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第十五章 二角獣は擬人召喚獣

「・・・・・・んっ」

美沙希は、今動けずにいる。

起きてはいる、目も開けているのだが、何故か視界が真っ暗だ。

美沙希は視界を塞ぐ物に手を伸ばし、掴む。

すると、指がすぅーっと沈んでいき、何とも触り心地の良い感触が手の平一杯に広がる。

(なんだよ、これ・・・・・・?)

何度も手を閉じ開きを繰り返し感触を確かめる。

(枕?いや、素材は低反発のやつだし、こんなに柔らかく沈んでいかない。本当になんだこれ)

「あっ・・・あるじ・・・・・・」

(人の声?――――――まさかっ!?)

美沙希は布団を吹き飛ばし、枕裏に仕込んであるUSPを取り出して立ち上がる。

「・・・・・・・・・動くな。そのままじっとしてろ」

立ち上がろうとした布団の中に包まる誰かを制止する。

布団を掴み、頭部分をめくる。

「・・・・・・・・・誰だ」

布団を捲ると、黒色の髪をした少女が目を瞑り、静かに息をしていた。

「お目覚めですか、主」

目を開き、紅色に染まった瞳が美沙希を見据える。

「・・・・・・誰だよ」

「私です。覚えていらっしゃらないのですか」

女性は立ち上がり、布団をハラリと足元へと落とす。

「ちょ、何で服を着ていないッ!?」

少女は出る所が出過ぎている、スタイル抜群の裸体をさらす。

「私は主の所有物であり下僕、奴隷。主の為ならばどんな事でも」

「あ、主・・・・・・?いや、そんなのどうでもいいからさっさと服を着ろって!」

美沙希は箪笥たんすを開き、ミリタリナが悪戯いたずら半分で持ち込んだドランシー女学園の女性用制服を少女に投げ付ける。

目のやり所に困る様な格好をされていては美沙希も色々と問題だ。

「主、これは何ですか?服のように見えますが」

「服のように見えるんじゃなくて、服なんだよッ!さっさと着ろよ・・・・・・というか、主ってなんだよ・・・・・・」

朝から何なんだ、美沙希は頭を掻きながら思う。

朝起きたら布団の中に裸の女が居たなどと言う衝撃的な出来事は、生まれて初めて体験する美沙希は、軽くパニックになっていた。

「主、これはどうやって着るのですか。よくわかりません」

「い、いや、俺もよくわからん。・・・・・・あ、下着」

この黒髪の少女は、一糸纏わぬ姿で制服と睨み合っこしている。

流石に下着無しというのは問題だろう。

「ちょ、ちょっと待ってろよ。聞いてくるから。というか、絶対に部屋から出るんじゃないぞ、いいなっ!?」

美沙希は部屋から出て、一つ飛ばして隣の部屋、ミリタリナの個室へと向かった。

部屋の扉をノックして、ミリタリナを呼ぶ。

「ミリタリナ、起きてるか?」

「・・・・・・はい、起きてますよ」

寝起きなのか、ミリタリナは目を擦りながら部屋の扉を開ける。

「ちょっとお願いがあるんだけど、いいか?」

「はい、いいですよ。何ですか?」

「え、えっとだな・・・・・・」

美沙希は迷う。

ド直球に「下着を貸してくれ」などと言っていいものなのか。

言えば魔術で殺されるかも知れない。

生徒会長の実力は底知れないのだ、そんなミリタリナに下着を貰うとはなんという愚行だろう。

「・・・・・・なんですか?」

「あ、いや、やっぱ何でもない、すまん」

美沙希はミリタリナを部屋へ戻し、扉を閉めた。

(どうしろって言うんだよ・・・・・・ッ!)

美沙希はただパニックになるだけで、何も考えずにスズハの部屋に来た。

「スズハ、起きてるか?」

「何だミサキ。朝から稽古を付けてほしいのか?」

「いや、そんなんじゃなくてだな・・・・・・」

「じゃあなんだ」

美沙希は頭が真っ白な状態で口を開く。

「スズハって、胸大きいよな」

「んなっ――――――!?」

スズハは自分の胸を守る様にして抱く。

そのせいで胸が盛り上がり、余計強調されてしまうが、美沙希はそんな事お構いなしで喋る。

「それでさ、スズハの下着が欲しいんだけど、くれないかな?」

「な、何を言っているんだお前はっ!?き、切るぞっ!」

「頼む、お前にしか頼めないんだ」

「はひっ・・・・・・」

美沙希はスズハの両肩を掴み、真剣な眼差しを向ける。

その視線は獲物を撃ち抜く、狙撃手スナイパーのように鋭い瞳だ。

「・・・・・・わかった、ちょっと待っていろ」

「ああ」

(俺、何言ってんだろ・・・・・・・・・)

