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第十三章 新入居者

「お前ら、魔術会の事知ってたのかよ?」

美沙希は昼放課、食堂でミリタリナ達と会話をする。

主に、魔術会の事を話す。美沙希は異世界に来たばかり、魔術会の事など詳しく知らない。

「私は去年参加しました。魔術会は生徒主催と言う事もあって、今年は参加出来ませんけど」

「私も、騎士団長は魔術会当日の警備に付くから参加は出来ん」

「そうなのか。ルカ達は?」

「あたしは参加しなかったよ。他の参加者が強そうな人ばかりで、怖かったなぁ」

「ほう」

「いやそんなことありません参加しようとしましたけど急な腹痛で不参加と言う結果になってしまいましたお願いしますもうこれ以上あたしに地獄を見せないで下さいっ!!」

スズハの視線を貰ったルカが泣きながらこうべを垂れる。

「お前ルカに何したんだよ・・・・・・」

「私の剣撃約十分間耐久だ」

「そりゃ地獄だ」

スズハの剣撃を十分間受け続け生きているルカも中々の腕だ。

よく生きていられるな、美沙希はそう考えざる得ない。

「今年は出るよ。スズハに殺されたくな―――――学内ランキングを去年より上げたしねっ!」

魔術会の戦績で決められる学内ランキングは、不参加の場合でも決められる。

参加者よりは低くなるが、不参加者は名簿登録順で順位が決められる。

これは実力どうこうは関係無く、名簿の順番で決められるものだ。

だから、不参加者の中に、魔術会優勝者以上の強者が隠れてる、何て事があったりするらしい。

「ルーセントハートとイスズは参加してないのか?」

「私は不参加です。今回は参加して順位を上げようと思っていますわ」

「あたしは順位とかどうでもいいけどなー・・・・・・ま、遊びがてら参加してみようかな」

「ミサキはどうするのですか?」

「俺か・・・・・・。人脈がある訳でもないし、パートナーなんてそう簡単に見つからねえよ」

実は言うと、美沙希は不参加で居るつもりだ。

魔術は使えない、銃は下手すれば相手の命を奪う。

「俺は今のところ保留にしておこうかな。もしかしたら参加するってことで」

「そうですか。・・・・・・あ、チャイムがなりましたね。放課後会いましょう」

ミリタリナ達は立ち上がり、各自バラバラになって移動する。

選択学科の授業を受けに行くのだろう、全員がバラバラの道を進んでいく。

「ミリタリナ、待ってくれ」

美沙希は、逃げるようにして去っていこうとしたミリタリナの手を取って引き止める。

「・・・・・・なんですか?」

「あ、その、なんていうか・・・・・・昨日はすまん。ちょっとイライラしてて、怒鳴っちまった。本当にごめん」

美沙希は頭を下げる。

「・・・・・・起こってないですから、大丈夫ですよ。でも」

美沙希は顔を上げ、ミリタリナを見る。

「あの時の美沙希、ちょっと怖かったです。いいや、すごく怖かった」

掴む手も震えており、視線を合わせようとしない。

美沙希は、右手で掴んでいたミリタリナの手を両手で包む。

「ごめん。もう、怖がらせないから」

「本当、ですか?」

「ああ、約束する。今日はみんなとご飯を食べよう」

「・・・・・・約束ですよ、ミサキ」

「おう」

美沙希は手を離し、生徒会の仕事に向かうミリタリナを見送る。

「許して、もらえたかな?」

いささか疑問であったが、本当に許してもらえているのかは今日の夕方わかるだろう。

「さてと・・・・・・俺はどうするか」

美沙希はこれからどうするか、迷っていた。

選択学科が無い美沙希は、夕方まで暇なのだ。

いつもは射撃場で銃を撃っているが、毎日行くのも少し気疲れする。

そんな事を考えている美沙希の足元に、影が現れる。

「ミサキ、考え事ですか?」

「ん?―――――お前、シャルロットっ!?」

「ハイっ、一日ぶりデス」

美沙希の目の前には、綺麗な金髪を輝かせ、ストライプ柄の軍服――――ではなく、ドランシー女学園のブレザータイプの制服を着た、美沙希と同じ迷い人、天音シャルロットがいた。

