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Re:birthday  作者: 雨束 燐
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春 Ⅰ

 「柚葉、着いたぞ、ここが今日からの新しい我が家だ。」

 

 たどり着いたのは、周囲の洋風な新しい家々とは違って、平屋の古い造りだった。鉄の門の向こうにはぬれぬれとした石畳が続いており、玄関の戸は引き戸で小さい。「他の家とずいぶんちがうね・・・」すると、私の不満の声が聞こえたのか父さんは「なにを言うか、こういうのは外見にとらわれてはいかん!人も同じだぞ。よくいうだろ?人の価値は外見にあらず本質にありとな」

 

 「本質ねえ、どうせ安かったのでしょ?」

 

 「うぐっ!」


 図星のようだ、まあ、私もそこまで外見にこだわりはない。私が心配しているのはこれから行く学校のことだ。私立なのに学費が安い、最初はその魅力にひかれて転入を決めたのだが、我に返ればすこし怪しい気がする。もしかして騙されてるのか、それともあまり校風がよくない学校なのか、そういうことをぐるぐる考えてしまう。私はとても疑り深い性格だ、自分でもどうしようもないなと思う時がある。

 中はもっとボロボロな感じを想像してが、そうでもなかった。掃除は行き届いてる、うん、悪くないかも。私は自分の部屋になる場所を確認した。真新しい畳のにおいがこもる和室。まだ満足な家具も揃っていないガランとした部屋だが、もともと私の部屋も余計なものが何もないさっぱりとしていたので、今夜このままでも寝れる気がした。

「柚葉!ちょっと手伝ってくれ!俺一人じゃ荷が重すぎる!!」

 

「はいはい、今行くよ~」

玄関の方から情けない声が聞こえる。あーあ、やっぱり業者の方に頼ればよかったな。母さんもいないし、二人で家具を運ぶなんて、絶対明日筋肉痛になっているわ。

 

 家の中があらかた片付いたとき、父さんは布団の上に倒れて動かなくなった。「なに、死んだふり?」「疲れてるの!察して~、父さんは普段カラダとか鍛えてないから、もう死にそうだ。」そういえばそうだった。父さんに毛布を掛け、私は学校へ向かうことにした。今日は土曜だけれど、通学路ぐらいは覚えないと。

 

 失敗した。完全に道に迷ってしまった。やっぱり父さんと一緒にくるべきだったな。私は方向音痴で地図も読めないから。家から学校まで近いからって油断した。

 

 ここはどこだろう。周りを見渡すと、狭い路地に周りは私以外は誰もいない。困惑していると、小さな影が見えた。よく目を凝らすとそれは人影だった。


 「あのすみません、ここはどこですか?」人影に尋ねる。どうやらその人影は買い物帰りのようだ。こっちに気付いたようだ。(あれ?)近づいてきた人を見て思わずキョトンとしてしまう。その人は私と同じくらいの男の子だった。驚いたのはそこではなく、その子は金色の髪に、深い海色の瞳をしていたからだ。「え、えーと。ハ、ハロー?」


「ああいいよ、僕普通に日本語しゃべれるし。」


「あれ、そうなの」

どうやら言葉は通じるらしい、さっきまで混乱してた頭が正常に戻る。「あ、そうだ。私道に迷ったんです、ここがどこだかわかりますか?」男の子は「どこまで行くの?案内するよ、僕、説明ヘタだし」と言った。親切だな。「はい、私立八代学園までお願いします。」そういうと男の子は驚いた様子を見せた。「へえ、そうなんだ。君が転校生なんだね。」え?どういうことだ。

 

 「僕も八代学園の生徒なんだよろしくね」


 「そうだったんだ、すごい偶然ね。よろしく」

そう言って私は手を伸ばした。彼は私の手を握り、嬉しそうに握手する。「ところで、ここで何してるの?」あ、そういえば私迷子だった。でも言えない!もう高校生なのに迷子なんて恥ずかしくて言えない!

(どうしよう)長い沈黙

私が喋らないのを変に思ったか、彼は私の顔を覗き込んだ。

「ねえってば、もしかして体調悪いの?僕でよかったら家まで送るよ」


「いいですよ!そんな、あなただって忙しいんじゃないの?買い物帰りのように見えるけど」


すると彼は思い出したように「そういえば」と言った。忘れたみたいだな。「僕はこれから学生寮に戻るんだ、でも君何か困ってるように見えるけど大丈夫?」ここは恥をしのんでいうしかない。「う、うん。実は迷子になってて、みちをおしえてほしいな~なんて」だめだ、今までさんざんからかわれた記憶がよみがえり、私は穴に入りたい気分になった。

「そうか、じゃあ僕が案内するよ、口だけじゃ分からないこともあるだろうし。君の家がどこにあるかはわかるかい?」

あれ、意外に普通の反応がかえってきのに、少しびっくり。

「ああ、たしか周りが新しい洋風の家がいっぱいある団地だな。」

「もしかして番地覚えてないの?」

「し、仕方ないだろ!今日引っ越してきたばっかりなんだから」

「それでよく一人で出かけられるね」

仕様がないだろ、父さんはもう動きたくないと言って寝てしまったから。

「でも、まあわかったよ、ここら辺で最近新しい家が建っている住宅地はあそこしかない」

「今ので分かったの、すごいね」

「地元民をなめないでほしいな」

地元民なのに寮暮らし?やっぱりこの人は謎が多いな、一番謎なのは見た目だけど。

「君、今失礼なこと考えてない?」

「えええ!そんなわけないじゃないですか!」

エスパーなのかな、この人。

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