第九章 金髪ロング落下
「おっそーい!ミサキ何してたのさっ!?お腹ペコペコだっていうのにさ!」
ミリタリナ、ルカ、スズハ、イスズの四人は既に席に座って集まっていた。
全員自分達の食事はキッチリトレイに乗せている。
どれも美味そうだが、現存世界では見た事の無い食事だ。
「さ、私達も早く食事を取りに行きましょう。お腹が空いてしまいましたわ」
ルーセントハートは美沙希の腕を掴んで受付へと引っ張っていく。
「あたしもついてく。シルヴィアだけだと何か不安だし」
イスズが席を引き、美沙希の元へと歩く。
そして、当然とでも言いたそうに腕を絡めてくる。
「おい、歩きにく――――――」
「いーからいくのー!」
お菓子が欲しいと駄々をこねる子供の様に腕を引っ張っていくイスズは非常に幼く見えた。
美沙希の隣ではルーセントハートが「むっ」と頬を膨らまして身体を押し付けてくる。
「ちょっと、お前らそんなに急ぐなっ!」
イスズが引っ張り、ルーセントハートが押す様な形になり、美沙希は子供を相手にしている気分になってきた。
「お、押すなって―――――うおっ!?」
トレイが積まれている棚に叩きつけられ、腰を痛めた。
「いってぇ・・・・・・」
「ちょっと、オッサンじゃないんだからそんな格好しないでよ!」
「無茶言うなよ!?」
「さ、早くメニューを選びましょう」
ルーセントハートがトレイを持ち、先に進んでいく。
美沙希もトレイを取って続く。
何故かイスズもトレイを持って付いてくる。
「お前もう飯持ってきたんだろ?」
聞くと、イスズはルーセントハートを睨む。主に、胸を。
「負けてらんないからね、糖分摂りまくっておっきくなってやる」
美沙希には何のこっちゃだが、目に映る対抗心の炎は凄まじい熱気を放っていた。
「・・・・・・・・・糖尿病になるなよ」
「?何、そのとーにょーびょうって」
どうやらこの世界に糖尿病は存在しないみたいだ。
美沙希は意外な事を知りつつも、メニューを選ぶ。
「・・・・・・何だ、これ」
展示されていた『今日のメインメニュー』の欄には不思議な名前の料理が並んでいた。
『ドラゴンのリブ芯焼き』
『ユニコーンの刺身』
『キングオクトパスの姿煮』
怪しいとかいうレベルでは内料理名にドン引きするが、何となく想像出来る。
ドラゴンにリブロースが存在する事は意外だが、そのリブ芯ともなれば油が乗っていて美味そうだ。
ユニコーンの刺身・・・・・・これはなんだろう。あの馬車を引いていたユニコーンの肉なんだろうか。
美沙希は、ユニコーンが非常に可哀想な動物に思えてきた。
現存世界では芸術とも言われた伝説の動物がこの世界では食料になっているとは想像も出来なかった。
キングオクトパスの姿煮、これも容易に想像がつく。現存世界で言う、蛸の姿煮だ。
名前にキングが付くだけで規模がデカくなるが、それすらも飾りに過ぎないのだろうか、この世界では。
「じゃあ、私はユニコーンの刺身で」
「っ!?」
美沙希は泣きそうな顔でルーセントハートの横顔を見る。
(こいつ、慈悲の心が無いのかっ!?)
