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第四章 騎士少女の見極め

今日は美沙希の正式な入学日と言う事で、編入するクラスに自己紹介する事になった。

クラスメイト全員が女という空間に男一人という空気に慣れる事は難しそうだ。

体育館(?)のステージ上に立つので、館内の女子からの視線を全て受けきる事になるが、それは別に大したことでは無い。

(現存世界で嫌と言う程味わったからな・・・・・・)

現存世界、美沙希が元居た世界で、小、中、高での自己紹介中、クラスの奴等が「女子が青色の名札付けてるー」などと言われ続け、とにかく女子として扱われた。それが嫌だった美沙希はとことん男らしく過ごした。

暴言を吐き、運動を平均男子より行い、尚且なおかつ成績を平均ラインでキープし続けた。

こうしてやっと男として認めてもらえたが、それがここで通用するのだろうか。

(異世界の勉強っていったら、やっぱ魔法中心なんだろうな)

このドランシー女学園では、優秀な魔術師を育てるのがメインだ。

教育カリキュラムには魔法に関する物が殆どで、講義や実技、研究など、魔法ずくしのややこしい学園だ。

美沙希は魔法の事に関してなど一切知識が無い。アニメで出てくるような物というイメージしかなかったが、ここではそれが重要になってくる。

「それでは、自己紹介をお願いします」

ミリタリナがマイクスタンド(?)が立った台から退く。

「・・・・・・えっと、弓坂美沙希です。宜しくお願いします」

簡潔に短く自己紹介を終えて一歩下がろうとするが、体育館内の全校生徒はざわめく。

「この時期に入学?」「何か怪しい」等の声がちらほらと聞こえてくる。

「んんっ。彼は、伝説の通りこの世界、グランデネスへと現れた〝迷い人〟なるお方です」

咳払いをし、ミリタリナがそう言うと、更にざわめきが増す。

「静粛に。彼はまだこの世界に来たばかり、分からない事が多いと思いますが、どうか仲良くしてくださいね。以上で全校集会を終わります」

そういうと、館内の生徒はバラバラになって体育館を出て行く。

普段では見慣れない光景に驚く美沙希。

これを知らない者が見たら「グレた女子高校生の大集団」と思うだろう。

が、今日はこの全校集会だけで、後の時間は自由だそうだ。帰宅してもいいし、学園に残って勉強をしてもいいらしい。

「さて、これで自己紹介は済みました。このあとの時間はどうするおつもりですか?」

館内にミリタリナと美沙希だけになり、無音の空気が流れる。

「俺は射撃場に行ってくる。腕がなまっちゃダメだし」

「そうですか―――――――あっ、そういえば気になる事が一つあるのですが」

「なんだ?」

「貴方が使っていた黒い銃、あれは一体なんですか?特殊な弾を撃っていましたが」

インターベンションの事を言っているのだろうか、興味津々といったように食いついてくる。

「あれは現存世界で俺が使ってた銃なんだ。正式名称はチェイ・タックM200インターベンション。口径が大きいボルトアクションライフルで、弾は.408Chey-Tac弾つって、チェイ・タック社、正式にはシャイアン・タクティカル社って言うんだけど、そこが独自開発した銃弾を使用する銃なんだ。インターベンションは.408Chey-Tac弾に合わせて設計された銃で、結構長距離のターゲットを撃てるんだぜ」

「な、何を言っているのかわかりません・・・・・・インタ・・・・・・チェイ・・・・・ボルトアクション・・・・・・?なんですかその訳の分からない言葉は」

「まぁ、そうなるだろうな。暇なら俺に付いて来てくれ、実際に見せるから」

美沙希はそう言い、ミリタリナを連れて射撃場へと向かった。



◆◇◆◇◆◇◆



「これ、このハンドルを後ろに下げて排莢、前に戻すと銃弾の装填が出来る。これをボルトアクション方式っていうんだ。このボルトアクション方式にも色々な種類があるんだけど、俺はこの直動式ストレートプルボルトアクション方式っていうのを好んで使ってるんだ」