「今、暇デスカ?ちょっとお話がありマス」

「・・・・・・こっちも色々話があるんだ。射撃場に行こうか」

美沙希は、シャルロットを連れて、射撃場へと向かった。



◆◇◆◇◆◇◆



「この世界にもこんな施設があるんデスネ。驚きデス」

「俺も驚いたよ。銃が廃れたって聞いたから、こういう施設はどこにもないって思ってた」

美沙希とシャルロットは、射撃場のベンチに座って会話する。

「なあ、お前はこの世界に来てどう思った?まず、何をしようとした?」

美沙希は、シャルロットがこの世界に来てからの事を聞く。

自身より先に異世界に来ていると言う事であれば、ある程度参考に出来るかもしれない。

「んん、私は、一度町に降りマシタ。色々知る必要があったので。でも、何もわかりませんデシタ。結局大草原の中、キャンプして生き延びてマシタ」

「そこでサバイバルしてたのかよ?」

「ハイ。なんか奇妙な形をした動物達が群れで襲ってきたので、美味しく頂きました」

「それはそれですごいな・・・・・・」

動物の群れを食料として見るシャルロットは、見た目とは裏腹に根は野生児らしい。

「まあ、俺が聞きたいのはそんなんじゃなくてだな」

「何デスカー?」

「お前、何であの時降ってきたんだよ」

「ああ、その事デスカ。いやあ、お恥ずかしい所も見せマシタ。魔術を試しに使ってみた所、力加減を間違えまして、派手に吹っ飛んだんデス。アッハッハ!」

「いや面白くねえよ」

「あら、そうデスカ?」

「そうだよ・・・・・・」

美沙希は、大した話でも無いのに疲れていた。

「・・・・・・で、吹っ飛んできた時に、計画がどうこう言ってたけど、計画ってなんだよ」

「それこそお恥ずかしい話デス。その、魔術で空飛べないかなーと思いマシテ、実践してみた所、この学園の上空で出力を間違えてfallッ!って事デス」

(案外、ドジなんだ)

自衛隊なのに情けないと、美沙希はしみじみと思う。

それはそれで個性的だとは思うが、個性的過ぎても困りものだ。

「お前って、どっかのハーフなのか?」

「私デスカ?私は米国人と英国人のハーフデス。母が英国人と日本人のハーフで、父が米国人と日本人のハーフデス。顔立ちは日本人なんデスけど、自毛は金髪、喋り方はちょっと訛ってマスので三つの国が合わさった珍しいお方デース!これって何ていうんでしょ、ニューハーフ?」

「自分でお方とか言うなよ。あとニューハーフって言うと意味違ってくるぞ」

普通に三国混血と言えばいいものを、シャルロットは色々とアウトな方向に持っていく。

(こいつ、バカなのか?)

「自衛隊での階級はなんだったんだよ」

「中尉デス」

「結構言ってんなおい。何歳だよ」

「セブンティーンデース!」

「え、同い年かよっ!?何でそんな年で中尉なんだよ」

「さっぱりわかりまセン」

「お前本物のバカかよ・・・・・・」

「Ohッ!?バカとは何デスカ、バカとはっ!」

プンスカといった様子のシャルロットは、頬を膨らまして明後日の方を向く。

「・・・・・・で、お前どうやって入学したんだよ」

「は、反省してないデス・・・・・・。えっと、草原の中テント立てて寝ていたら、使い魔?って言う動物がきまして、手紙を置いていったんデス。その手紙の内容が、入学手続き完了しました!っていうやつで。生徒会長サンが色々やってくれたそうです。感謝感謝デース。あと、私から一つお話が」