現存世界で暗殺者をしていた人間の台詞ではないが、美沙希はそんな事を忘れてしまっている。
「あたしソフトクリームパフェ。ミサキは?」
「え、えっと・・・・・・」
「あ、ミサキさん。このドラゴンのリブ芯焼きは非常に美味しいですよ。如何ですか?」
「じゃあ、それで・・・・・・」
ルーセントハートのオススメという事で決めたが、伝説の生き物を食べるというのはどうなんだろうか。
「はい、ユニコーンの刺身だよ。・・・・・・あれ、シルヴィア、この人は?」
レーンの内側、キッチンから男の様な少女がシルヴィアに声を掛ける。
「昨日から寮にいらした方ですわ。ヒスイはまだ会った事がありませんでしたね」
ヒスイと呼ばれる、エプロンに身を包んだ少女はニコリと笑ってドラゴンのリブ芯焼きの入った器を渡してくる。
「どうも、こんにちわ。僕はヒスイ。ここのキッチンで学食を作ってるから、寮に帰る事があまりできずに学園に泊まっちゃってるんだけど、寮の朝食は僕が作らせてもらってるよ」
「え、じゃあ毎朝寮に戻ってきて飯作ってるのか?大変だな」
「好きでやってるんだもん、全然平気だよ。あ、話は後で、生徒が混んできちゃった」
見ると、美沙希から後ろは生徒が長い列を作って並んでいた。
美沙希は貰った器をトレイに置き、惣菜コーナーに向かった。
◆◇◆◇◆◇◆
「お待たせしました。早速頂きましょう」
トレイをテーブルに置き、椅子に腰掛ける。
「・・・・・・ミリタリナ、お前飯は?」
美沙希の隣に座るミリタリナのトレイには、サラダが一個乗っているだけで肉類は見当たらない。
「えっと、私は今ダイエット中なので・・・・・・」
「太ってないのに?」
「そ、そう見えますか?」
ミリタリナは手を股の前でモジモジと動かしてチラチラと美沙希の顔を伺う。
それが彼女らしく見えなかった美沙希は、サラダの器に自分が頼んだドラゴンのリブ芯焼きを数枚入れた。
「これ食べろ。太ってもないのに痩せる必要無いだろ。無理なダイエットは自分を壊すぞ」
03が言っていた。『ちょ、ウチの友達さ、ダイエットして数キロ痩せたんだって。で、それでダイエットに夢中になっていきなり断食するとか言い出しちゃって。なんも食べなくなって、久しぶりに学校で見たらガリガリになってたんだよっ!ああ、豊満なバストが垂れ乳になってしまって・・・・・・これじゃあ揉んで遊べないっ!』とかなんとか。
人の胸を何だと思っているのか、不思議で仕方なかったが、それは今どうでもいい。
「ミリタリナはもう少し自身を持てよ。綺麗なんだから」
「き、綺麗・・・・・・・・・」
ミリタリナは頬と耳を赤くして俯く。
「ミサキには、私が綺麗に見えますか?」
「おう、見えるぞ」
「・・・・・・・・・」
ミリタリナは顔を膝にピッタリくっつけ、何も喋らなくなった。
「・・・・・・俺何かしたか?」
「「「「別にー」」」」
全員無言で食事を開始する。が、全員の箸は料理を掴んでいない。
特にスズハとイスズは箸すら持っていないのに箸を持っているかのように手を動かしている。
(・・・・・・怖い)
口には出さず、思うだけにしておいた美沙希は偉いだろう。
「「「「はぁ・・・・・・」」」」
ため息を付くばかりで食事が全然進んでいない。
美沙希はそんな空気が段々居づらくなり、トレイを持って別の席に移動した。
その後美沙希は一人寂しくテーブルに座り、ドラゴンのリブ芯焼きを食べる。
「・・・・・・んっ、美味いな、これ」
意外な美味さに驚き、米をかき込む。
米と絡む醤油?ベースのタレが上手くマッチしていて、米がすぐになくなってしまった。
「おかわりってできんのかな・・・・・・」
空の茶碗を片手に唸る美沙希は、動きを止める。
「・・・・・・そういえば、アイツ等が座ってる席ってレーンに近かったよな」
行きづらい美沙希は、黙って残りを食べ、食堂を去った。