「成程・・・・・・あ、この小さな隙間はなんですか?」

「これは薬室って言って、装填された銃弾がここに来るんだ。今はその工程は見せれないけど、実際の流れは見せるよ」

美沙希はインターベンションに弾倉を装填、ハンドルを素早く引き、戻す。

光学照準器を覗き、ターゲットを適当に撃つ。

「ここだ、見てろよ」

ミリタリナを近くに呼び、ハンドルを引く。

勢い良く飛び出た薬莢を見て驚く。

「な、なんですか?これ」

地面に落ちた薬莢を掴もうとするミリタリナを制止する。

「触っちゃダメだ!」

「っ!?」

いきなり大声を出した美沙希に驚き、飛び引くミリタリナ。

「発射直後の空薬莢は凄く熱いんだ。火傷しちまうぞ」

「そうなんですか、警告ありがとうございます」

「で、だ。次は装填だ」

引いた状態のハンドルを掴み、前へ戻る。

カチャンという音が鳴り、装填が完了する。

「これで装填完了だ。直動式はこの動作が素早く出来るから早撃ちに向いてるんだけど、内部構造が複雑で、いざと言う時故障しちまう可能性があるんだ。砂とか入ってつっかえたりしてさ」

「へぇ・・・・・・直動式以外にも種類があるんですよね?それはどうなんですか?」

「回転式、コックオン・クロージング、コックオン・オープニング、モーゼル、リー・エンフィールド、モシン・ナガンとか、そんくらいか。方式、系式によって色々特徴があるんだけど、うまく説明出来ないな。なんせ、俺は直動式しか使った事がないから」

「成程、奥が深いんですね。魔法のようです」

目をキラキラと輝かせてインターベンションを見つめるミリタリナ。

「・・・・・・・・・撃ってみるか?」

「ぜ、是非ッ!」

射撃台の元へ駆け出し、「はやく、はやく!」と急かす子供のようなミリタリナを見て美沙希は軽く笑う。

(いつもとのギャップが凄いな)

クール系の奴かと思いきや、勉強熱心で裏に幼さを残した奴だった。

「ほい、持ってみろ」

「はい―――――――あ、案外重いんですね」

両手に抱える様にしてインターベンションを持つ。

「ここがグリップ、手で持つ所だ。ハンドルにもう片方の手を添えて・・・・・・そう。で、これ、照準器を覗いてみろ。十字線の真ん中に撃ちたい場所を合わせてトリガーをを引くんだ」

ミリタリナの後ろに立ち、腕を支えてやる。

「あっ・・・・・・・・・」

身体をよじるミリタリナを押さえる為、腕を脇から通し、スタンドの様に腕で支える。

「もうちょっと脇を閉めて・・・・・・よし、撃てッ!」

ドンッ!と鈍い音が部屋に響く。

銃弾は的を逸れ、後ろの壁に穴を開ける。

「す、凄い衝撃ですね・・・・・・こんな銃を使ってるんですか、ミサキは」

「慣れちゃえば簡単だぞ。あと、ずっとこれ使ってる訳じゃないしな」

「他にも銃を使ってるんですか?」

首をかしげ、ミリタリナは部屋の脇にある火縄銃を見る。

「ああいうのですか?」

「いや、違うぞ」

美沙希は腰のガンポーチからUSPを取り出す。

「一気にコンパクトになりましたね。それはなんていう銃ですか?」

「これはUSPっていう拳銃だ。その中の自動拳銃っていう部類のやつで、射撃時の反動とか火薬が燃焼する際に出来るガスの圧力を利用して、遊底スライドっていう部分を後退させて、排莢や次弾装填を自動化した便利な銃なんだ」