シャルロットは、ブレザーのポケットから折りたたんだ紙を取り出し、美沙希に向けて広げる。

「今回の魔術会というのに参加したいんデス。私のパートナーになってくだサイっ」

「ぱ、パートナー・・・・・・」

「イエスッ。仲間、相棒、パートナーデスっ。これを機に、私達の関係を深めまショウっ!」

立ち上がり、腕を掲げるシャルロット。

「別にいいんだけど、俺魔術何て使えないぞ。この前ちょっとだけ教えてもらったけど、初歩の一つだし」

「構いまセン。私達には、元いた世界の大発明、オートマチックピストルがありマスッ!」

そういって、シャルロットはスカートの中からコンバットコマンダーとベレッタM92を取り出し、一発ずつ天井向けて発砲する。

勿論天井に着弾し、小さな穴を二つ開ける。

器物破損にならないか心配だが、元々古い建物と言う事もあって、特に気にする事ではないだろう。

「まあ、いいぞ。パートナーになってやる」

「本当デスカッ!?やりましたよマミー!」

何故か母親を英語で叫ぶシャルロット。

美沙希は、軽く笑った。



◆◇◆◇◆◇◆



美沙希は、寮に戻り、コーヒーに大量の砂糖を入れながら携帯を触る。

この世界には電波が無いので常に圏外だが、画像フォルダや音楽が聞けないという事は無い。

幸い、この世界に来るとき着ていたジャケットの中に充電器が入っていた事もあって、コンセント?らしき所に繋いで充電している。

美沙希は暫く開いていなかったギャラリーを立ち上げ、今まで撮ってきた写真を眺める。

ファイルの中の画像の殆どが背景画像だが、その中に一枚に、『0(ゼロ)』のメンバーが映った集合写真を見つける。

これは、メンバーの一人、『03』龍ケ崎(りゅうがさき)明乃あけのの誕生日会の時に撮った写真だ。美沙希は仏頂面な顔だが、『01』兜森こもり蒼波あおば、『02』永瀬ながせ美奈子みなこ、『03』龍ケ崎明乃は写真を撮るに相応しい、明るい表情をしている。

今思えば、これがプライベートで会ったメンバーでの交流になる。

だが、美沙希は不思議と悲しくも何ともなかった。

(アイツ等は、絶対生きてる。簡単に死ぬ様な奴等じゃない)

あの後別れてしまったが、美沙希は今でもそう思い続けている。

「お友達の写真デスカ?」

「ああ、元いた世界の――――――何でお前がここにいるシャルロットッ!?」

美沙希の隣には、カップを持ってコーヒーをすするシャルロットが何事も無い様子で椅子に座っていた。

「何でって、私ここに住みますし」

「は!?」

「ほら、ここに書いてありマス」

シャルロットは紙を取り出し、美沙希に見せる。

紙の下を読んでいくと、『じゃあミサキ君の寮に住んじゃえ』と、乱雑に書き加えられていた。

(絶対アコだろこれ・・・・・・)

美沙希は脱力する。

「なんか、部屋も一緒って書いてありマスネ。これは仲良くなれそうデース」

「いやダメだろ絶対ダメだろ」

「今帰ったぞ。ああ、ミサキ。先に帰っていたのか―――――貴様、表へ出ろ」

帰ってきたスズハがリビングの扉を開け、入った瞬間、視界に入ったシャルロットへ修羅の視線を送る。

視線で人を殺す様な、人間とは思えない眼光に、シャルロットは真顔で痙攣けいれんし始める。

「ア、ア・・・・・・ミサキ、ここでお別れの様デス。今まで、楽しかったデスっ」

頬に一筋の雫が零れる。

シャルロットは満面の笑みで泣き顔を誤魔化すが、溢れる涙がそれを許さない。

「いや、一生の別れじゃないだろ。ここに住むんだから」

「Noッ!!そ、それを言ったら――――――」

「決めたぞ、ここで斬首だ」

スズハは静かに、ゆっくりと剣を鞘から抜き出す。

ギィィィイイン、と、刃が鞘の中で擦れる音を聞き、シャルロットの精神が限界突破する。

「ミサキッ、夕食で会いましょうッ。今は命が惜しいデースッ!!」

シャルロットは軍隊仕込みの機敏な動きでスズハの股下をスライディングで抜け、玄関に飛び出る。

「逃がさんぞ」

冷静沈着の最強騎士団長がゆっくりと振り向き、玄関へと向かう。

一人残った美沙希は、甘いコーヒーを啜ってため息をつく。

「・・・・・・平和だ」





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