◆◇◆◇◆◇◆
選択学科が無い美沙希は、射撃場へと試し撃ちしに来た。
が、射撃場の様子が違う。
中から発砲音が聴こえてくるのだ。
美沙希は射撃場の扉を開け、中に入る。
射撃台の前に立ち、炎を飛ばす少女が居た。
魔銃士なのだろうか、かなりの速さで魔術を放つ。
自分の存在を気付かせる為に、美沙希は大袈裟に扉を閉める。
その音にビクリと肩を揺らし、振り向く。
「だ、誰、ですか?」
「こっちの台詞だ。ここで何してる?」
目に掛かる位まで伸びた髪と、丸い眼鏡を掛けたちょっとインキャラっぽい少女がいた。
何故か杖を両手に持ってブルブルと怯える少女に、上から目線で行き過ぎたかな、と、後悔する美沙希。
「す、すまん。俺は美沙希だ。昨日自己紹介した」
「あ、あの、迷い人さんです、か?」
「まぁ、そういう事になる、かな?」
「えっと、女の子なんですか?」
「いや、男だけど・・・・・・俺ってそんなに女に見えるのかよ」
そろそろ心が折れそうな美沙希に追い打ちを掛ける。
「男装してるようにしか、みえません」
「はぅっ」
涙目になる美沙希だが、そんなこと他所に少女はトドメを刺す。
「だから、この学園に入れたんです、ね」
「うわぁぁあああああん!!」
情けなく泣き出す美沙希はUSPを抜き、的を撃つ。
「俺は男だってばぁぁあああああああ!!!」
これが、現存世界での暗殺者の、現状である。
が、しっかりと的には当たっている。
頭、胸を中心的に撃ち抜き、遊底が止まった所で銃を下げる。
(男らしい服装って、なんだろう)
真面目にそんな事を考える美沙希は、現存世界での自分の行動を思い出す。
なるべく人に関わらず、人との関係は一定に留める。
(む、無理じゃねえかっ!?)
既に五人との関係を持つ美沙希には、現状を変える事はまず不可能だ。
「す、凄い、です」
「うわっ!?」
いつの間にか隣に移動していた少女は、美沙希が撃っていた的を見つめる。
「その銃のようなものは、なんですか?」
美沙希はUSPの説明をしようとするが、説明がややこしいのでやめておく。
「これは現存世界から持って来たもんなんだ」
「そうなん、ですか」
歯切れの悪い言葉の区切り方が特徴的だな、と、どうでもいい事を思う美沙希だが、先程の魔術での射撃が気になった。
「なあ、的撃ってくれないか?魔術で」
「い、いいですけど・・・・・・」
そういって少女は射撃台の前に立ち、短い杖の先を的に向ける。
「・・・・・・フレイムショット」
突如少女の杖に炎が現れ、球状に収縮していく。
杖を上に振ると、炎は弾丸の如く高速で的に着弾、火花を散らす。
「こ、これは、火力と魔力消費を、最低限まで抑えた、フレイムショットで、えと、その・・・・・・」
「すげえな・・・・・・。なあ、俺にも教えてくれよ。そのフレイムショットってやつ」
「これは、凄く簡単だから、魔術の初心者でも、すぐ覚えることが、できますよ」
「本当かっ?・・・・・・あ、でも、俺それみたいな杖無いぞ」
「大丈夫、です。杖は、イメージをまとめる、道具に過ぎません」
少女は俺の後ろに立ち、USPを持った腕を下から上げる。
「あ、貴方の場合、この、銃がイメージを、まとめるのに、良いと思い、ます」
美沙希は言われるまま、USPを構える。
「魔力を腕に流し、炎が燃え上がるイメージを、してみてくだ、さい」
魔力が流れるイメージ、そう言われた美沙希は、トリガーに指を掛けた時に感じた違和感を思い出した。
それと同時にまた同じ現象が起こった。
心臓から湧き上がる何かが、腕まで漏れ出す様に血が湧き上がる。これが、魔力なのだろうか。
その魔力を銃まで届かせるように魔力コントロールを行う。
魔力コントロールに関しては授業で習った。
