動を続けるのだが、ファラさんはボーナスがもらえるのかと疑問を持ったらしい。

 お金が欲しいファラさんはミアさんを逃がそうとするのだけど、そこに冒険者が襲って来たようだ。

 結界の内で放たれた氷の力は、数値となって上方から落ちた。

 その数値とは……マイナス四十五度。

 しかし魔法を放った相手は、僕の力を何も知らないらしく凄く驚いているようだ。


「ど、どうなっている。俺は確かに魔法を?! も、もう一度だ……アイス・コールド!」


 またも同じ数値が結界内に落ちて来た。

 まあ、測量士なんてマイナーな職業はギルドぐらいにしか居ないけど、もう少し勉強した方がいいんじゃないですか?


 わざわざ相手に本当のことを言う必要もないし、とりあえずこのままでもいいだろう。

 そして僕は、落ちて来た数値で能力の変化を行う。

 マイナス値では能力をプラスすることは出来ないが、相手の能力を減退させることができる。


「あの者に減退の効果を!」


 ファラさんの相手を指さしターゲットにすると、この能力を付与させ、相手の能力値に影響を与えた。

 速度マイナス三十と、効果時間十五秒。

 それだけの数値を下げられるとどうなるか。


 かなりのレベルがなければ一般人並みに速度が落ちてしまう。

 それがなくとも元から押していた相手だ、そんな相手にファラさんが負ける理由がない。


「はああッ!」


「がああ?!」


 ファラさんは動きの落ちた相手を難なく切り倒し、一瞬後には勝負が決まっていた。

 倒した相手を振り返らず、ファラさんは僕に魔法を使った奴に向かって行く。


「ひっ……ア、アイス……」


 思わず魔法を使おうとしてるようだけど、その効果は発動しない。

 もう一つの炎の魔法を使えばいいのに。

 そう思っている間にも男が倒され、隣にいたもう一人は手を挙げて降伏している。

 しかしファラさんはそれを許さず、相手を鞘で叩き伏せると、防御を続けるアーリアさんの場所へ移動した。


 残っているのはたった二人。

 一対一となれば決まった様なものだ。

 アーリアさんが相手を防御している間にファラさんが一人を倒し、そしてまた一人が倒れる。

 二人は、たった十数秒で勝利を収めた。

 倒れた六人は一か所に集められ、ファラさんが剣を突きつけている。


「さて、こいつらどうしましょうか?」


「ゆ、許してください! ほんのつい出来心で。お願いします、命だけはお助けを!」


 相手は怯えていて、もう抵抗する意思をなくしたらしい。

 冒険者にこれ以上やるのは不味い。


「いや、どうするって言っても、殺す訳にはいかないじゃないですか。放って置けばいいんじゃないです?」


 僕はファラさんを制止しようとするのだけど。


「また繰り返されると困るでしょ。そうね、二度とやらないように罰を与えましょうか」


 六人に何かさせる気なのだろう。


「あんた達、森の入り口の馬車を起こしなさい。それを押して先の町まで運んで行きなさい。もし出来なければ、ギルド職員としてあんた達の冒険者の資格を取り上げるわよ」


『や、やらせていただきます!』


 六人は反省したように声を出している。

 僕達も手伝い、転がされた馬車が起こされると、六人は馬の居ない馬車を町に運んで行く。

 あの六人が反省するかどうかは分からないが、これであの邪魔な馬車が無くなった訳だ。

 じゃあ報告する必要はなくなったかな。


「あ~、疲れたわ。もう帰りましょう」


 ファラさんはローザリアに歩き出した。

 それに続き僕達も歩き出す。


「逃がせって言わないんですね」


「はぁ、連れて行かなきゃ魔物に戻るし仕方ないじゃない。今更逃がせないでしょうが! 私だって我慢してるのよ!」


「あ、はい、ごめんなさい」


 僕は素直に謝りその場をやり過ごす。


「クーちゃん腕でも組んで行きましょうか?」


「いや、大丈夫です」


 アーリアさんの言葉を軽く否定し、移動しようとしたのだけど。


「ヨメ、ワタシ、ハラヘリ。メシ、クレ」


「ああ、ご飯食べてないですもんね。干し肉がありますから食べます?」


「クウ!」


 僕が干し肉を手渡すと、ミアさんはガシガシと噛り付いている。

 そのまま食べさせながら歩かせ、僕達は町へと戻って行った。


 ローザリアのギルド。

 人は殆ど出払っているけど、スラ―さんは事務仕事に追われている。


「ああ、少し待っていてください。キリの良い所までやっておきますから」


 スラーさんが手を止めたところで、僕達は今までの報告をしたのだけど。


「そうですか。ご苦労様でした。日をまたぐ仕事で疲れたでしょう、今日は帰って休んでもいいですよ」


 当然隣に居るミアさんの事も伝えてあるのだけど、スラ―さんの反応はその程度だった。


「ちょっとスラ―さん、私のボーナスは?!」


 今まで僕の話を待っていてくれたファラさんは、もう良いとばかりにお金の話を切り出した。

 やっぱり諦めてはいないらしい。


「いやファラさん、その話は後で良いんじゃないですか? 他に話さなきゃならない事もありますし。後でちゃんと説明しときますから」


「駄目よ。今後の生活に関わる重大な話よ! 有ると無いのでは雲泥の差だわよ!」


「はいはいファラちゃん落ち着いて。お姉さんが相手してあげるからね」


