出発前に……
「うぅ。頭がガンガンする」
俺は、痛む頭を抑えて立ち上がった。
「おはよう。涼太郎君」
隣から声が掛けられる。
重そうな鎧を脱いでいる夏菜だ。
「えっと……化け物はどうなったんだ?」
「うん!即死だよ」
不思議そうな顔をした俺に夏菜は嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「え……嘘でしょ。でも、死体が……」
「死体……どうなったか聞きたい?」
急に真面目な顔をする夏菜に俺はブンブンと頭を横に振ることで答えた。
「で、ここは?」
さっきから気になっていたこと。
自分がどうしてここにいるのかということである。
「ここは、近くの洞窟。出発前に準備しておこうと思って」
「……出発?」
「うん。出発。涼太郎くんは私とくるの。王都へ。」
唐突に告げられた事実に一瞬頭の中が真っ白になる。頭がショートしている俺に夏菜は言葉を続けた。
「だって……涼太郎くん日本語しか喋れないでしょ。私のパーティーメンバーに凄腕の魔術師がいてね。その子ならこの世界の言語を理解できるようにしてくれるから。」
「ありがとう」
夏菜には、感謝しか出てこないなと涙を拭っていると
「まあ、約束だし。」
ボソッと夏菜が何かを呟いた。
「なに?」
聞き返した俺に夏菜は「ううん」と首を振ると
「よっしゃー王都へれっつごー」
勢い良く立ち上がり手を天に向けて突き上げた。
「あっ、その前に涼太郎くんを鍛えないと♪」
すごく楽しいそうに夏菜は笑った。
……怖い。