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春と沙羅

はますた

作者: 川里隼生

 春から夏に変わる頃のある日、智花ともかは野球を見に行った。大学の友人に誘われたのだ。大学といっても、四年間を無意味に過ごす若者たちの掃き溜めのような大学である。名前も広く知られていない。智花が受験したときも定数割れしていた。そのような大学で、智花はやはり無意味な毎日を送っていた。


 負けが濃厚な試合展開だったが、智花たちは地元球団の応援を続けた。七回終了時点で八点差。智花が高校二年生の年、今日の対戦相手は約四半世紀ぶりの優勝を果たした。智花は野球をあまり見ない。今日のように誘われない限りは入場券を買うこともしない。


 少し顔の向きを変えて、外野席のちょうど中央にある電光掲示板を眺めた。もうすぐ四番打者に打順が回ってくる場面だった。智花はその選手の応援歌を今日初めて聴き、すぐに気に入った。高校時代に仲が良かった友人に教えてあげたくなった。きっと彼女はこう言うだろう。「ああ。知ってる」と。


 高く横浜の空に上がった打球は、右翼手の頭を軽々と越え、観客席に飛び込んだ。球場は今日一番の歓声に包まれた。四番打者の本塁打で一点を返し、差を七点に縮めた。敗戦濃厚であることに変わりはない。しかし、智花は少しずつ、試合から目が離せなくなっている自分に気づき始めていた。高校時代のような、何かに全力になる楽しさを思い出した感覚がした。

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