「ちょっと引きずらないでよ馬鹿力! 今重大な話をしてるんだから! こらああああ!」


 ファラさんはアーリアさんに部屋の奥へ連れて行かれてしまった。

 少し空間が静かになった。


「まあボーナスは支給されると思いますよ。そのことは後でライズ・ライト君が教えてあげてください」


「あ、はい。では失礼します……じゃなくて、ミアさんのことはどうするんですか。一応反省していますよ」


「ワタシ、ヒト、オソウ、ナイ!」


 ミアさんは自分の言葉で宣言した。

 ある程度の言葉も分かるし、自分の気持ちも言葉にも出せる。

 姿以外は普通の人と変わらないだろう。


「ふ~む……残念なことに、本人が反省しているから良いって訳じゃないんだよねぇ。罪には罰をって、それは君もわかいるでしょう?」


「いや、まあ、そうなんですけど……」


 人を傷つけたら罰を受ける。

 当たり前のことだ。


「このまま何も無しってことでは傷を負った人は納得しないでしょう。依頼書も取り下げなきゃいけないし、上への報告もなしってわけにはいかないのですよ? でもまあ、そう悲観する事もないと思いますよ。ギルドは罪人の罪を問う組織じゃないのですから」


「ああはい」


 そう、ギルドは別に裁判所じゃない。

 捕まえた罪人は国に引き渡され、後の処理は裁判で決められる。

 ただしそれは人であるならの話だ。


 魔物については裁判は行われない。

 国に引き渡されることもない。

 そもそも依頼書を出した時点で、全部討伐案件なのだ。

 賞金首の制度が始まって、初めての例外だった。


「まあ悪いようにはしませんから、あとは私に任せておいてください。というわけで、決定が下るまでは彼女のことは任せますよライズ・ライト君。曲がり間違っても町中で人を傷つけたりさせないようにしてください」


「えっ、僕が面倒みるんですか?!」


「それはそうでしょう。ギルドは魔物の預かり所じゃないんですから。君が拾って来た命です。住処の提供や食事は保護者である君の責任ですよ。それと彼女の行いで何か有れば、君は責任で賠償などを問われますので、充分肝に銘じておいてください」


「うっ……」


「今更放り出すなんて言わないでくださいね。その時は君のお金で依頼を出してもらいますから」


「わ、わかりました」


 何方にしても相当な金が飛んで行きそうだ。

 今更放り出す気はないけど。


「ヨメ、カゾク、イッショ!」


「そーですねー……」


 ギルドの結論が出るまでは、僕がミアさんの面倒を見る事になってしまった。

 流石に僕の自宅には住まわせることが出来ず、ファラさんとアーリアさんにお願いして見たのだけど。


「嫌よ」


 ファラさんには軽く断られ。


「う~ん、お姉さんもそんなにお金がないし、クーちゃんの頼みでも無理だわ。それよりクーちゃん、私に紹介してくれる人って誰なのかしら? もしかしてクーちゃんが相手してくれるの?!」


 アーリアさんにも断られてしまう。

 ついでに約束のことを忘れてはいなかったらしく、僕も当初の予定通りにデッドロックさんのことを話すことにした。


「いや、違います。それはあそこの机のデッドロックさんって人のことです!」


 僕はギルドから出掛けているデッドロックさんの机を指さした。


「な、なんですってええええええええ?!」


 アーリアさんの目が代わり、得物を狙う狩人の目となった。


「お姉さんあの人ちょっとタイプだったの。次会った時にアタックしてみるわ!」


「はい、頑張ってくださいお姉さん。僕もかげながら応援していますね!」


「ありがとうクーちゃん、私頑張るわ! ふられた時にはクーちゃんが相手してね!」


「それは嫌です」


 僕の否定を気にせずに、アーリアさんは自分の机にある手荷物を持つ。


「じゃあまたねクーちゃん、私は勝負服を買いに行って来るから!」


「はい、いってらっしゃ~い」


 アーリアさんは急いで外に出て行った。


「ワタシ、ジャマ?」


 しかし嫌がられてしまったミアさんは、少し悲しそうな顔をしている。


「少しというか壊滅的に懐が痛いですけど、ミアさんは心配しなくても大丈夫です」


 僕はそれからギルドの寮の寮長に頼み込み、開いている部屋を一部屋借り受けた。

 この家賃だけでも来月の給料は火の車である。

 それに生活費や衣服の代金とか、更にはスラーさんにもお金も絶対に返さなければならない。


 ボーナスをくれるとは言ってたけど、これはどう考えても足が出てるんじゃないだろうか?

 もう僕のコレクションである魔道具類を売るしかないのかもしれない。


 ……ああ、やっぱり売りたくない。

 何か手はないのだろうか?

クー・ライズ・ライト (僕)

ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)

スラー・ミスト・レイン(僕の上司)

デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)

アーリア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)

ミア     (絶望のアギア・賞金首・ナンバー9)

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