粘土を練り、伸ばし、押すように、形を形成していく物だと言っていた。感覚ではどういった事なのかは分かるが、それを実際にやってみろと言われても困る。
が、美沙希の場合、想像だけで自然と魔力が腕に通っていく。
美沙希は、炎で形成された銃弾を撃つイメージを浮かべる。
その炎がトリガーを引く事で銃口から放たれる、如何にも痛々しい光景を思い浮かべた。
「・・・・・・・ッ!」
美沙希はトリガーを引く。
違和感が起きた時のインターベンションの衝撃程では無かったが、今まで以上の衝撃が腕から伝わって来る。
放たれた銃弾は想像通り、銃弾が炎を纏って一直線に飛んでいく。
的に着弾し、炎が的を一瞬で黒焦げにする。
「凄い、です。初心者で、この精度は滅多に、見られません」
「え、そうなのか?」
美沙希は銃を良く撃っていたというのもあり、銃弾に炎が纏う、というイメージをまとめやすかったのだろう。
「それに、見ただけだけど、魔力量も桁外れ。一流魔術師の平均魔力量を、優に超えている」
「え、まじかよ?でもよ、俺は現存世界から来た人間だし、魔力を置いておく器なんてものは持ってないぞ」
「器は、誰でも持っているもの。現存世界の人間も、該当する、筈です」
「へぇ・・・・・・」
美沙希は意外な事に気付いた。
だとすれば、現存世界から異世界に召喚された際、魔力を器に注がれる、という事だろうか。
「魔力が多いなら、魔術を沢山覚えられるって事だろ?」
美沙希が言うと、少女は首を横に振る。
「魔力は、言い換えると、体力の様な物で、魔力が減っていくと、魔術が正常に発動、しなくなってしまいます。無理に発動しようと、すれば、最悪死んで、しまいます」
「死ぬって、どういう―――――――」
「言葉通り、です。無理に魔術を酷使すると、残り少ない魔力を身体に循環させようとして、器が大きく揺れます。これは、暴走と言われる現象で、暴走が起きると、魔力が体内で魔術を発動、使用者を殺してしまいます」
魔術の裏、黒い話を聞いた美沙希は、魔術がとても危なく、恐ろしい物に感じた。
スズハが言っていた。器が身体に合わず、器の中の魔力が溢れ、身体を突き破ってきた、と。
自分の身体にも、その器が存在するのだろうか。
そう考えると、魔術など要らない、そう思えてくる。
「色々、あるんだな」
「・・・・・・うん」
美沙希と少女は、暗い話で、暗い空気の中息を吸う。
「そ、その・・・・・・名前、言ってませんでしたね」
少女は制服の襟を締め、手を後ろに組む。
「えと、ドランシー女学園、魔銃士団体銃騎士団長、ミノリ・トリコイル、です」
若干顔を下げるも、視線を外さずに言うミノリは、上目遣いの様に美沙希を見つめる。
「だ、団長っ?スズハじゃ無いのか?」
「騎士団体には二つ、種類があります。魔剣士の団体を騎士団、魔銃士の団体を銃騎士団。ややこしいですけど、頑張って、覚えて下、さい」
長い前髪を揺らして組んだ腕をモジモジするミノリは、美沙希の持つUSPを見つめる。
「それは、銃なんですよね?どうやって弾を、撃っているんです、か?銃騎士団長としても、気になり、ます」
USPに食いついたミノリに驚きつつも、自動式拳銃の基本的な構造を簡潔に述べる美沙希。
ミノリは、美沙希の説明を興味深く耳に入れ、メモ帳に筆を走らせていく。
「さっき言った、回転式拳銃よりも比較的装弾数が多くて、弾倉もグリップ内に挿入するタイプだから連射に向いてるんだ。利点も多いけど欠点も多いんだけどな」
「欠点、って?」
美沙希はUSPの遊底を引き、薬室が見えるようにする。
「ここ、ここに空薬莢が引っかかったりするんだ。あと、各パーツをしっかりと手入れしないと、いざと言う時動作不良とか、パーツの破損なんて事があったりするんだ」
ジェスチャーなどで伝えるが、それを見ずにミノリは耳で聞いて筆を走らせる。
(ま、いっか)
ここまで熱心に話を聞く人は久しぶりに見た様な気がする。
