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この世界は残酷なようでいて優しいようでいてやっぱりただの雑魚だ

「君たちは一体どういう理由でここにいるんだい?」


 らーめんを食べ終えた僕は目の前の二人に問いかけた。

 血溜まりと僕の身体は接続している。殺せば殺すほど強くなっていく系のあれだろう。なんと気持ちの悪いことか。殺すというのは殺すことであり命を奪うことである。それ以上でもそれ以下でもない。命を冒涜するな。……と思ったら僕の見間違いだったようだ。ああよかった。僕の身体って基本的に赤っぽいしね。しょうがないよね。


「わたくしは貴方様にお礼がしたくて……うぅ、恥ずかしいです」


「僕にお礼をするのがそんなに恥ずかしいのか」


「まあ控えめに言って……一家の恥ですね」


「殺してやろうか」


「待ってくれ」

 

 ん、ナンダ?邪魔するのか?


「どうか、罰ならばこの身に」


 ホホォ、スバラシイ奉仕精神だ。

 ……ウム、迷うナ。ここで田中を殺せば面白い。しかし、この女騎士を殺すのも捨てがたい。いっそ両方殺すという手も……いや、それではあまりに品がない。


「ソウイエバ、良く分かったね。僕が田中さんを殺そうとしたこと」


「私の責務は姫様を護ることですので」


「よし、ならば貴様を殺そう」


 ワタシは感服した。素晴らスバラシイ気高き魂には相応の礼儀を以て自殺せねばなるまい。


 首を切り落とした。


「あら、メーネがいなくなってしまいました」 


「メーネという名前だったのか」


 いやースッキリした。人を殺すというのは思ったよりも重いことだ。つまり、かなりスッキリする。びっくりするくらいスッキリする。人の命を、人生を、ワタシがこの手で終わらせたのだ。


「それにしても味気ないというか、もう少しドラマチックでもよかったですのに」


「そうだな、重厚感というか、リアリティというか。血の匂いが足りない」


 それはこの私の存在のことでは?いや、この世界が悪いのだ。間違いなく間違いない。


 野ざらしの死体。青く淀んだ歪んだ空。小径を往く。赤い腹のイモリが嘶く。清流の流れは影に沈む。


 美しい景色と私の自我。


 どうしようもないことはどうしようもなくて。


 私が構築される。され続けている。


 ただ一つの敗北。


 あ、ああああ、ああ、あああああああ、あ、あ、あああ。


 なんか釈然としない。と、再構築中に今度は女騎士が口を開いた。


「私は姫様を護る為に」


「それ必要?」


 完全に名ばかりの仕事じゃん。形骸化した名前。

 女騎士は嘔吐いて言った。


「必要だ」


 マジかよ。やべえやべえやべえよこの世界。絶望の泥に焼かれて死ぬ。


「だから、貴様も姫様に何かしたらすぐさま斬り捨てるぞ」


「そこは何かする前に斬り捨てろよ」


 そもそもさっきその姫様を殺そうとしたんだが。二回も。それはいいんだろうか。何がセーフで何がアウトか分かんない。僕はそんなものに囚われず生きていく。


 ……もしかしてあの青年、クッキーが食べたかったんじゃ?





 流転する流転する。そこに意味はない。何もないから何もない。

 私には何もできない。世界がずれて組み替えられる。ただ神の思うが儘に。





 僕は女騎士を生き返らせることにした。彼女の気高き魂は何物にも替え難く、やはりこの姫様は殺してやりたい。


 たのしいたのしい異世界生活が始まる。


 本当に本当に、楽しいらしい。それは確からしい。


 ここはゴミ箱だ。忘れ去られたものが最後に行き着く場所だ。


 不穏な宿に鬼が出る。川岸に雪が積もっている。


 何が楽しくて生きているんだろう。


 何が楽しくて?


 そうだ、そうやって私は死んだんだ。

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