hana 第12章
hana第十二章更新です。最近は小説に入れる曲を自分で弾いてから書いています。
「月の光は」自分も大好きな曲です。
部屋に響く音色。忘れられないこのピアノの音。
俺の、俺だけの音。
自分の音だけが響く、薄暗い部屋。
残りあと少しで終わる…
ドビュッシー作 「月の光」
忘れたくても忘れられない。
この曲は…父さんが好きだった曲。
第十二章 「月の光」
ウソつき…曲が終わったと同時に響いたその声に、声を荒げた。
蓮「お前…寝てたんじゃないのかよ」
葵「横の部屋でこんな音弾かれたら…誰だって起きるよ」
蓮「すまん…悪かったな。」
この部屋防音で、そんな音聞こえないはずなんだけどな…
葵「弾かないって言って、結局弾きたいんじゃん」
蓮「そーゆーわけではない」
葵「月の光…だよね…」
蓮「父さんが好きだった曲なんだ」
葵「私も弾く。天国にいる蓮のお父さんに届くように…」
彼女が弾くピアノは、自分のものとまるで違っていた。
その丸みのある優しい音に、自然に涙が零れた。
同じはずなのに、やけにゆっくりと時間が流れていた。
カーテンの隙間から溢れる月の光。
彼女は
美しかった。
葵「どうだった?って泣いてるし」
蓮「よかった…けどリズムが甘い。自分に酔いすぎ。アレンジしすぎ。」
葵「なによそれ。もう寝る。おやすみ。」
蓮に少しでも笑顔が戻ってくれて良かった。
葵「明日からだから。楽しみにしといてね。蓮」
バタン。戸が閉まる音がピアノ部屋に響いた。
蓮「ありがとな…葵」
こいつといると退屈しなさそうだな。面倒だけどな…
続く…
今まで読んでいただきありがとうございます。
次章からは夏が始まり少し違う展開を期待してください。