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託した想いは…
それから、少し経った頃。
私は、お気に入りの場所にいた。
今日は、来ていないみたい。
その方が良かった。
彼がいたら、全部話してしまうから。
枯れてしまった彼岸花を見ながら、そんな事を思う。
事前に、家で書いてきた手紙を木で出来たベンチの上に置いた。
飛んでしまうといけないから、石を上に置いた。
「これで、大丈夫…」
何が大丈夫なのか分からないけど、呟いた。
風に揺れる私の服は、紺色の花柄のワンピース。
いつの日か、彼が"似合ってるよ"…と言ってくれた。
彼には、たくさんの幸せを貰った。
恋を知る事が出来た。
「…ありがとう。月がきれいですね」
月がきれいですね…に託した私の"好き"は、暗闇に消えた。
そして、私はこの日を最後にこの場所へ行かなくなった。
いや、行けなくなってしまった…かな。