謁見にて
なんだか緊張気味のメイドに連れられ俺は王の謁見の間に辿り着いた。
「王様、氷野涼太郎様をお連れしました。」
メイドが、一声かける。すると、中から王らしき者の声がした。
「おう、入っていいぞ。涼太郎君」
なんだか嫌な予感がしなくもない俺は、目の前にある豪華な装飾が施された扉を開けた。
そこにいたのは、夏菜と国王らしき人物。
「よう、お前が涼太郎?なかなかいいじゃねぇか。夏菜、結婚しないの?」
「は⁉︎お、お、王?い、今はそんな話は?」
「分かってるよ、お前恋愛の話になるとてんで駄目だもんな。」
誰、この人。一国を治めてる王には、見えなかった。
真っ黒で伸び放題の髪と髭と鋭い眼光が特徴の……言ってしまえば、唯のおっさんだった。
「……貴方がここの王様なんですか?」
「え……夏菜、今此奴なんて言ったんだ?」
「あ、忘れいました、翻訳魔法出来ますよね。かけてあげてくれませんか?」
「あー、そんなことか。此奴、まだ喋れねぇのか。ほい」
俺を突然指さす国王。
「なんですか?突然。」
「ほら、な。」
「?……何がですか?あ、言葉が……」
「俺の魔法は擬似覚醒魔法つってな、
うーん、わかりやすく言えばコピーみたいなもんだよ。それで、魔法使ったわけ。」
「凄いですね……」
だろ?と自慢げな王様を見ながら俺は呟いた。そして、気になっていた事を聞いてみた。
「あの、ですね……何故俺がここに呼ばれたのですか?」
「ああ、そうだったな。実は、お前には俺の国の兵士になってもらいたい。」
「はい?どういうことですか?」
「えっと、だな。実は、魔神討伐は
一国でやる決まりでな。戦力は集めておきたいんだ。」
これは、滅多に言わない王様の本音だと思った俺だったが答えに困ってしまった。一つの国に所属するという事はリスクも当然あるのだ。
だから、俺はこう答える事にした。
「……契約なら、良いですよ。」
「契約ぅ?どういう意味だ?」
「そのままの意味です。契約内容は、俺がここから居るべき場所を見つけるまでは、あんたの配下になる。代わりにあんたは俺の生活を保障してくれないか?」
「おう。それでいいぞ。」
こんなのは、ハッタリだ。俺には、そこまでの強さはない。それどころか俺に並みの兵士より弱いと思う。
だから、弱いからこそ全てを利用してでも帰る。居るべき場所へと。
「じゃあ、契約書を作るか。“王の名に置いて契約する。”」
黄金に光り輝く紙とペンが、王の目の前に出現した。紙にペンが勝手に走り
契約内容を記録していく。
「よし、これでいいな。夏菜、席を外してくれ。」
居たんだと思うほど上手く気配を消していた夏菜が、一礼して出て行った。
「それで、だ。夏菜についてだ。
夏菜は、今から十五年前にこの世界にやってきた。」
「十五年……ですか?」
おかしい。夏菜は、見た目としては明らかに十代だ。
「異世界人には、何かしらの能力でもあるじゃねーのか?まあ、それはさて置き、だ。夏菜は、初めて会った時はそれはもうヤバイ奴でな……」
王は、懐かしそうに目を細めながら
夏菜との思い出を語り出した。
お読みいただきありがとうございました。
それと、更新遅れて本当に申し訳ございません。
次回は、王様視点でお送りしたいと思います。




