(神の)使徒、襲来
「おい、なんだよこれ?」
「……意味不明」
冬香と涼太郎が、レイカと出会っていた頃、秋月と夏菜は、元禁忌の森へ来ていた。
そこは、最早唯の荒野に成り果てていた。
絶句する二人は、教会跡地から此方を見ている一人の少女に気づいていた。
「気付いたか?」
「……勿論」
二人は、元教会へ視線を向けると一人の少女は、此方へと猛スピードで飛んできた。
飛んできたというのは、文字通りである。
まるで、ロケットのような加速ぶりに二人は笑みを浮かべた。
「これは、これはこれ程の強敵とは……久しぶりだから楽しみだな」
「……同意。それに、イライラしているから丁度いい。……冬香、後でぺしゃんこをもっとぺしゃんこにしてやる」
その黒髪の少女は、腰に差していた剣を引き抜くと真っ先に夏菜に斬りかかってきた。
夏菜は、レーバティンを召喚し受け止めた。
「あれぇ、斬れない。その剣、神器クラスだね。」
「……せ」
何やらブツブツとつぶやいている少女に無視された夏菜の中に物凄い怒りが芽生えていた。
「無視してんじゃねぇぞ!」
受け止めていた剣を振り払うとそのまま少女に斬りかかった。
少女は、なんとか剣で受けるも防戦一方。
そのまま、夏菜はオラオラオラと言わんばかりの連続斬りで少女を圧倒していた。
「……ズルい、わたしも行く。
叩き潰す、《雷神の鉄槌》」
秋月の手の中に3メートルを優に超えるハンマーが現れた。
そのハンマーを肩に担ぎながら、夏菜と少女の間に割って入った。
「……わたしも混ぜて?」
「上等だなぁあ」
「……⁉︎」
パキン!
少女の剣に、ハンマーを振り下ろすと剣はど真ん中から簡単に折れた。
何故なら、夏菜がずっと同じ場所を狙って斬っていたからだ。
そこに秋月がハンマーを叩き込んだのだ。
そのまま、秋月と夏菜はスイッチし
夏菜は少女の首元に剣を突きつけ……ようとし失敗。
勢い余って少女の首をちょんぱしてしまった。
「やべぇ、やり過ぎた。」
「……わたしは、やりたりない。」
「おい、後でやってやるから我慢な」
「……ありがとう、夏菜。一億と二千年前から愛していた気がする。」
「やめんか」
最後は除きどこからどうみても恋人の会話を続ける二人に苛立ちを感じていた少女は、口を開いた。
「ねぇ、続きしよ?」
「え⁉︎」
「……⁇」
斬ったはずの首は元どおりになっていた少女が立っていた。
「貴様、なかなかやるな。名を言え、
覚えといてやる。」
「普通、貴女から名乗るものじゃないですか?」
「私は、この国の騎士団長を務めている七峰夏菜と言う」
「……わたしは、この国の味見係を務めている鳴瀬秋月という。」
「日本人?やっぱりね。
私の名前は、春乃。氷野春乃よ、氷野涼太郎の異母兄妹で神の使徒。
さあ、早くお兄ちゃんを返して」
衝撃の事実をさらっと口にした春乃に開いた口が塞がらない二人。
「嘘だろ……お前はじゃあ……」
「……そんな……この人が」
「「涼太郎の兄妹だったのか。」」
「えっ、そっち?」
神の使徒である事を相手に驚かれると思っていた少女、いや春乃は驚きを隠せない。
「だったら、ここで」
「……屠っておけば、いい。」
「へ?」
何やら不吉な事を、相談し始めた夏菜と秋月はウンウンと頷くと得物を握り直し春乃に、向かっていった。
○
「降参です」
「……分かればよい。」
「疲れたぁ」
結局、逃げ惑う春乃を夏菜と秋月が追いかけ回して殺すという非常に残酷な遊びになっていた。
しかし、春乃は何度殺しても生き返るため、きりがなかった。
その為、ひたすら疲れきるまで殺し合っていたのだ。
「それで、聞かせて」
「……貰おうじゃないか?」
「「涼太郎の好きな女の子のタイプを」」
「へ?」
またもや、二人から想像していた質問の斜め下をいく質問に多少驚きつつも春乃は正直に答えた。
「わかりません。ただ、昔好きな子はいたみたいですね。誰かはわかりませんが」
「そっかぁ」
「……残念無念」
「でも、二人ともお兄ちゃ……いえ、お兄様の何処がいいんですか?」
「「さぁ」」
「さぁって……でも、何と無く分かります。お兄様は、カッコイイところありますからね」
「そうだな。」
「……激しく同意」
その後、ガールズトークを延々と続けていた3人だった。
何故、春乃が神の使徒なのかなどの明らかにおかしな事実に誰も気が付いていなかった。
次回から、3話ほど春乃視点の話になるかと思いますので宜しくお願いします。