顔を真っ赤にしてして額を押さえる美沙希。

勢いに乗ってとんでもない変態発言をしたが、この際どうでもいい。

部屋の全裸女を何とかしなければいけないのだ。手段は選んでいられない。

「・・・・・・ミサキ、持ってきたぞ」

「――――――――っ!?」

美沙希は全身を強ばらせ、直立不動になる。

「え、えっと、これはちょっと前に使っていた、ぶ、ブラだが、問題はないだろう。あと、この、ぱ、パンツは、その・・・・・・まあいい、持っていけっ」

スズハは黒色の下着一式を美沙希に押し付ける。

「・・・・・・その、ミサキ。その下着、何に使うのだ?」

「・・・・・・何って?」

「その、溜まっているのか?」

「・・・・・・そうかも」

「そ、その、手伝える事があれば、私に言うんだぞ?」

「・・・・・・わかった。ありがとう、スズハ」

「・・・・・・うむ」

スズハは静かに扉を閉める。

直後、スズハの叫び声が聞こえた。

枕に顔を沈めて大声を出しているのだろう、ベットの上でバスバスと跳ねる音が床を伝って聞こえてくる。が、美沙希はそんな事お構い無しで部屋へと駆け込む。

「おい下着持ってきたぞ、さっさとこれ付けて服を着ろッ!!」

美沙希はスズハから頂戴した下着を黒髪の少女へと投げつける。

「これはどうやって付けるのですか、主」

「・・・・・・後ろ、向けよ」

美沙希は羞恥心を捨て、フックに掛けてあったネクタイを取り、目を隠す様にく。

そのままブラを取り、背中部分にあるホックを手探りで探す。

「・・・・・・あれ、ないぞ」

通常背中部分に位置する筈のホックが存在しないのだ。

(・・・・・・まさか)

美沙希はカップ部分を掴む。

そして、そこで気付く。

「フロントホックじゃねえかよッ!?」

左右のカップ中央部分にホックがあった。これは間違いなくフロントホックブラだ。

めんどくさい事になった美沙希は、そのまま下着着用を再開する。

「ほら、腕通せ」

肩紐なるストラップに腕を通し、ホックを繋げようとするが、何やら柔らかい物に遮られる。

「あ、主、それは胸です」

「・・・・・・・・・」

(何で俺がこんな事しなければならんのだ・・・・・・!)

美沙希は背中から抱きつくようにして腕を回す。

手首部分に柔らかい感触が伝わって来るが、何も考えずにカップ中央部分のホックを留めた。

「・・・・・・ぃよしっ!じゃあお前の正体を明かして―――――――」

「主、これは一体」

少女は黒色の布切れを掴んで広げる。

「・・・・・・忘れてた」

まだ、少女は穿いていなかった。

万人共通で着用する、パンツという布を。



◆◇◆◇◆◇◆



「終わった・・・・・・」

美沙希はベットに横たわり、朝から一時間運動した後の様な心臓の鼓動を静かに耳で聴いた。

顔は茹でたこの様に赤く、黒髪少女の胸を触った感触を忘れる事が出来ない。

「主、これは少々キツいと思うのですが」

「あ・・・・・・?」

美沙希は気だるそうに少女を見る。

制服のブレザーが胸を抑える事が出来ず、ブレザーが左右に広がって胸を強調するような極めて際どい格好をしていた。

流石にこの格好では外に出歩けないだろう、美沙希は箪笥たんすから自身が異世界に来た時着用していた黒色のジャケットを着させる。

スカートも、ポーチなどの装飾された黒色のズボンに変更し、少し男勝りな格好となった。

「まあ、シャツはそのままでいいか」

シャツは少々サイズが小さいようで、胸元のボタンを開け、黒色のブラをチラリと覗かせる。

その上からジャケットを羽織り、胸を押し上げる様にチャックを閉める。

「どうですか、主」

「お、おう。似合ってるぞ」

「・・・・・・そうですか」

少女は俯き、頬を赤く染める。

「・・・・・・さて、着替えも済んだ事だし話を聞かせてもらおうか。お前、何者だ」

美沙希が言うと、黒髪の少女は紅色瞳こうしょくどうの輝きが美沙希を射抜く。

「わかりませんか。私は―――――――」

少女は紅色の粒子を纏い、瞳に紅色に輝く魔法陣が描かれる。

そして頭には二本角を生やし、髪を靡かせる。

「黒色の体毛を持った汚れた二角獣(バイコーン)、貴方の契約召喚獣です」

美沙希は右胸に微かに焼けるような痛みを感じながら、目の前の少女を見据えた。



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