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チートを持たない俺は異世界で……  作者: 朱瓢箪
全ての始まり
19/22

覚醒?

「ちょっと待て、勇者ってあの?

魔王と魔神と戦った?」


俺は、興奮してしまう。

まさかレイカが、勇者だったとは……

道理で強い訳だ。……でも、そうしたらこのパーティーの中で一番弱いのは俺ってことなのか。


「ええ、多分ですが。」

「それって凄くない?これで、魔王と魔神と戦えるね。」


冬香も興奮してるらしい。

顔を真っ赤にして手をぶんぶんと振っている。


「そうか、それでどんな風な記憶が戻ったんだ?」

「えっと……男の人と戦ってその人の心臓を剣で貫いた……ってとこです。

その男の人が、魔王様って呼ばれてたので。」



淡々と語るレイカを見ながら、

凄いと感心する気持ちと同じくら

い……いや、それよりも巨大な気持ちが俺の中に生まれていた。

この気持ちの名前は、嫉妬だ。

じぶんも強くなりたい。

そんなのチートじゃないか。

チートが、無いんじゃなかったのか?

いや……それは単なる俺の思い込み。


『力が、欲しいか?』


何処から聞こえる声。

何処からだ?あたりを見渡しても俺たち以外誰もいない。


「うっ……」


頭が、熱い。

焼き切れてしまいそうな程に。

その熱さに思わず蹲ってしまう。


「ちょ、大丈夫?」

「涼太郎?大丈夫ですか?」


心配は、かけたくなかったので必死に笑顔をつくると、


「大丈夫、大丈夫。……ちょっとトイレ。」


そう言ってその場から離れた。


「痛いな……」


痛む頭を抑えながら森の奥へと進んでいく。

少し進んだところで、立ち止まる。


そこで、頭に再びあの声が響いた。


『力が欲しいか?全てを失っても欲しいならやろう。』


全て……失っても構わない。

力が欲しい!


そう強く念じると声が笑い出す。


『ふふ、はははははは!貴様は、面白いなぁ。大概の奴は、全てを失うという言葉に躊躇うものだが貴様にはそれがなかった。合格だ。我が力を全てやろう。』

「ああああああああ!痛い、いだいいだい」


次の瞬間、頭の中がどんどん熱くなっていく。

頭が、焼き切れそうに……なんてものじゃ無い。頭の中に熱い何かが暴れているみたいだ。

その無限に続きそうな痛みに、数分間のたうち回った。


『やはり、貴様は器にふさわしい。

我が名は、グラ。ただのグラだ。

お前の名は、《七つの大罪》暴食と色欲の涼太郎だな。』

「七つの大罪ってなんだよ?」

『それはな……長くなるが良いか?』

「構わない」

『なら、映像を見せよう。《記憶共有》』


グラが、見せてきたのは昔の勇者と魔王の真実だった。

////////////////////////////////////

神の間にて


「やっとか……涼太郎がやっぱりそうなんだね。」


ニヤニヤと笑いを浮かべいる神の後ろに一つの影が。

後ろを振り返らずに神は、声をかけた。


「……何の用?魔神」

「何の用とは、つれないのお。儂とお前は、もともと一人の人間・・・・・・・・・じゃろうに。」

「今は、違うでしょ?……それで?」

「いや、魔王のことじゃよ。……目覚めたのか?誰がなった?」

「じぶんで調べて欲しいけど……まあ、いいか。答えは、目覚めた。これで十分でしょ?」

「ああ、そうか。待ち侘びたぞ、この時を。……あとは、頼んでもよいか?」

「ああ、構わないさ。」

「わかった。また何処かで会おう。

次でもな。」


そう言い残すと影はフッと消え去った。

残された神は、ただ一人笑い出す。


「ふふ、はははははは。

待ってたよ。涼太郎。君は、いつか僕と……ふふ」


神は、次のゲームの準備を始めた。


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