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オダマキ

作者: SHINO

「は、初めまして……尾田真希(おだ まき)25歳です……。し、仕事は、ち、調理師してます……。」


吃りながらも、自己紹介をし俯いていた顔をあげるが、だ、誰も聞いてない……。さ、さすがに哀しいんですが……。なんで、こんなことに……。




◇◇◇



「おはよう!ねぇ、尾田さん……明後日の夜、暇かな?」



レストランの更衣室で、制服に着替えていると、松嶋さんが話しかけてきた。松嶋さんは、先輩社員でホール主任をしている。たまに、ご飯に連れて行ってくれる優しい先輩だ。



「おはようございます。松嶋さん。空いてますよ!ご飯ですか?」



バレンタインディナー期間も終わったし、打ち上げかな?松嶋さん、美味しいお店や、私なんかが入れないようなお店でも、松嶋さんとなら入れるし、楽しみだな……なんて、呑気に考えていたら……



「良かった~!ねぇ、合コンに行かない?っていうか……行きましょう!」



「…………合コン……」



「実は……、友人が合コンしてくれることになったんだけど、もう1人誘ってて、頼まれたの~。」



あ~、良かった!良かった!と、呟いている松嶋さんには、悪いけど……こ、断りたい……



「ま、松嶋さん……、私なんかが行ったら、皆ひいちゃいますよ……だって、あたし……」




ブサイクですから!って、自分で充分すぎるくらい解っているため、あえて口に出さずに飲み込む。一重の小さい目、厚い唇、濃い眉毛、というか、髪の質自体が剛毛……ダメなパーツが、ダメなバランスで配置されている。きっと、神様は私の顔の時だけ、目隠しをしていたのではないかと思う。




「………………、尾田さん、良い子だし!あたしは、好きよ!この、仕事出会いありそうでないからね~!」




こんな、綺麗な人に好きよと、言われ照れます。そう、松嶋さんは白ワイシャツ、ギャルソンエプロンがバシッと決まる仕事できます系美人さんなんです。そして、私がブサイクであると否定しないのが松嶋さんらしいです。顔で、判断しない貴重な人に会いました。人生で、家族以外に2人目です。うん……一応、2人目なのか……な……?



◇◇◇



そんな感じで、断るタイミングを逃し、逃し今日の合コンを迎えたわけです。はい……。で、合コン当日……私が最後に部屋に入った瞬間の空気……まぁ、覚悟はしてたので……、松島さんとは別のざわめきでしたね。それで自己紹介してもね……。冒頭のようになるわけです。

溜め息を吐き、飲み物に手を伸ばし飲み俯いてしまう。



しかも、4対4の予定なのだが1人遅れてるから男女交互に座ると、目の前はぽっかり空欄になってしまう。……帰りたい……帰りたい……あっ、でも帰ると来た男性が同じ目にあうんだ……我慢しよ……。せめて人数があったら何か変わるかもしれないし、それでも浮くなら帰ろう。持っていた飲み物を全部飲み干した時、



「あれ?俺のじゃない?」



「……えっ……?」



急に話しかけられ、驚いて顔をあげると、隣の男性が私が持っているグラスを指差している。確か……佐藤さん。確かに、味が烏龍茶じゃなくて……



「えっと…………、それ、俺のウーロンハイ…?」



「えっ!……うわっ!すみません!」



慌てて、グラスを返すが、



「……いやいや、もう空だし!」



「すみません……、えっと……じゃ、注文を……」



佐藤さんに、メニューを渡し注文用紙を用意すると、



「小田さん!あたしも良いかな?」



松島さんが声をかけてきた。すると、他の人も頼むと言ってきた。あっ…空気じゃなくなったかも…さすが、松島さんですと感動しこの仕事頑張ります!皆さんの注文をせっせと紙に書いていく。すると、頭上から声が降ってきた。



「俺、オダマキ!」



「はい!えっと……オダマキ……オダマキ……」



聞き慣れない、ドリンクメニューを言われ番号を探していると、



「おっ、やっと来たか!」



男性陣の幹事……えっと、後藤さんが、頭上からの声の主に声をかけている。あっ、遅れてきた人が来たんだ……、あれ?オダマキなんて飲み物ないんだけど……………見つからない…、すみません…私は役立たずです…尋ねようと顔をあげると、




「……んっ?メニュー表にないよ?特別メニューだからね…」




「…………!!」




スッゴク、驚いてしまった!その瞬間、爆笑が部屋中に響いた。




「スッゴい顔!」



「漫画みたい!」



など、合コンメンバーが全員笑っている。目の前の直樹も、笑っている。



「真希!相変わらず、最高!癒される!可愛い!」



直樹が、私を抱きしめてくる。その、様子にピタリと笑いが納まり、私達を皆が観ている。




「~~~っ!!もう、からかうの止めてよ!」




直樹を手で押し退けながら、離れる。




「えっと……、御二人さん、知り合い?」




後藤さんが、恐る恐る聞いてくる。無理もない。直樹は、歩けばモデルにスカウトされる、切れ長の目にすうっと通った鼻筋に薄い唇の、やや強面のイケメンだ。正に、私と真逆の生き物。高校生の時に転校してきて、それからずっと付きまとわれている。




「俺の、彼女…。全く、俺というものがいながら…」




「「「「……えっ?えー!!!!!!!!!」」」」




私も含め、直樹以外の全員が驚きの声を上げる。直樹は、高校の時からクラスメイトと一緒に私を馬鹿にしてきた。私なんかが可愛いわけないじゃない!しかも、彼女だなんて…とんでもない!




「……また、馬鹿にして!もう、私なんか、からかって楽しい?」




「楽しい!大好きだ!可愛い!」




「もう、いい加減にして!」




ぐっと、拳を握りしめ直樹に向かって言い放つと、思わず飛び出してしまいました。





◇◇◇


「ちょっと、あなた尾田さんをからかってるの?」




「…………うるせーな、どけよ!お前に関係ないだろ?」



さっさと、真希を追いかけたいのに邪魔をされ、苛々してくる。



「私は、あの子の上司よ!からかうなら、他の子にして頂戴!」



「……真希の上司?もしかして、植松さん……?」



「……そうよ。」



やっべー、真希に怒られる!真希の憧れ先輩上司だ!俺は慌てて謝り、からかってないことを簡単に説明し、真希を追いかけて店を後にした。



◇◇◇


「真希!」



少女漫画の、良いシーン手首を捕まれ引き留められるが繰り広げられてます。違うのは、ヒロインがブサイクです。あっ……ヒロインだなんで、烏滸がましかったです。周りの方々がTVカメラを捜してます。そうですよね……撮影でもない限り、こんなかっこいいイケメンさんが、モンスターを掴まえるわけありませんからね……。




「……もう、逃がさない!俺の彼女になって!」




応えたかったのですが、答えられません。私は、人生初のキスをされてましたので……。







読んでくださり、ありがとうございました!


勢いで書いたので、構想が纏まったら連載にしたいなぁ…と、思っています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 素敵なお話でした。 自分に自信がないけど、ちゃんと中身を見てくれる人に巡り会えてよかったです。 主人公には、今後も幸せになってほしなあ。
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