因果
後半に出てくるオッさんは、3話登場のあの人です。(作者も名前がわかりません)
「……改めまして、私の名前は倉梯冬香。こっちのデカ……いのが、鳴瀬秋月。宜しく」
「……です」
冬香さん、今デカいって言った時なんか悔しそうだったな。何でか……ああ、そうか。秋月さんは出るとこ出てててデカいけど、冬香さんは……うん、小さいな。と俺は考察してみた。
「こちらこそ、お二人の事はさん付けでよろしいでしょうか?」
「……冬香のことは、冬たん。
私の事は秋月様と呼んで」
「……はい?」
「な、何言ってんだ⁉︎後輩に、『冬たん』なんて呼ばれたら……それに、なんで秋は様なんだよ⁉︎済まないな、涼太郎君。此奴不思議ちゃんなんだ。」
「いえいえ、楽しいです」
なんだか、面白い人たちだなと、俺が素直な感想を抱いていた時だった。
コンコンとドアをノックする音がした。外から使いの者らしき声が聞こえてきた。
「こちらに、ビレラモント様はいらしゃいますか?」
「ああ、私ならここに居る」
「国王陛下がお待ちです」
「分かった。すぐに行く」
夏菜はそのままドアまで歩いて行きドアノブに手をかけながら俺たちに「すぐ戻る」と言って出て行ってしまった 。
「師匠って……一体何者なんですか?」
「ビレラモント=シャルティーナ
……というのが、彼女のこちらの名。
彼女は、このサーナリア王国の将軍だよ。」
俺が、ふと疑問を口にすると冬香が、教えてくれた。やばいな、師匠。
でも、そうしたらどうして隊長と呼ばれて……そこまで考えを巡らせていた俺に冬香が補足する。
「……今呼ばれたのも、潜入任務の報告だと思う」
「潜入任務……ですか」
「……そう、なっちゃんは部下の態度を直接見たいと自らこの役を買って出たんだよ。」
更に、秋月が補足する。冬香は、自分の台詞を取られたからか、少し不機嫌そうな顔をしながら、話題を変えてきた。
「……君は、スキルやアビリティに”勇者”が付いたものはあるか?」
「いいえ、無いですね」
「そうか……なら、一体誰なんだ?」
最後に言った言葉は聞こえなかったが、なんとなく言いたいことは分かった。この世界は勇者を求めているのだ。理由は、まだ分からないが……
「……あ、済まない。急にこんな話しちゃってさ。これには事情があるんだ
夏菜が帰ってくるまでに時間もあることだし話をしよう。少し長くなる、座りながら話そう」
そう言いながら冬香は、俺を座らせるとカップをどこからともなく出して俺に差し出した。有難く頂きますと一言言ってからズズッと啜る。すると、衝撃が走る。その飲み物は、緑茶に酷似していた。美味い。
俺の反応をみた冬香は微笑を浮かべる。
「気に入ってもらえたようでなによりだ。では、話を始めようか。……勇者の因果の話を。」
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これは、五百年ほど前の話だ。
神がご乱心なされたのだ。
天災は連日の様に続き、作物は実らなくなり水は干からび、魔物は大量に現れた。
異世界召喚という概念はまだこの頃なかった。そのため、この世界の人々だけで神を討ち取ろうとした。
然し、この世界の人々では神には勝てなかった。それ程、神は強かったのだ。
神もとい魔神は魔王を従えこの世界の全てを壊し尽くそうとした。
それから数年かけ魔神は、世界の生物を元の十分の一以下にすると一時休息に入った。
魔神に隙が出来た事により召喚獣を召喚出来る様になっていった。
様々な召喚獣が召喚されていく中とある山の上にある教会は、ある時人の召喚に成功した。
厳つい男だったという話だが、真相は分からない。
然し、その召喚された人間ーー勇者は、いとも簡単に魔物の群れを屠ると世界各地で人助けを始めた。
それから、また数年の時が経ち……
遂に魔神が復活。
然し、その時には魔王を残して魔物は消えていた。
勇者によって屠られたのだ。
激昂した魔神は、魔王と二人で世界の街を壊して回った。
其れを止めるべく勇者は、魔神に挑んだ。そして、二度と現れる事は無かった。然し、其れと同時に魔神も消えた為、相打ちになったとされている。
因みにだが、勇者が帰ってこなかったのは、魔神に自らの身を捧げたからでは無いかという説もあり異世界召喚された人を”餌”と呼ぶ人もいる。
そして、近年では神がまたご乱心されたという噂が出回っており勇者を求めているのだ。……えっ?じゃあ、なんで勇者じゃ無い俺らが召喚されているのかって?いや、其れは分からないけど……これは私の推測だが、勇者は一人では無かったんじゃ無いかな。
だって、そうだろう一人で世界を救うなんて無理だ。だから、今回も我々が召喚されたんだ。わかったか?
よし、ならいい。
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「凄い話ですね。じゃあ、僕たちは勇者?」
「いや、其れは無いな。勇者は召喚された直後に魔物の群れを屠ったんだぞ。私達は召喚直後、ステータスはほぼ人並みだっただろう?」
確かに、納得のいく話だ。そう考えた時、春乃が勇者なのか?”餌”ってあのオッさん言ってたし……一人考え始める俺。気づいてないのかまだ話を続けようとする冬香。
「更に、私の推論によると……ぶはぁ」
「……冬香、テンション高い。うざい。」
其れを横から止める秋月。
俺はナイスと心の中で密かにサムズアップした。
コンコンとノックする音。
「あのぅ、ここに獣人さんいらしゃいますか?国王陛下がお呼びです。」
「……」
「……」
「……」
全員黙ってしまう。獣人かぁ、そんな人居たっけなぁ?
「あ、俺だ。」
「む、そうなのか?」
「……通りで臭いと思った」
そうか二人には言ったなかったけ?
にしても、秋月酷いよ。
「酷っ!まあ、いいや。はい、今行きます。」
勢い良く立ち上がり「ごちそう様でした」と一言冬香に言うと部屋を後にした。そして、メイドの案内で国王に謁見する事になった。
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