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チートを持たない俺は異世界で……  作者: 朱瓢箪
全ての始まり
13/22

王と夏菜の過去

夏菜とオレは、今から十五年前に出会った。

出会ったのは、奴隷市場だった。


「さぁさぁ、お次は、若い女だよ。

さあ、早いもん勝ちだ。」


奴隷商人が手を叩きながら声を張り上げていた。

当時、自分で言うのもなんだがやんちゃだったオレはそういった場所にも出入りしていてな。

夏菜は、そんな奴隷市場にいた。

奴隷商人は、全裸に剥いて並べた奴隷達を一人一人紹介していた。


「此奴は、戦闘民族の生き残りで、此奴は、土人族ドワーフだ。

で、此奴が一番の目玉だぁ。

この女は、なかなか良くてなぁ。」


恥ずかしそうに俯く全裸の女をニヤニヤと見る奴隷商人。


「さあ、買った買ったぁ」


奴隷商人の一声かかると数十人の中から声がどんどん聞こえ始めた。


「女に、30」

「おい、俺が女を貰うぞ、80」

「ぼ、僕は、全部合わせて200だそう。」


ここで、使われている単位はカリン。

1カリンで、一軒家が立つくらいの金だ。

どんどん跳ね上がる額。いやらしくニタニタと笑う商人に嫌気がさし、その場から立ち去ろうとした時だった。


「エヘヘ、あの女どうしてやろうかな?」

「決まってるだろ、可愛がろうぜ。」

「なら、皆んなで金を持ち寄ろうぜ。」

「おう、なら……よし、女に500」


男達は、金を持ち寄りそんな相談をしていた。

オレも奴隷がどんな扱いをされるのか知っているつもりだったが、ちょっと……ちょっとだけ頭にきた。

あんな若い子をそんな風に……

ふと、全裸の女の子に目をやると女の子は、こっちを見て泣きそうな目をしていた。

泣きそうなその子を見たら、オレは咄嗟に動いていた。


「そこの女に10セリンだす。」


1セリンは、100カリンの価値がある。よって、1000カリン。

とんでもない額だ。

この金額なら、奴隷商人はすぐに飛びつくと思った。


「そこの旦那!毎度あり!」


オレの思った通りだった。


競りが終わってから、オレは奴隷商人のキャラバンに来ていた。

取引を成立させる為に。


「じゃあ、これが10セリンだ。」


奴隷商人に金を手渡す。


「へへ、毎度。」


大金を嬉しそうに受け取る奴隷商人。


「奴隷の刻印はいりますか?」


奴隷の刻印は、本来なら必須だがオレには必要ない。

なぜなら……


「ん?いらない。オレはそいつを奴隷として扱うつもりはないからな。」

「「えっ……」」


目の前の檻の中にいる女と奴隷商人は同時にオレを見た。


「ま、まあお客様の自由ですから。

……おい、さっさと出ろ。」


奴隷商人は慌てながら檻から女を出した。

まあ、大方変わった奴だなぁとか思ってるんだろうな。

……当たってるけど。


「おい、お前名前は?」

「……七峰夏菜。」

「ナナミネナツナ?変わった名前だな。まあ、いい。お前は、今日からオレの物だ。」


これが、オレと夏菜の出会いだった。○


「どうだ。感動の物語だろ。」

「えっと、肝心の師匠が何故騎士団長をやっているかなどの話は?」

「ない!まあ、なりゆきだな!」


本当に適当な王様だ。よくこんなのが一国の王になれたなぁと感心する。


「で、本題は?」

「お、察しが良いじゃねえか。

……実はな、あいつ性格とか口調とかコロコロ変わるだろ?それは、今話した奴隷だった時の傷が原因だと思われるんだよ。強気な口調、例えば「おい」だな。あの口調は、自分を強く見せたいときだな。あとは、「ね?」とかは、いわば彼奴の素だ。その素を見せられるのはきっと気を許した奴だけだ。

だから、夏菜とは仲良くしてやってほしい。」

「なるほど。お話は分かりましたが、何故俺に気を許していると思ったのですか?」


首を傾げた俺を王様は、鼻で笑った。


「認めてなかったら、彼奴はオレの元に男なんて連れてこねぇよ。」


……分かるようで、分からない。

まあ、でも師匠が認めてくれてることが分かった。

なら、今はそれでいいか。


「分かりました。それで、この話は師匠には?」

「勿論内緒だ。頼むぜ。」


がっちり握手を交わす俺と王様。

男同士の約束だ。絶対に破るつもりはない。


「それと、契約の件頼むぜ。」

「はい!」


此方も、なんとかなったな。

いやぁ、今日は沢山の事があったな。

冬香、秋月、王様との出会い。

兵士になったり、夏菜の過去を知ったり。

何はともあれ明日から頑張ろう。

そう思った。




お読みくださりありがとうございます。

誠に申し訳ないのですが、ステータスについては、明記することをやめ、第4話も削除させていただきます。ご迷惑をお掛けし申し訳ございません。今後とも、『異世界チートがない世界』をよろしくお願いします。

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