転生ブレイカー
気まぐれで書いたお蔵入りの古い作品をまとめました。
――1――
転生者は1人残らず抹殺せよ!!!!
異世界転生など許してはならぬ!!!
春の陽気。オンボロ宿屋に1人の漆黒の甲冑姿が現れる。
「い、いい、いらっしゃいませ…!」
突然の事に驚く店員。無理も無い。
「連れと合流だ…」
漆黒の甲冑はカウンターに金を置き、静かに二階へ上がっていく。
「ご、ごごごごゆっくり、どうぞ~」
ビビる店員。無理も無い。
漆黒の甲冑は203号室の前で止まり、背中に背負った漆黒の大剣でドアを袈裟斬り! 真っ二つに両断!!
室内では男が女性3人と宜しくヤっていた…。
突然の訪問に止まる4人。一拍おいて、女の悲鳴が宿中にこだまする。
「ハーレム系転生者だな…?」
漆黒の甲冑が問いかけた。
男は狼狽し、後ずさり。全裸である。
「ここは前世の憂さ晴らしの場では無い!!」
漆黒の甲冑は大剣を振りかぶると、音も無く転生者を叩っ切った!!!
「キャーーーー!!!!」
一段と強い女の悲鳴。うるさい。
「転生者に関わった者も残らず斬る!!」
漆黒の大剣が女Aに突き刺さる。女Bの首は吹き飛び、鮮血が部屋を朱に染める!
「や、やめて…お願い……な、何でもするから!!」
一番良さげな女Cが命乞いに走る。無理も無い。
「 女に興味は無い!!!! 」
漆黒の大剣が鋭く光り、斬擊が女Cの命を奪った…。
漆黒の甲冑が1階に降りてくると、店員がカウンターの下でガタガタ震えていた。
「すまん、部屋を少し汚した。これは手間賃だ」
と、何かをカウンターの上に置いた。
それは先ほど斬り捨てた男の首だった……。
「ヒィィィィィ!!!!!」
「転生者の首だ。転生オーラが消えかかっているが、多少の金にはなるだろう」
そう言い残し、漆黒の甲冑は静かに宿を後にした……。
――2――
漆黒の甲冑を身に纏い、転生者を亡き者にする転生ブレイカー!
寂れた荒野に1件の酒場。ならず者のたまり場だ!
酒をあおり、博打、薬、女、様々な快楽が目白押し!!
一番奥のソファに座る色男。両脇に良い女をはべらせ、肩に手を回しイチャついている。
ドガシャーーーン!!!!!!!
突如酒場の壁が吹き飛んだ!!
狼狽えるならず者たち。ソファの色男は微動だにせず、乳を揉むのは止めない。
見事に空いた穴から、漆黒の甲冑が静かに姿を現す。
「転生者のたまり場はここか…?」
その姿に一目散に逃げ出す雑魚たち。ソファの色男はまだ乳を揉んでいる。けしからん!
色男と目が合う漆黒の甲冑。
「 エロ 女 セ〇クス!! ここは風俗では無い!!!!」
怒号と共に大剣を抜く漆黒の甲冑。
色男が重い口を開く。
「まったく、お楽しみを邪魔しやがって…」
指をパチンと鳴らす色男。その指先から巨大な火の玉が飛び出した!
「あばよ!」
漆黒の甲冑は、静かに大剣を薙ぐと火の玉を真っ二つにした!
「…なっ!!」
驚く色男。その顔には死相が出ていた。
ソファの上から半分に斬られ、地面に落ちる色男。
ついでに女の首も刎ねる!! 念入りに刎ねる!!
男の頭を掴むと、漆黒の甲冑は静かに酒場を後にした……。
――3――
素晴らしい天気! 実に良い転生日和!
森に1人の男がいた。
異世界に転生して間もない。右も左も分からない。初々しい。
その男に静かに忍び寄る漆黒の甲冑!
男が甲冑に気が付いた!
「あ、あんたはいったい!?」
「転生者だな?」
「一体何が何だか! 説明してくれ!!」
「……転生者は斬るのみ!!」
ブシャーー!っと鮮血のシャワーが降り注ぐ森。
漆黒の甲冑の視線の先には、年端もいかない少女が1人。
「これから出会うところだったか…。命拾いしたな」
少女はこちらに気付かず、歩いていってしまった。
「 転生者は斬る! 絶対に斬るのみ!! 」
転生ブレイカーは今日も転生者を刈り続ける……。
――4――
畑 畑 畑 見渡す限り一面の麦畑!!
暖かい太陽、美味しい水、澄んだ空気、きれいな景色、やさしい人々。
まさに ほのぼのスローライフ!!!
そんなほのぼのとした空気をぶち壊す、漆黒の甲冑を身に纏いし転生ブレイカー。
麦畑を低空で突き抜け、くっそボロい一軒家へ突っ込んだ!!
ドガァァァン!!!!!
パラパラ……パラ…
崩れた瓦礫を吹き飛ばし、中からブレイカーが姿を現した。
「……逃げた…か?」
壊れた一軒家からは若い男女が手を繋ぎながら懸命に逃げていた。
「な、何事ですか!? ご主人様〜」
メイド風の女が片手で裾を持ち上げながら息を切らし走る。
「し、知らない!! でも、逃げないとヤバいのは確かだ!!」
ご主人様と呼ばれた男は、身なりはみすぼらしいがメイド風の女を従えている辺り、只者では無い何かを感じ取れる。
畑を抜け、森の奥へと進む2人。疲労の色が絶えない。
「はぁ…はぁ…。こ、ここまで来れば………」
「無駄な足掻きを…」
突如目の前に現れたブレイカー!!一体どこから現れたのか!?
「誰だ!! 俺のスキルで気配を完全に消したはずだぞ!!!! 」
焦る男。女の頭には絶望の二文字が過る。
「転生者が!! 我から逃れる事は出来ん!!!!」
男の身体を大剣が通過し、男の下半身だけがその場に残り、切れた上半身が森の木に叩きつけられた!!
「ご、ごしゅ…じん……さ…ま…」
一滴の涙をこぼし亡き男を想う女。その頭上にはブレイカーの大剣が光る…。
「 ほのぼのスローライフならあの世でするんだな 」
男に寄り添う様に倒れる女の亡骸を尻目に、ブレイカーは静かに去るのであった…。