覚醒?
「ちょっと待て、勇者ってあの?
魔王と魔神と戦った?」
俺は、興奮してしまう。
まさかレイカが、勇者だったとは……
道理で強い訳だ。……でも、そうしたらこのパーティーの中で一番弱いのは俺ってことなのか。
「ええ、多分ですが。」
「それって凄くない?これで、魔王と魔神と戦えるね。」
冬香も興奮してるらしい。
顔を真っ赤にして手をぶんぶんと振っている。
「そうか、それでどんな風な記憶が戻ったんだ?」
「えっと……男の人と戦ってその人の心臓を剣で貫いた……ってとこです。
その男の人が、魔王様って呼ばれてたので。」
淡々と語るレイカを見ながら、
凄いと感心する気持ちと同じくら
い……いや、それよりも巨大な気持ちが俺の中に生まれていた。
この気持ちの名前は、嫉妬だ。
じぶんも強くなりたい。
そんなのチートじゃないか。
チートが、無いんじゃなかったのか?
いや……それは単なる俺の思い込み。
『力が、欲しいか?』
何処から聞こえる声。
何処からだ?あたりを見渡しても俺たち以外誰もいない。
「うっ……」
頭が、熱い。
焼き切れてしまいそうな程に。
その熱さに思わず蹲ってしまう。
「ちょ、大丈夫?」
「涼太郎?大丈夫ですか?」
心配は、かけたくなかったので必死に笑顔をつくると、
「大丈夫、大丈夫。……ちょっとトイレ。」
そう言ってその場から離れた。
「痛いな……」
痛む頭を抑えながら森の奥へと進んでいく。
少し進んだところで、立ち止まる。
そこで、頭に再びあの声が響いた。
『力が欲しいか?全てを失っても欲しいならやろう。』
全て……失っても構わない。
力が欲しい!
そう強く念じると声が笑い出す。
『ふふ、はははははは!貴様は、面白いなぁ。大概の奴は、全てを失うという言葉に躊躇うものだが貴様にはそれがなかった。合格だ。我が力を全てやろう。』
「ああああああああ!痛い、いだいいだい」
次の瞬間、頭の中がどんどん熱くなっていく。
頭が、焼き切れそうに……なんてものじゃ無い。頭の中に熱い何かが暴れているみたいだ。
その無限に続きそうな痛みに、数分間のたうち回った。
『やはり、貴様は器にふさわしい。
我が名は、グラ。ただのグラだ。
お前の名は、《七つの大罪》暴食と色欲の涼太郎だな。』
「七つの大罪ってなんだよ?」
『それはな……長くなるが良いか?』
「構わない」
『なら、映像を見せよう。《記憶共有》』
グラが、見せてきたのは昔の勇者と魔王の真実だった。
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神の間にて
「やっとか……涼太郎がやっぱりそうなんだね。」
ニヤニヤと笑いを浮かべいる神の後ろに一つの影が。
後ろを振り返らずに神は、声をかけた。
「……何の用?魔神」
「何の用とは、つれないのお。儂とお前は、もともと一人の人間じゃろうに。」
「今は、違うでしょ?……それで?」
「いや、魔王のことじゃよ。……目覚めたのか?誰がなった?」
「じぶんで調べて欲しいけど……まあ、いいか。答えは、目覚めた。これで十分でしょ?」
「ああ、そうか。待ち侘びたぞ、この時を。……あとは、頼んでもよいか?」
「ああ、構わないさ。」
「わかった。また何処かで会おう。
次でもな。」
そう言い残すと影はフッと消え去った。
残された神は、ただ一人笑い出す。
「ふふ、はははははは。
待ってたよ。涼太郎。君は、いつか僕と……ふふ」
神は、次のゲームの準備を始めた。