ミリタリナは勉強熱心という事もあり、色々と質問してきたが、ミノリも同じようなタイプのようだ。
元いた世界では直人に銃の話を持ち掛けたが、「俺別に興味無いし」の一言で切り捨てられてしまった事を美沙希は思い出す。
「ま、こんなところか。ミノリは銃騎士団長なんだろ?仕事とか、無いのか?」
「・・・・・・あっ、忘れていました」
団長がこんなところで遊んでいていいのか、そう思った美沙希はUSPをポーチに仕舞い、散らかった空薬莢を集める。
「すいま、せん。私今日見回りの、仕事があるんです。お先に失礼します」
ミノリは扉にパタパタと走って行き、一礼して出て行った。
この学校には色々な奴がいるな、美沙希は何の気無しに思う。
そう考えていると、ふと想像する。
ミリタリナ、スズハ、ルカ、ルーセントハート、イスズ、ミノリ、どれも個性的な少女達だが、一つの共通点がある。
「・・・・・・可愛いよな、普通に」
特徴は各自違うが、違和感の無い、美少女だらけなのだ。
そんな中に居る自分は幸せなのだろうか。そんな事を考える美沙希。
「変わったな、俺は」
今まで、仕事を忠実にこなし、報酬を貰うだけの生活で、女の事なんて全く考えていなかった。
が、ここに来て、女との関わりが普通になっている。これはどうかと思うが、仕方が無い事だ。
「ま、考えても変わることなんてないし、帰るか」
撃つ事が無かったM200インターベンションの入ったライフルケースを手に取り、射撃場を出ようとした時、外から爆発音の様な、鈍い音が聞こえた。
美沙希は身体が勝手に反応し、すぐにしゃがんだ。
USPを取り出し、しゃがんだまま壁に近寄る。
すり足で扉に近づき、扉を蹴り開ける。
外に銃を向け、目の前の光景を脳に焼き付ける。
「なんだ、これ・・・・・・」
目の前で、大きなクレーターの様な大穴が出来ていた。
その穴の真ん中に、誰かが倒れているのが見えた。
「お、おいっ、大丈夫かッ――――――――!?」
穴に飛び込み、人影に近寄る。
が、すぐに足を止める。
煙の中の影が伸びた。立ち上がったのだろう。
「くッ・・・・・・計画と、随分違いマスね・・・・・・衝撃を和らげる筈が、出力を間違えマシタ・・・・・・イタタッ」
軍服の様な格好をした、金髪ロングの少女が、腰を摩りながら立ち上がる。
「オウッ!?誰デスカっ!?」
美沙希の姿が視界に入ると、素早い動きで銃を抜く。
「・・・・・・コルト・コンバットコマンダーか」
美沙希は一瞬の間で少女の持つ拳銃の名を当てる。
「そう言うアナタは、H&K USPデスカ。何者デス?」
いきなり降ってきた少女と美沙希は、お互い銃を向け合いながら睨み合う。
暫く睨み合うが、初手を打ったのは金髪の少女だった。
「ハッ!!」
腰のポーチから取り出したナイフを、フレーム前方を改造したコンバットコマンダーのマウントレールに取り付け、剣先を突きつける。
それに合わせて美沙希も腰からサバイバルナイフを抜き、少女のナイフをセレーションで受け止める。
「中々やります・・・・・・ネッ!―――――――ンはぁ!?」
いきなり石に躓いたかの様に転け始める少女。
「な、なん――――――――うわっ!?」
美沙希も少女同様、何故かその場に倒れる。
「動くな。もし動けば貴様の首を跳ねる」
「貴方も騒がないで下さいね。同じ女性だとしても、関係者でない者の侵入は処罰の対象です」
何やら美沙希が聞き覚えのある声が聞こえる。
「な、何デスかッ!?」
「おい、お前ら何してんだ、俺だって!!」
美沙希は声を上げる。
それと同時に首元に突き付けられた剣が近づく。
が、すぐに剣は止まる。
「お、お前、ミサキか?」
「ミサキ、ここで何をしているんです?」
俺と少女の上に伸し掛かり、首元に剣を突き付けるのは、生徒会長のミリタリナ、騎士団長のスズハだった。