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恐怖の野糞ジジイ

作者: 豚猫まん

 会社員の明男は夕食を買うためコンビニに向かっていた。時刻は午後の10時。こんな時間まで営業している定食屋は無いからだ。さっさとコンビニに入り、弁当を物色する。今日は牛焼き肉弁当にしよう。そんな事を考えていた矢先である。

 

 ブボーーーッ!!!ブリブリブリブリブリィィィイイイイイ!!!!!!!

 突然響き渡る異音。漂ってくる排泄物の臭い。明男は一気に食欲を失った。なんだこの臭いは。まさか・・・。

 コンビニの外に出て辺りを見渡す明男。駐車場にしゃがみこみ、尻を突き出している老人を発見した。ケツの穴から勢いよく下痢便を噴射している。間違いない、野糞ジジイだ。


 野糞ジジイ。どこへでも出没し野糞をするという、とある老人につけられたあだ名である。道路、公園、学校の校庭、飲食店の駐車場、更には他人の家の敷地内にまで侵入し、糞を撒き散らしていく迷惑極まりないホームレスだ。街で有名な不審者であり、街では見つけたら直ちに警察に通報する事を呼びかけている。しかし、野糞ジジイは警察が到着する前に行方をくらましてしまう。警察が到着しても、現場に残っているのは大量のウンコだけ。まさに神出鬼没だ。そしてまた別の場所に現れ、また行方をくらますのである。


 噂には聞いていたが、まさか本当に現れるとは。明男は弁当を買うのをやめ、自宅のアパートへ帰り、様々な思考をめぐらせた。もしかしたらこのアパートの敷地内でもウンコをするのだろうか。野糞ジジイの糞の臭いは強烈で、たとえ現物を処理したとしても、その糞の残り香は数日間は消えないという恐ろしいものだった。そうすれば数日間、糞の強烈な臭いのせいで何も食べ物を口にできなくなる。死活問題だ。どうしてあんな危ない奴を放っておいているのだ。明男は鼻に染みついた糞の臭いのせいで眠れなかった。


 翌日、空腹のまま会社に出勤する明男。鼻にこびり付いた糞の臭いのせいで、ほとんど食が進まなかったのだ。その上、睡眠不足で頭がボーッとする。目はうつろ、よだれを垂らしながらデスクワークをする明男も、野糞ジジイに劣らずの不審者っぷりだった。

 そうして過ごしていると、突如、オフィスが得体の知れぬ静寂に包まれた。なんだこの空気は。昨日のコンビニもこんな感じの雰囲気だったような・・・。ま、まさか・・・。次の瞬間、外からもの凄い音が響いた。


 ブリブリブーーー!!!!ビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャチャアアアアアアアアア!!!!!!!!

 窓の外から強烈な悪臭が漂ってくる!!鼻をつくウンコの臭い!!オフィスにいた社員達は皆、ゲロを吐きながら苦しんでいた。とにかく窓を閉めなくては。脳味噌をかき回す糞の臭いに苦しみながら、よたよたと窓際に近づく。一層強くなるウンコの臭い。苦しみながらも、やっと全ての窓を閉め切った。奴の仕業だ。窓の外に一瞬その影が見えた。間違いない。野糞ジジイだ。


 午前11時。明男は会社を早退していた。明男だけではない。今日オフィスにいた社員全てが早退していたのだ。原因は無論、野糞ジジイの糞のせいだ。二日間連続で野糞ジジイの糞の臭いを嗅がされてきた明男は、体力の限界を迎えていた。震える足。焦点の定まらぬ目。そして未だに鼻にこびりつき、脳味噌を直接攻撃してくる糞の臭い。明男は地面に膝をつき、大量のゲロを吐いた。あの野糞ジジイのせいでこんなに苦しい思いをしなければならないとは。許さない。絶対に許さない。明男の心の中に、メラメラと復讐の炎が猛ってきた。今度自分があの野糞ジジイを見かけた時、その時が奴の死ぬ時だ。


 午後10時。明男は自宅のアパートにいた。部屋のテーブルには、ゼリー飲料の袋のゴミが山積みになっている。明男は右手に包丁を構えていた。いつでも準備は出来ている。あとは奴が、奴が現れるのを待つだけだ。明男は興奮のあまり小便を漏らしていた。まだか。まだか。まだ現れないか。そして明男の期待に応えるかのように、その音は響いたのだった。


 ブビョオーー!!ブビブビブビブビブビィイイイイイ!!!!!!!ブキョオオオオオ!!!!!!!

 スタートの合図が鳴った。包丁を片手に勢いよく外へ飛び出す明男。その途端、一気に鼻の中に広がる新鮮なウンコの臭い。それでもひるまず、夜の住宅街を走っていく。だんだんと臭いが強くなってくる。見えてきた見えてきた。下品に尻を突出し、糞を吹き出している奴の姿が!!あと100メートル。あと50メートル。あと20メートル。興奮はピークに。明男は思わず叫んだ。


 「オラアアアアアア!!!!!ジジイイイイイイイイィィィィィィィ!!!!!!!てめえは殺すううううううううぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!」


 包丁片手にこちらに迫ってくる男に気づき、急いで立ち上がる野糞ジジイ。その汚い尻からはまだウンコがビチャビチャと流れ出ていた。明男は包丁をクルっと半回転させ逆手に持ちかえる!!そして野糞ジジイの左肩に一気に突き刺した!!!


 「ぎょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


 包丁の攻撃を喰らい、悶絶する野糞ジジイ。鼻と口からはゲロを吹き出し、小便を垂れ流しながら苦しんでいる。糞は常時垂れ流しているのだ。

 今までとは違う、猛烈な糞の臭いが明男を襲う。自分を苦しめてきた臭いの数倍の威力の臭いの発生源が、目と鼻の先にあるのだ。凄まじい頭痛。猛烈な吐き気。全身の皮膚がヒリヒリと痛む。あらゆるものが明男を苦しめる。だが、彼は屈しなかった。今まで自分を苦しめてきた憎い輩に、渾身の一撃を入れる事が出来たからだ。明男は再び包丁を持ちかえた。そして野糞ジジイのボディに包丁の乱れ突き!!!グサグサグサグサグサ!!!!!


 「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 明男の猛攻を喰らい、更に大きな悲鳴を上げる野糞ジジイ。吹き出していたゲロも糞も既に枯れ果てていた。明男は包丁を捨て、右手を大きく振りかぶった。今まで苦しめられてきた怨念を拳に込め、野糞ジジイの顔面に必殺の右ストレート!!!ボゴォオオ!!!!

 吹っ飛ぶ野糞ジジイ。ベチャっと音を立てて地面に落下した。傷だらけ、糞塗れのまま失神していた。明男は携帯電話で警察を呼び、静かにその場を後にした。


 翌朝のニュースで、こんな報道があった。街で野糞をし続けていた老人が逮捕。野糞ジジイの事だった。喜ぶ街の人々。街にはひと時の平和が訪れた。


 誰もが、野糞ジジイの様な狂人になる可能性を秘めている。一歩間違えるとその可能性は加速し、誰もが街の変質者に変貌してしまうのだ。ちょっとした趣味だと思って放っておいているその異常な趣味も、立派な狂人を作り上げる肥料なのかもしれない・・・。



  完




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[一言] ジジィの名前は、ノグソン(アメリカ風) _(^^;)ゞ
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