「なんだかよくわかりませんが、結構な発明品のようですね」

「この仕組みを考えたのが誰なのかは知らないけどな」

弾倉を入れ、遊底を後退させる。

「そこがさっきいっていたスライドって部分ですね?」

「ああ、ちょっと見てろよ」

USPを両手で構え、的に向かって五発撃つ。

空薬莢がカランと落ち、銃弾が一列に並んで飛翔する。

ガガガガガンッ、と、気持ちの良い音が部屋に響く。

「俺のUSPは中をちょっと改造してるから弾の出るスピードが普通より速いんだ。これでも、さっきのインターベンションよりは遅いんだぞ。つっても、9mmパラメラム弾は軽くて速い、.408チェイ・タック弾は重くても速いんだけどな」

ミリタリナはUSPをじっと見つめると、はっと声を上げて言う。

「その銃、どこかで見たことがあると思ったら、それだったんですね」

(見たことがある・・・・・・?)

疑問に思いながらも美沙希はUSPを仕舞う。

「それです、そのベルトを作ったの私なんです。短い剣の様な物とその銃、銃と知ったのは今さっきですが、何か入れやすい物はないかと思って、自作したんです。勝手に触ってしまったことを許してください」

「え、これお前が作ったのかっ!?凄い出来だったから誰か銃に詳しい奴が一緒に置いておいてくれたのかと思ってたけど・・・・・・」

美沙希は心底驚いた様にガンポーチを見つめる。

「制服にそのような物を入れる場所が無いので、不便ではないかと思いまして、勝手ながら」

まさかガンポーチを自作してくれるとは思ってもみなかった。

しかも作ったのはミリタリナと言う。手が器用なんだな、とミリタリナの特技の一つを知った美沙希だった。

「にしても、本当に良い出来だな。助かるよ」

「いえいえ、これも生徒会長、いや、寮長としての振る舞いの一つです。裁縫さいほうには腕に自身がありますので、裁縫関係で困った事があれば気軽に言って下さいね。力になれると思います」

「ああ、色々とありがとな」

美沙希は心の底からミリタリナに感謝し、インターベンションをライフルケースに仕舞う。

すると、射撃場の扉が勢い良く開き、誰かが入ってくる。

「ミサキはいるか――――――って、なんだ、エリナも一緒か」

腰に洋剣をぶら下げた青髪ポニーテールの少女、スズハが射撃場へとやって来た。

ミリタリナを一瞥すると、キッと鋭い視線を美沙希に向ける。

「ミサキ、お前に用がある。ドームに来い。逃げるんじゃないぞ」

そう言い、素早く扉から出て行った。

(扉閉めろよ・・・・・・)

ライフルケースのチャックを閉め、ベルトを肩に掛けてライフルケースを背負う。

「何でドームに呼び出されなきゃならんのだ・・・・・・」

「転入生、特にひ弱に見える生徒を見るとスズハはドームで決闘を挑む癖があるんです」

「癖っていうか、それ弱い者苛めじゃね?」

「いえ、スズハは弱い人を倒したいのではなく、今後強くなるのかを見極める為に決闘を挑むんです。貴方は今から見極められるという事ですね」

軍隊の振る舞いを日常で行うスズハを想像して軽く鳥肌が立つ。

しかし、スズハは鞭を振るうのではなく剣と魔法を容赦無く放つのだ。

(今日で俺死んでもおかしくないよな・・・・・・)

ミリタリナは美沙希の心の声を読んだかの様に一言付け足してくる。

「軽傷で三日、重傷で一、二週間は動けないと思ってくださいね?」

「それ拷問だろッ!?」

「決闘とはそういうものですよ、ミサキ。学園の規則の中にもあります。『ドランシー女学園生徒会規則四条 決闘はお互いの全力を出し合い、勝敗関係無く健闘を称え合う事』、と」

(その規則すぐに無くしちまえよ生徒会長・・・・・・ッ!)

「さ、行きましょう。待たせると怒りますよ?スズハは」

「それを早く言ってくれッ!!」

遅れたら何されるか分からない。美沙希は全力疾走で射撃場を飛び出た。

剣で真っ二つにされる自分を想像して鳥肌を立てながらも、美沙希はドームへと入っていった。


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