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第六章 騎士少女の胸話

寮に戻り、部屋の中でオリハルコン製インターベンションを見つめる。

先程イスズに変色作業をしてもらったばかりで、綺麗な黒色になっている。

「やっぱ、黒が一番だよな・・・・・・」

シンプルなカラーだが落ち着きと安らぎを与えてくれる色だ。そう自論を持つ美沙希だ。

その他に弾倉と銃弾も量産してもらった。欲を言ってUSPもオリハルコンで複製してもらった。

スズハが「ちょ、そっちも錬成したい!」と有難い事を言ってくれたのでお言葉に甘えさせてもらったのだ。

「良い感じだ。こっちもグリップが握りやすい。魔改造のまま複製してくれてるし」

USPを二丁持って感触を確かめる。

歪みも無く、オリジナルか複製かなんて全くわからない。今は色で分けているが、近い内イスズが装飾してたいと言っていたので、今真っ白なUSPの色はまだ定着していない。

「色々遊んでみるのもいいかもな」

USPがイスズの腕によって改造されていくのを見るのは実に楽しかった。

現存世界に生きる人間がイスズの技を見たら絶対驚くだろう。

「そうだ、風呂・・・・・・」

椅子にUSP、インターベンションを起き、部屋から出た。

階段を降り、廊下を曲がるとすぐそこに洗面台と一緒の場所に風呂場が繋がっている。

美沙希は上のシャツを脱ぎ、かごの中に放り込む。

ガンポーチベルトを外し、引っ掛けに吊るす。

「・・・・・・・・・痛ッ」

手が横腹に当たり、鈍痛が走る。

包帯を外すと横腹を侵食するように大きく広がったあざがあった。

(ここまで悪化するとは思わなかったな・・・・・・)

毒でも入ったかのように色が変わっている腹を暫く見つめ、服を脱ぎ捨てる。

篭の中に入っていた白いタオルを腰に巻き、扉を開けた。

「・・・・・・・・・えっ」

目の前には浴槽とシャワー、では無く、もう温泉と言ってもいいレベルの広さを持つ浴槽だった。

シャワーは横の壁にポツンと設置されていたが、驚愕しるしかない美沙希。

「なんで、一軒家サイズの家にこんなデカい風呂があるんだ?」

明らかにおかしい風呂のサイズに疑問を隠せない美沙希だが、その考えを切り伏せる様に扉が開く。

「説明は必要か?」

「えっ?わあああっ!?」

扉の前には髪を下ろし、バスタオル一枚で身体を隠した姿のスズハだった。



◆◇◆◇◆◇◆



無言の空気が漂う中、美沙希は一人顔を真っ赤にして浴槽に浸かっている。

それは、羞恥で赤くなっているのか、のぼせて赤くなっているのか分からない。

「怪我は大丈夫か?かなりの勢いで蹴ったから痣も凄いだろう」

「おう、毒が広がってる見たいになってやがる」

「流石、私の蹴りは一味違うな」

「どう聞いたら褒め言葉に聞こえるんだよ。皮肉ったんだよ俺は!」

(コイツの考えてる事さっぱりわかんねえ・・・・・・)

他の人間とは違った感性を持つスズハを見て呆れる美沙希。

「・・・・・・済まなかったな」

「今更謝るのかよっ!?遅せえよ!」

「いや、蹴りの事ではない」

「え、謝んないつもり?」

「そのだな・・・・・・魔術を使ったんだ。あの蹴りは」

「だと思っ・・・・・・は?」

スズハが何を言っているのかよくわからなかった。

「待て、魔術って五大属性からできる物なんだろ?たかだか蹴り一つに魔術なんか使えるのか?」

スズハは腕を組み、背を壁に付ける。

「それは、魔術の特性では無く、魔術の大まかな属性を差す言葉だ。基本は炎、水、雷、土、風、この五つだが、魔術が攻撃だけとは誰も言っていないだろう」

「そういえば、そうだな」

「魔力コントロール次第で色々な事が可能になる。空を飛んだり大砲に勝る防御力を得たり、魔力の使い方は十人十色、定まっていない。私は攻撃する際、身体に魔力を流して身体強化する方法を取っている」

