第3話 ミレニアその2
時間のあいた時に、ちまちま書いてます。完全に趣味の世界だな〜(笑)
ミレニア到着からリューズ商会で3日間過ごしたマルス達は、それぞれ傷の手当や武具の修理などをしながら待機していた。
そろそろ街の人々も戦の気配を感じだしている。
不安そうな顔をして避難した方がよいかマルス達に聞きにくるものが増えだしていた。
「俺達に聞かれても、わかるわけないだろ」
と、カネリは素っ気ない答えを返しているが、大丈夫とか安易に答えない所に逆に人の良さが出ている。
まぁ、本当に心配なら聞く前にさっさと避難しているだろうとも思うのだが…
その日の夕刻、ミレニアに親衛騎士団が到着、親衛騎士団団長ガルシアは到着するとすぐに、ウェリルを招集した。
「ウェリルよ久しぶりだな。今回はおぬしの判断で敵に裏をかかれず敵の主力を迎え撃つができたようで、騎士団を代表して礼をいう。」
「いえ、砦の防衛も果たせず力なき事を痛感しております」
「気にするな、おぬしが臆病風に吹かれて退却するもので無いことはワシもよくわかっておる」
ウェリルは何も言わずかしこまっている。責任を追及される事も覚悟していたのだがどうやら杞憂に終わったようだ。
実際のところ、あまりにも簡単に砦から退却したウェリルに対し騎士団内部でも非難や、内通を疑う声まであがっていたのだが、ガルシアは全く相手にしなかった。
…見事な引き際がわからないとは、わが騎士団も実戦経験が不足したものだな…
30年の平和はガルシア達実戦を経験している騎士のほとんどを世代交代させていた。
「ところで今後の作戦についてだが、ムスタール現在の状況は?」
ガルシアの後ろに控えていた長身の騎士、副官のムスタールが机の上に地図を広げて説明をはじめた。
「敵の本体はログリン川を渡河した後、街道沿いに進撃その数およそ20000。これに対して遊撃騎士団の待ち伏せが成功、1000程の敵を討ち取った模様です。
現在、遊撃騎士団は一旦後退してダビデスの街の近くで陣を構えています。
ウェリル殿の報告によると、敵の別動隊はダグラス砦を動いていませんが兵力は2000程に増強されている模様です」
「うむ、我々親衛騎士団は予定通り遊撃騎士団と合流して敵の本体を迎え撃つ。
…問題はダグラス砦の別動隊だな、元々数で劣勢の我々が戦力を分散するのは得策ではない」
「そこで…だ、国境警備隊の他の砦はこの際放棄する。ウェリルよおぬしは各砦の兵力を集めてダグラスの敵を牽制してほしい。ムスタール、どのくらいの戦力が集まる?」
「ダグラスより上流の砦からおよそ600。下流の砦からは到着まで少しかかりますがおよそ500ほどかと」
「ダグラスの生き残りを合わせて1300ほどかな、悪いがこの戦力でダグラスの敵を抑えてくれ」
ウェリルが返事をしようとしたとき、
「その役目、我らが代わりにやりましょう」
1人の騎士が入ってくるなりそう言い放った。
「ガルシア様、いきなり失礼いたしました。帝国駐屯軍ナスカ司令官の使いで参った、キグナスと申します。以後お見知りおきを」
優雅に挨拶をする帝国騎士。言葉使いは丁寧だが、属領の騎士に対して侮る雰囲気を滲み出している。そもそも、突然入ってきて作戦に口を出すなど問答無用で追い返されてもおかしくないのだがそんなことは出来る筈がないと馬鹿にしているのだ。
…帝国の威をかる、どぶねずみが。ウェリルは汚いものを見るような気持ちになったが、無論表情には出さない…
「これはこれはキグナス殿、わざわざご足労ありがとうございます。作戦に参加して頂けるということは、駐屯軍の反乱軍鎮圧は無事に終わったということですかな?」
ムスタールが、そう問いかける。
「ご安心下さい。反乱を主導していたものはすでに捕らえておりますので、これ以上の滞在は不要とナスカ様はお考えです」
ムスタールはガルシアの方を向き、
ガルシアの判断を待つ。
「それではキグナス殿、ダグラスはおまかせしましょう。しかし、現状あまり時間がありませんぞ」
ガルシアの考えはもっともなものだ、挟撃を喰らえば騎士団はいつ戦線崩壊してもおかしくない、ムスタールの問いかけるような表情もそれを物語っている。
「ご心配ありません。すでにナスカ様はダグラスに向けて進軍中です、おそらく三日後には到着かと。
蛮族ごとき、わが帝国の敵では無いことを思い知らせてやりましょう」
キグナスは自信たっぷりに答える。
「わかりました。さすがはナスカ様ですな、
的確な状況判断このガルシア騎士団を代表してお礼もうしあげます」
ガルシアの丁重な態度に、キグナスは満足そうに、
「それでは、私はナスカ様の元に戻ります。ご武運を」
颯爽とマントを翻しながら去っていった。
「…はぁ。さすがは帝国貴族、自分が功績を上げれると踏んだら素早い」
ムスタールの言葉に、ウェリルも皮肉っぽい笑いを浮かべる。
「まあそれでも、援軍には違いない。少しは役にたってもらわなければな…」
ガルシアが苦虫を噛み潰したような顔でそうつぶやく。
本来なら盟約では敵の主力にぶつかるのが帝国の責務の筈だ、そのために属領国家は莫大な税を納めているのだから。
…数だけの帝国軍が敵の主力と戦える訳もないか、案外最適な配置かもな…
ガルシアはそう思いながら、ウェリルには当初の作戦通り帝国軍の到着までダグラスの牽制を指示した。
「で、我らは帝国軍の到着後は何処へ?」
「敵主力の後方撹乱を頼む」
「わかりました、持久戦が出来ないように兵糧を狙いましょうか?」
ウェリルの言葉に、ガルシアは満足そうに頷くと
「お主に任せる。最適と思える行動で働いてくれ、連絡だけは密に頼むぞ」
「よろしかったのですか?
あれではウェリルが役にたたなければ、団長の責任になりますが…」
ウェリルが出ていったあとムスタールが問いかける。
「良いのだ、奴に与えられる兵は少ない。自由に動ける裁量位は与えてやらねば…それに奴ならば信用できるしな」
「それは、もと同僚としての信頼ですか?」
「まぁそんなところだ」
…本当ならば、せめて4000でも指揮をさせる事が出来ればこの戦、勝てると思うが、仕方がないことか…
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