迷いの森と襲撃者
四人は廃都と荒野を繋ぐ唯一の橋を渡っていた。
一番前がアンその後ろにエリー、ミルキ、クロの順番で橋を渡っている。
「なぁ、この橋ってさぁ」
前にいるアンが立ち止まり突然話しだしたミルキの方へ振り返る。
それにつられてエリーも同様に振り返る。
「橋の真ん中で立ち止まらないでくれ」
一番後ろで大量の荷物を背負って息を切らしているクロを見た三人は何も言わず、
再度橋の上を歩き出した。
橋を渡り終えた三人はまだ半分しか渡りきれていない四人目を待っていた。
「手伝わなくていいのでしょうか……」
申し訳なさそうに問うエリーに「しょうがないよ」と笑を浮かべながらミルキが告げる。
そんな姿をみてエリーは「そうですか」としか言えなかった。
「だってじゃんけんで負けたあいつが悪いんだから」
腹を抱え笑い転げる。
「そんな笑っちゃ可哀想ですよぅ」
笑い叫ぶミルキを止めようとするエリーの姿をただ見ている〝二人〟。
「お疲れ様です」
ビシッ、という擬音がにあっている。
そう思いながら荷物を地面に下ろし、肩を二、三回程回してから、
うるさい二人の間に入っていった。
「いい加減うるさい!」
手を手刀の形にして、
笑い転げているミルキの頭を叩く。いわゆるチョップというやつだ。
「ったーい!」
その場に座り込み、頭を抑え上目遣いで睨みつける。
「文句あるか?」
そんなミルキを見下ろすように、睨むように見る。
「……ない……です」
下唇を少し噛みながら下を向いて、落ちていた石を拾い地面に落書きを始めた。
クロはエリーの前に立って手を手刀の形にしていた。
四人は行きとは別の森林の中を帰っていた。
一番前にクロそのクロの袖を掴んでいるのがミルキとエリー、その後ろにアンという順番
で歩いている。
「ね、ねぇ」
右側の袖を掴んでいるミルキが怯えた声で、クロの背中から顔をだす。
「なに?」と歩きながら小首を傾げている。
「こんな道……来たときは通らなかったよね?」
「…………」
その場に止まり、振り返り、正座する
「……まよいましたすいませーーーん!」
そして土下座しながら泣き始めるクロ。
「やっぱりか……」
地面に膝をつく。
すると、アンが口を開く。
「だってこっち来た道と反対じゃないですか」
笑いながら後ろを指差す。
すると、後ろを指した指が、何かに当たった
「ん?」
アンは指をそのままに、後ろを振り向いた。
「どうした?」
「なにかあるの?」
「………」
三人がアンの行動にそれぞれ違った反応を見せた。
そしてアンは、森を〝斬った〟。
「ぐわぁ!」
斬った瞬間、何者かの叫び声が四人の周りに響いた。
「何者だ!」
剣を倒れている男に突き立てる。
「ッ!」
男は剣を素手で殴り払い、逃走を図り、
森の中へ姿を消した。
「無駄だ。龍!円月焼波!」
剣を勢いよく地面に突き刺すと、地面が炎を上げて波打つ。
「ちょ!魔法使うなら言ってからにしてよ!」
ミルキが魔法で、クロ、エリーと一緒に空中に浮かびながら、
注意を促す。
「す、すいません!無我夢中で……」
頭を下げながら謝り続けるアン。
「後ろが、がら空きだ!」
さっきとは別の男が地面に刺さったままの剣を抜き、
アンに襲いかかる。
男の斬撃をかわし、腰にかけていた短剣を抜き、相手めがけ突く!
「鳥、火蜂!」
が、相手の男に短剣がはじかれ、攻撃は打ち消された。
「そんなもんか?」
アンは両手を握り、構える。
「なかなかのやり手のようですが、僕の方が強いんですよ」
自信満々に言うアンを上から見ている三人。
「強いね……あの子」
真面目な顔で感想をのべる。
ミルキの感想に、何の反応もなくただ「あぁ」とだけ答える。
「あ、あの!」
「ん?どした?」
指をさして、驚いているエリー。
その指差す方向を二人はただ見つめている。
「い、いいんですか?何も言わなくて!」
「いい」
そう言うと、二人は再びアンの戦いを観戦し始めた。