魔術の基本的な知識、魔力の運用方法を色々聞いた美沙希だが、分からない事が一つ。

「なあ、その魔力とか魔術って、勝手に発動する事はあるのか?」

「勝手に発動・・・・・・?いや、術者が魔力を任意で解放しない限りそんな事はないと思うが・・・・・・」

「・・・・・・なぁ、魔力って人其々(それぞれ)量とか違うのか?」

「ああ、人に異なる。が、エルフや獣人は元々自然と密接した生活を送っているから、人の平均的な魔力を有に越している。数値で表すなら、人間は五千、エルフ獣人は二万と言った所か」

「結構離れているんだな。魔力量を増やしたりする事は?」

「出来る。が、簡単では無い」

そう言うと、スズハは立ち上がる。

肌にピッタリとくっついたバスタオルが、スズハの身体のラインを隠すこと無く美沙希に見せつける。

「ちょッ・・・・・・!」

焦る美沙希を他所に、スズハはバスタオルを外す。

「わあああっ!?」

バスタオルを外した際、揺れた胸に視線が釘付けになる―――――、一歩手前で自ら頬に平手打ちする。

「何してんだ!?気でも狂ったか!?」

「これを見ろ」

顔をタコの様に赤くした美沙希の言葉を総無視し、腹の傷に指差す。

「この傷は、魔力の増幅に耐え切れなくなって付いた傷だ」

「耐え切れなくなってって、魔力を増やすのに何すんだよ。そんな傷まで負って・・・・・・」

傷を見ると、かなり深い。それも、避けたような、目を背けたくなるような傷だ。

「これは、内部の魔力が溢れ出して漏れる際、私の腹を突き破って出てきた時の傷だ」

「・・・・・・・・・は?」

美沙希は、またしても頭の中が混乱し始めた。

「ま、まてまて、何?溢れ出した?魔力が溢れ出したらそんな事になるのかっ!?」

頭の中に、自分の魔力が溢れ出し、はらわたをぶちまけて倒れる自分を想像した美沙希。

浴槽の中で暖かい筈なのに、変な寒気を感じた。

「なんだよ、お前はそこまでして魔力を増やしたかったってのかよ!?」

そう美沙希が聞くと、スズハはそれが当たり前の様に答える。

「そうだ。大切な物を守る為には、これ以外に方法が無かった」

スズハは浴槽に身体を沈め、美沙希の隣に座る。

「私は、魔力が無かったんだ。それは、身体が魔力に同調しなかったから、生まれた時に呼吸と同時に吐き出していったそうだ。だから、私の身体には魔力の在り処、うつわが無かった。そんな身体に人の手によって器を身体に移植した。が、身体が拒絶し、この有様だ」

自らの傷を撫で、ため息をつくスズハ。

「私は、強がりばかりで守るべき物を守れなかった、ただの臆病者だ。それでも、私は魔剣士のトップとなって教育係として騎士団長を任されている訳だが・・・・・・」

「団長?凄いじゃんか、魔力が無かったのにそこまで這い上がって大出世だろ?」

「いや、私は剣の実力だけで這い上がってきたから魔術は殆ど使った事が無い。今日久しぶりに使ったな」

「その相手が俺って、運が良いのか悪いのか・・・・・・」

「まあ、こういった理由で私は魔力が少ない。魔術を使うのは稀だと思っていい」

美沙希は、目の前の少女が朝よりも大きく見えた。

力が無い者だったはずが、騎士団長になり、人に言葉を投げかける程にも成長している。

これは、スズハ自信の実力であり、努力だ。美沙希は、ただの堅物では無いと、考えを改めた。

「しかしだな・・・・・・」

「どうした?」

「いや、こんなのをお前に言うのはおかしいのだが・・・・・・」

スズハは、プカプカと水の上に浮いている大きな胸をつつきながら言う。

「む、胸が大きすぎて動きの邪魔になるんだ。本格的に戦う時は私のサイズにあった特注の胸当てを使うんだが・・・・・・」

「いや、それを俺に言うなよ!?」

「だから言うか迷ったんだ!イスズに言えば怒るだろうし、普段は包帯とかを巻いて無理やり締め付けているんだが、そろそろ限界が近くなってきたか・・・・・・何か方法は無いか?」

「ほ、方法?・・・・・・あ、剣で切り落とす・・・・・・のは無しね、すんませーん」

握り拳に息を吐くスズハを見て口を慎む美沙希。

美沙希は、この後ずっとスズハの胸の話に付き合わされた。

混浴しているのをルカとイスズに見つかって怒鳴られたのは、言うまでもない。

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