岐路
俺が王国兵士になってから、一年が過ぎようとしていた。
この一年は、色々あった……
騎士団長の夏菜と宮廷魔導士の冬香のダブル特訓、
秋月との、ヘンテコデートなどなど。
でも、曲がりなりにも一年間王国兵士として過ごしてきた俺は、今では一般兵士と同じくらいの強さになってきていた。人狼化もうまくコントロール出来るようになり、人為的に人狼化する事が出来るようになった。
「おーい?涼太郎?」
ふと、何処からか声が聞こえる。
その声の主は、俺の顔を覗き込んだ汗だくの冬香だった。
しっとり濡れた髪ときらりと頬を伝う汗が目に眩しい。
「えっ、い、いや別に。」
ドギマギしながらどうにか答える俺。
冬香は、ずいっと顔を近づけてきた。
俺との距離僅か5センチ。
「ふふ、修行しよ?」
可愛いらしい悪魔の誘いだ。
可愛い、可愛すぎる。
「う、うん」
頷いてしまった。この可愛さ、恐るべし。
この一年間で、冬香と秋月とも仲良くなれた。
最初は、拒絶もされたけど……
それでも、よかった。仲良くなれて。
「ねぇ、行こう?」
冬香は、俺の腕を引いていく。
く、可愛らしい悪魔には勝てない。
そんな冬香と俺の元に一人の兵士が走ってきた。
「……王が、お呼びです。」
どうやら、何かありそうだ。
はぁ、冬香との夢の時間は、お預けか……まあ、夢と言っても悪夢なので、あまり問題ないが。
俺たちは、王の部屋へと急いだ。
○
「お前達に、任務を与える。」
王は、集めた俺たち4人を見渡しながら言った。
「お、涼太郎初任務か。」
夏菜が、笑いかけてくる。
任務……嫌な予感しかしない。
「そうだな。……それでだ。お前達に与える任務は、禁忌の森の調査と禁忌の森跡地の調査だ。」
王は、ニコリともせず言った。
えっ、なんだって?今なんて?
「禁忌の森跡地とは?」
ナイス、冬香!そうだ。それだよ。
王は、少し不機嫌そうな顔をした。
「禁忌の森が、消失し別の場所に転移した。これは、勇者召喚時に起きたと考えられる。現にその日、光がみえたそうだ。」
全然わからん。つまり?
「……勇者召喚の時に周囲の物や人が転移するっていうのが、この世界の常識なの。
光は、異世界転移の際に誰しもが経験するの。」
隣の秋月が、こそっと教えてくれた。
「では、秋月、夏菜。お前らは、跡地に行け。
冬香、涼太郎。お前らは新禁忌の森だ。」
「「「「了解しました。」」」」
後に俺たちはこの選択を悔いることになる。
その事は、未だ誰も知らない。




